第45話 太陽の欠片
俺達が横穴目指して山道を登っていると、何となく視線を感じた。
死角からの攻撃を得意とする俺は視線には敏感だ。
「つけられているぞ」
「どうせ野神達でしょ」
「じゃましないの」
「そりゃ追っ手をまくぐらい出来るけど、どうせ横穴の情報は分かるだろう」
「そうね、住民に話を聞けば、遅かれ早かればれるわね」
「その通りだ」
横穴に入るという所で野神達が追いついて来た。
くそっ、見届け人の神官が邪魔だ。
いなければ野神達を殺すのに。
ここで殺したらお尋ね者になるだろうな。
仕方ない。
精霊の頼み事勝負に勝って決闘するとしよう。
「奇遇だな。ここで会ったのも何かの縁だ。一緒に中に入ってやろう。お前達が入ると臭くて堪らないが、我慢してやる」
いちいち台詞が挑発的だ。
俺が襲い掛かるのを待っているのだろうな。
それなら大人数でタコ殴りに出来る。
その手には乗らないさ。
「どうせ斥候に後をつけさせたのだろうが、まあいいや。後をついて来るがいいさ」
横穴の中を地図にしたがって進みマグマが見える所にでた。
マグマがあるにして涼しい空間だ。
どうなっているのだろう。
「おーい、火の精霊。何か困った事があったら解決してやる」
「ほんとかい。おいら、お腹が空いてどうしようもないんだ」
マグマから火で出来た人型が飛び出して来た。
「波久礼、火精霊の供物対決だな」
「おう。ところで火精霊の食い物ってなんだ?」
「おいら、燃える物だったらなんでも食っちまう」
ようするに燃料を用意すればいいんだな。
俺達は一旦街に帰り、対応を話し合った。
「燃料っていうと、ガソリンとかだろ」
「あんたのスキルで出せたらね」
「うん、無理。薪とかだとありきたり過ぎだな。純度100%のアルコールなんか良いんじゃないか。小前田作れないか?」
「それより、波久礼君、この物語を見て。ほら、太陽の欠片だって。これって最強の燃料じゃないの」
「いっちょ作ってみるか」
伝説では大喰らいのドラゴンが太陽を喰らってその食べかすが地上に落ちてくるとある。
これは日食と隕石の事を面白おかしく伝説にしたものだと思う。
大喰らいのドラゴンは用意出来ないが、日食は再現できる。
魔法で光源を用意して月と惑星の模型を用意してやりゃ良い。
太陽の欠片を作るんだったら、それに触れられる物を作っておかないと。
生きた兎を用意して、火炎草を食わせる。
この火炎草、花が炎に似ていると言うだけで普通の草花だ。
なぜこんな事をしたのかというと伝説では兎が炎を喰らって火兎になったという。
兎は本物の炎を食わないから苦肉の策だ。
兎に触り、カタログスペック100%。
燃え盛る兎の完成だ。
兎を殺すのは気が引けたので魔法で眠らせ毛を刈り取りエリクサーを掛けてやった。
あとはこれを材料に手袋を作るだけ。
日食の装置も作り、準備は完了した。
星の模型の位置を調整、惑星の模型に月の影が落ちる。
模型に触り。
「カタログスペック100%」
惑星の模型に一センチほどの眩い光を発する物体が光源から吸い寄せられる。
それを燃えないし暑さを感じないという火兎の手袋で手にとりアイテム鞄にしまった。
太陽の欠片なのに放射線は出たりしないんだな。
神話の登場アイテムだからか。
物語にも放射線で何かが死んだとは書いてない。
供物を捧げる日が来た。
「波久礼、先にいかせてもらう。俺の供物はコークスだ」
手下のクラスメイトが麻袋をドスンと置いた。
「俺の供物は太陽の欠片だ」
俺は火兎の手袋をして、アイテム鞄から太陽の欠片を取り出し、火精霊に手渡した。
火精霊は麻袋を開けるとコークスを食べ始めた。
食べるたびに火精霊が光る。
全部食べ終わると、太陽の欠片を飲み込んだ。
火精霊は激しく燃え盛り光を発した。
「満腹になったのは太陽の欠片だけれども、味が良いのはコークスだ。好きなのはコークスだ」
「見届け人として判定をつけます。精霊様が気にいったコークスを勝ちとします」
野神について来た見届け人が勝敗をつけた。
ところで、俺達についてきた実届け人は、影が薄くて一言も喋らないけど、大丈夫なのだろうか。
えこひいきされたとは思いたくないけど。
「波久礼、これで一勝一敗だな。次が楽しみだ。まあ勝負は見えているがな」
「今回、試合には勝ったが勝負に負けたと思っている。次も勝てると思うなよ」
俺達は次の目的地の風精霊がいる大草原に向かった。




