第31話 蝗害解決
『ゴブリンでも出来る農業』の被害にあった最後の村で刈り入れを手伝っていた時に村人が駆け込んで来た。
「大変だ。虚無が出たぞ。もう何もかも終わりだ」
「虚無って何です」
「イナゴのモンスターさ。作物はおろか人間や家の柱だって食っちまう。それが大軍で襲い掛かってくるんだ」
妊婦の女性と子供が深刻な顔で話をしていた。
「お母さん、大丈夫だよね」
「私は身重だから逃げられないけど、お前は強く生きるんだよ」
「坊主、名も無き勇者パーティがなんとかしてやるよ」
俺達は村を出て黒い塊が空にある方に向かった。
「御花畑、出番だ」
「ほいきた。獄炎の賢者いきま~す。ファイヤートルネード」
炎の竜巻に巻き込まれ虚無が黒こげになり雨のように魔石が落ちてくる。
俺達について来た村人達が感嘆の声を上げる。
でも一割も削れてない。
「何度も撃つんだ」
「ファイヤートルネード、ファイヤートルネード、……ファイヤートルネード」
魔法を撃つたびに村人達の顔は明るくなる。
目に見えていたところは粗方かたづいたと思ったら近くの森から虚無の大群が飛び立った。
落胆の声が村人から漏れた。
「やばいな、さっきの百倍はありそうだ」
「魔力がもう無いわ」
「マナポーション飲んで」
御花畑は腰に手を当てぐいっとポーションをあおった。
まだやる気満々だが、どうしたものか。
「マナポーションで魔力を補充するにも限度がある。いったん引くぞ」
「はい」
「そうね、お腹タプタプは嫌だわ」
村に帰った俺達は相談を始める。
村人達は避難の準備を始めていた。
「なにか良い手がないかな」
「魔法も無限には撃てないわよ」
「レシピに虫を殺す毒はあるけど、空中にいるから手を出せないわ」
「軍略とかの本とかに何かないかな」
「馬車の中で本は読んだけどお堅いのは読んでないわ」
「私は恋愛物が好きだな」
「本の好みは聞いてない。大軍を少数で打ち負かした話しなんてのが無いか」
「それなら『フラットソース建国記』の中に角笛を吹いたら、鳥の大軍が寄って来て敵軍が驚いて逃げて行ったってのがあるわよ」
「それだ」
まだ村に残っていた村長から角笛を貰い。
「カタログスペック100%」
角笛は光に包まれた。
俺が角笛を吹くとヒューと情けない音がもれた。
「貸しなさいよ」
御花畑に角笛を渡すと見事な音色が響き渡った。
「未依子ちゃん、間接キスだよ」
「今の取り消し。なかった事にして」
「顔を赤くしたところを見るとお主惚れてるな」
「二人とも、ふざけるなよ。これからが正念場だ」
空を見ると虚無の黒い塊とは別の塊が遠方からやってくる。
しばらく見ているとそれは鳥の群れだと分かった。
鳥はジャイアントスワローのようだ。
ジャイアントスワローは虚無を捕食し始めた。
驚いて逃げ出すのじゃないのか。
ツバメは昆虫を食べるけどさ。
モンスターは食べられないだろうと思っていると、どうやら殺して魔石を食べているらしい。
目に見えて虚無の数が少なくなった。
ジャイアントスワローの大群が去って行った後に、御花畑は魔法で残党を始末。
村人に安堵の表情が戻った。
さっきの子供が側にきて言う。
「お兄ちゃんは本当に勇者だった。大きくなったら、僕も勇者になる」
「いい事を教えてやる。俺の職業はジョブレス。どんな職業にもつける夢の職さ」
「あんた、言ってて空しくならない。無職よ、無職」
「子供に嘘を教えるのはどうかと思う」
「悪かったよ。本当は無職さ。でも万能スキルを持っている」
「お兄ちゃんは嘘ついたの」
「嘘じゃないよ。無職の事をジョブレスって言うんだ」
「それにしても、たしかに万能よね。反則と思えるぐらい。いっその事あんたが魔王やっつけたら」
御花畑があきれ顔でそう提案した。
「そのつもりだ。野神は魔王討伐までにぶっ殺す」
俺は頷いて、そう答えた。
勇者が魔王を殺す物語は多い。
俺が勇者と呼ばれれば、その物語とスキルで魔王もぶっ殺せるはずだ。
野神ははっきり言って要らない。
早く排除したい。
俺達は村を出て行田が向かった方向の街を目指した。




