第33話 各情勢
Side:下級神
今日は来訪者の様子をチェックする日じゃ。
どれどれ、勇者は酒盛りじゃな。
「女こっちへ来て、全部脱げ」
「借金返済の為に来たんで、私は売春婦じゃない」
「ここで酌をするという事はそういう事だ」
「弟が人質にとられてなければ……。あんたなんか勇者じゃない。名もなき勇者が本当の勇者よ」
「なんだと。その名前を呼ぶな」
「何度でも呼んでやるわ。名もなき勇者万歳。あんたなんか、クサレ勇者で十分よ」
「なにおう」
「外道勇者!」
「口を閉じろ」
「クズ勇者!」
「言ったな。押さえつけろ」
「きゃあ」
いかんな、目も当てられん醜態をさらしとる。
ありゃ、悪念を浄化する力が弱まっとるな。
他にも別行動のグループがあるようじゃ。
女性ばかりのグループで冒険者活動をしておる。
「みんな、もうちょっとだから。後少しで資料にあった精霊蘭の群生地だよ」
「これで、エリクサーの材料が全て揃うのね」
「ええ、これで難病のあの子を救うことができる」
「リーダーもお人好しだよね」
「そうそう。偶然、出会った子供のために尽力するなんて」
「いいじゃない、余ったエリクサーはお金になるんだし」
こちらは順調じゃな。
頼むぞ来訪者達。
この世界の命運は君らにかかっとる。
どれ例のスキルを与えた少年はどうしているかな。
「カタログスペック100%。この採取名人使ってよ。壊れなくしておいたから」
何っ、神器クラスを量産だと。
いかんぞ、わしが怒られてしまう。
やめるのじゃ。
人の役に立っているから神罰が下せん。
影響を及ぼせないのがうらめしいのじゃ。
気を取り直して、魔王はどうじゃな。
「なんだと、十魔将の一人、カタリーヌが討伐されただと」
「はい、魔王様。偽物の勇者に討ち取られた模様。虚無の作戦も失敗に終わったとの事」
「ふむ、在野にも勇者クラスの人間がいたか。計画の妨げになるようだったら消してしまえ」
勇者の偽物が現れたとな。
良い影響を与えればよいのじゃが。
Side:波久礼
「貴様が名もなき勇者か。恨みはないが命は貰う。マグマブレイド」
いきなり襲われ、炎の剣を叩きつけられた。
聖剣ドラゴンブラッドを抜いて迎え撃つ。
「その剣は何だ。なぜ俺のスキルを受け止められる」
俺は炎の剣を受け止め、受け流し、切り刻んだ。
「お前にも家族いるだろう。やめるなら今のうちだぞ」
「くそっ、こんな仕事受けるんじゃなかった」
「降参しろよ」
「分かった」
男が柄だけになった剣を投げ捨てた。
俺は野次馬に向かって。
「横暴な悪徳貴族や悪人には負けない。名もなき勇者をよろしく」
「いいぞ。名もなき勇者」
野次馬が喝采する。
「ポイズンブレイド」
さっきの男が短剣で俺の背中を突いていた。
不壊のシャツが短剣を受け止めたようだ。
「家族はいないのか?」
俺は振り返って言った。
「へへっ、あんたはお終いだ。毒にのたうち回るんだな」
「家族はいないのか、いるのか、はっきりしろ!」
「冥途の土産に教えてやる。俺にはそんなものはない」
俺は男の腕を切り飛ばした。
「何だと。なぜだ毒が回っているはずだ」
俺は剣を収めた。
「情けか。情けを掛けるのか」
「俺の剣は活人剣だ。殺人剣ではない」
俺はエリクサーを投げてやった。
男は無事な方の手で受け取ると、一気に飲み干した。
切り飛ばされた腕が生えてくる。
「なんの真似だ」
「お前が殺されると家族ではなくても、悲しむ奴ぐらいいるだろう。いないのか。いないなら作れ」
「エリーゼ。ごめん」
「いたのか。なら五体満足で帰ってやるんだな」
「参りました」
男が礼をして去って行く。
「恰好つけちゃって」
御花畑がそう言った。
「恰好良かったわ。ちょっとキュンときた」
小前田は俺の事を分かってくれるらしい。
野次馬が噂をしている。
「名もなき勇者は凄い。刺客を改心させたぞ」
「そうだな。聖勇者のクズっぷりは呆れるな」
「それよ。名もなき勇者様の爪の垢を飲ませてやりたいぜ」
「聖勇者は聖剣を名もなき勇者に譲ったら、良いんじゃないか」
「それはいい考えだ。投書しようぜ」
「やるか」
いいぞ、もっと噂をばら撒け。
野神が逆上して俺に突っかかってくれば、しめたもの。
堂々と返り討ちにできる。




