第44話 防具コンテスト優勝
一夜明け、俺は街の噂を拾い集めた。
領主が真人間になったという噂は街全体に広がっているようだ。
領主は街に毎日出かけるのだが、昨日は街に出ても諍いは起こさなかった。
住民は半信半疑みたいだ。
領主が良心の呵責でどうにかなるかとも思ったが、物語でも悪人のヤルークはその事で悩んだ様子がない。
まあ俺が心配する事でもないか。
火の精霊をそろそろ探しに行こうかと思い始めた時に立て札が街に立った。
何でも領主が防具のコンテストを開くらしい。
兵士やモンスターを退治する領民に怪我が無いようにとの配慮みたいだ。
このことからもやさしさの種が効果を発揮している事が分かる。
優勝者には賞金の他に無理でない頼み事を一つ聞いてもらえると書いてあった。
「領主って情報が集まるよな。火の精霊の出没情報でも貰うか」
「お得意のダウジングはどうしたの」
俺の問い掛けに御花畑が更に尋ねる。
「あれだと目標に一直線だろ。途中に通れない所とかがあると大変だ」
「なるほど馬鹿じゃないのね」
「波久礼君は学校の成績は良くないけど、適応能力はあると思う」
「あれは適応能力というより、スキルが反則すぎるだけよ」
「俺のスキルはさておいて、どうするかだな」
「もちろん反則スキルで優勝よね」
「私も賛成。道なき山歩きはちょっと。ヒルとか出てきそうなんだもん」
「よし、コンテストに参加するぞ」
俺は防具の材料としてアルミを選んだ。
もちろんアルミはこの世界では流通していない。
小前田の抽出スキルで集めた。
もちろんアルミが沢山含まれている所はダウジングで見つけた。
酸化アルミニウムの形で見つけたのだが、化学式を知っていればスキルで分解するのは容易い。
何故こんな事を知っているかというと授業でリサイクルの研究発表をしたからだ。
俺はテーマにアルミのリサイクルを選んだ。
出来合いの鎧と同じ形にアルミを変形させる。
もちろん加工は小前田がスキルで担当。
仕上げにドラゴンの血を塗ってスキルを掛け完成だ。
コンテストの日に俺達が会場に行き受付を済ますと野神一行がやってきた。
「お前も情報を求めてやってきたか。優勝はゆずらん」
「ふん、ほざいてろ」
コンテストの日。
会場には鎧が人形に着せて展示してあった。
「あれっ、俺達の鎧がない」
「出品者の方ですか。すみません。その鎧は昨夜盗まれました」
くそっ、やられた。
ダウジングで盗まれた鎧を探すと、色が黒く塗られて、出品されている。
出品者は寄居だ。
異議を申し立てると裁判という事になりそうだ。
それでは間に合わない。
幸いスペアは作ってあった。
だが、同じ性能の物が二つあると、勝てなくなる恐れがある。
ドラゴンの血が出てくる『カエリックサーガ』にはドラゴン血の弱点が書かれていた。
乙女の涙に弱いのだ。
乙女の涙でドラゴンの血が流されて、主人公の武器は効力を失うというストーリーになっている。
小前田に目薬を差してもらい、涙を採取する。
その涙を寄居が出品した鎧に掛け、カタログスペック100%した。
これで寄居の鎧は、アルミで出来たただの軽い鎧だ。
野神達の作品はアダマンタイトの鎧だ。
説明を見てみるとメッキらしい。
けちったな野神の奴。
どのように審査が行われたのか分からないが、俺達の作品は優勝した。
発表の場で野神が言い放つ。
「優勝作品なら俺の攻撃を受けても、びくともしないはずだ」
そう言うと俺達の鎧を前に剣を抜いた。
「ヘビースラッシュ」
野神の剣は鎧に当たり、澄んだ音を響かせる。
そして、野神は手から剣を落とす。
「何故だ。ミスリルの剣だぞ。それに俺はレベル38だ」
「お前の腕が悪いだけだよ。俺達の優勝に文句はないよな」
「くそっ、覚えとけよ」
野神は立ち去り、俺達は優勝賞金と精霊の情報を貰った。
情報によると火山に横穴があいているとの事。
その中にマグマが露出している所があり、そこに火の精霊は頻繁に出没するらしい。
すぐに出発しようと思ったが、領主に頼まれ鎧を百領納める事になった。
鎧を作るのはめんどくさいので出来合いの鎧にドラゴンの血を塗ってスキルを掛け納めた。
優勝賞金と領主からの代金は全て領主の犠牲になった遺族へのお悔やみとした。




