第40話 間抜けな男の話
7階層で壁を壊そうとして腕を振りあげ土精霊のトンカチを振り下ろしたが跳ね返された。
何故だ。
足で壁を蹴飛ばすと確かな手ごたえがある。
石の壁だよな。
「この壁壊せないんだ。小前田、鑑定してみてくれ」
「はい、鑑定。これは石じゃないよ。魔力で出しているみたい。魔法で攻撃すると魔力を吸い取って硬くなるおまけ付きだよ」
「物理なら壊せるのか。俺達は全員後衛だし、爆弾は数が足りなさそうだな」
「あんたの便利スキルでなんとかならないの」
「そうは言ってもな。とりあえず進んでみよう」
俺達は石の通路を進む事にした。
石の通路は曲がりくねり、さながら迷路のようだ。
「迷いそうだ。最初の場所に戻ろう」
俺達が元の場所に引き返そうと後ろを向くと来た時にはない壁が立ちはだかっていた。
「そりゃそうだ。魔力で出しているのなら組み換えも自由自在だな」
「この階層は迷わせて殺す階層ね」
「そうだな。むやみに動いても無駄だ。今まで買った本を全て出すから、みんなで解決策を探そう」
俺はアイテム鞄からありったけの本を出して、みなで読書を始めた。
見つけたのは怪力になる腕輪の物語。
確かに怪力になれば壁を壊して進めるが、壁を壊すとすぐ再生するような感じがする。
魔力で出しているんだからな。
次に見つけたのは空気の流れを辿る御幣。
棒の先に付いた紙が風向きを示すのだとか。
でも通路が組み替えられているのに効果を発揮するのかは、はなはだ疑問だ。
「二人は何か見つけたか」
「これ面白いよ。転生の間で今にも見えそうな格好の女神が男に『樹になるのね』と言うと男が『凄い気になる』って答えて世界樹にさせられるの」
「小前田ぁ~。たしかに面白そうだが、関係ないだろ」
「それがね、世界樹にする時に女神がミスって、種族を『樹』って入れないといけないのに『き』って入力しちゃうの」
「それが何か関係あるのか」
「男は『鬼』や『騎』『亀』になって冒険の旅に出てその冒険で迷路に閉じ込められるの」
「なるほど、その迷路から脱出する方法が使えるかもって訳か」
「『ガイダスの糸巻き』を使って迷路を無事抜け出すのよ」
「でかした。さっそくやってみよう」
糸は色々な場面で使うので何巻もアイテム鞄の中に入れてあった。
それと必要な材料が渡り鳥の羽だった。
街や村では鶏肉はさばいた状態ではなく丸ごと売られている物もある。
俺は二人に頼まれて解体は良くやっていた。
料理人バイトの経験がこんな所でいきようとは。
羽は何かに使うかもと思ってアイテム鞄に保管してある。
糸の先に羽を取り付け小前田から物語の本を受け取り。
「カタログスペック100%」
糸巻きが光に包まれ、糸の先につけた羽がピクピクと動いた。
糸を伸ばすと羽は出口に向かって凄い速さで飛んで行った。
しばらくすると糸は引かれなくなる。
ゴールに着いたようだ。
糸を手繰りながら、歩を進める。
迷路の形も刻々と変わるのに糸は壁にめり込んだりしてなかった。
不思議だが、不思議道具なんだからと納得。
むっ、人がいるぞ。
浦山口じゃないか。
「お前は波久礼。このダンジョンの制覇を狙っているのか。死ね」
床から鉄槍が生えてきた。
ご丁寧に穂先には毒らしき物が塗られている。
不壊の装備は壊れなかった。
「くそう、お前達がくると分かっていたら、もっと極悪なトラップを仕掛けたのに」
「ここのトラップはお前の特徴が出ている。話せ」
「トラップ付きの宝箱を売ったんだよ。その時にトラップのアイデアをいくつか提供した」
「やっぱりお前の仕業か」
「あいつら魔王軍だったんだな。野神さんの懇意の商会だから、売ってしまった。なあ、俺を見逃してくれよ。頼む」
やり直す前の前回の時にこいつの提案でどんだけ地獄を見た事か。
許せないな。
「魔王に与した罪で死刑だ。あばよ」
俺は首を刎ねた。
「そうね。敵に寝返った奴は許せないわ」
「ちょっと過激ね。でも、何か理由があるんでしょ」
「俺の気持ちを分からなくてもいい。でも許せないんだ」
一時間ほど迷路を進み遂に羽に追い着いた。
羽は壁にぴたりと張り付いている。
「出口が壁の向こうなんて、なんて凶悪な迷路なんだ。出口無しってことじゃねえか」
俺達は爆弾十個を壁に仕掛け、大穴を空けた。
案の定、壁は再生しだしたので、俺達は急いで飛び込んだ。
さてお次は何だろうなと思ったら、階段を下りた先は巨大な扉だった。




