第30話 ゴブリンでも出来る農業
訪ねた村の周りは見渡す限り一面の畑なんだけど、作物がみんな枯れていた。
どういう事だ。
「ヒヒン」
シルバーの悲しげないななきが辺りに響く。
「飼葉ならアイテム鞄に入ってる。しょげるなよ。どう、どう」
俺は事情が分かりそうな村長の家を目指した。
村長の家は一際大きな建物で、周りを殺気立った村人が取り囲んでいる。
「村長出て来い」
「卑怯者」
「責任逃れする気か」
俺はそれほど怒り狂ってない村人に話し掛ける。
「みなさん、どうしたんですか」
「どうもこうもねぇ! 村長の指示に従ったらこの有様だ」
俺は群集に向かって話し掛ける。
「聞いてくれ! 俺ならなんとかできるかも知れない! 村長に会わせてくれ!」
「お前が何かできるならしてもらおうか」
「「「「そうだ、そうだ」」」」
「とりあえず囲みをといてくれよ」
「仕方ない。このままにらみ合っても、らちが明かないからな」
村人は説得に応じて一時的に囲みをといた。
俺は村長宅の扉を拳で叩き叫ぶ。
「このまま篭城しても火を付けられたら一巻の終わりだ! 話し合いに出てくるんだな!」
ドアが少し開けられ様子を窺い始めた。
ゆっくりとドアが開けられ村長が出てくる。
これで話し合いになりそうだな。
「村人が怒ってる原因は枯れた作物だろう。そもそもの原因はなんだ」
俺は村長に問い掛けた。
「最初は奇病が流行って、肥料生成スキルを持っている人が全員ぽっくり逝ったんだ」
胡散臭さを感じる話だな。
「それで肥料が作れなくなったって訳か」
「しょうがないので、行商人から買った『ゴブリンでも出来る農業』を試したらご覧の有様だ」
「どんな奴だった。もしかして赤い目で、黒髪の七三分け」
「おお、それそれ。目を見たら言う通りにしないといけない気になって」
「黒い水晶に心当たりがないか」
「それなら『ゴブリンでも出来る農業』の表紙にはまっているよ」
肥料生成スキルを持ってた人の奇病はいかにもだ。
行田は遂に殺人にも手を染めたか。
「その本を読ませてくれ」
俺は本を受け取り読んだ。
肥料の作り方は生ゴミから作りますと書いてある。
そして、適度にかき混ぜてから撒きましょうとある。
みるみる成長しますと終わっていた。
なんかおかしな所はあったかな。
「二人共、どう思う」
「馬鹿じゃないの。生ゴミを充分に腐らせずに肥料にしたら、駄目に決まっているじゃないの」
「田舎のおばあちゃんの所で聞いた話なんだけど、肥料の熟成が足りないと毒ガスが出るんだって」
「ほんとうか」
「枯れるほど強力なガスが出るなんて異世界ならではだね、波久礼君」
「とりあえずはこの本に書かれた通りにやって、カタログスペック100%だな」
まずは生ゴミを集めさせた。
そして、かき混ぜ。
「いくぞ。カタログスペック100%」
生ゴミが光り、ほとんど土と変わらないような色の肥料になった。
肥料を畑に撒き、ムーギの種を植える。
ムーギは地球の麦に似た巨大な作物だ。
ムーギは瞬く間に高さ二メートルほどになり穂を実らせた。
ちなみに『ゴブリンでも出来る農業』を読むと雑草が生えたら除草剤を撒きましょうとある。
この除草剤レシピの通り作ったら作物も一緒に枯れるっていうオチなんだろうな。
さらに虫を殺すために農薬をまきましょうとある。
虫を殺す農薬も作物を枯らすんだろうな。
今まで行田はあからさまな嘘はついてなかったが、なりふり構わなくなってきたのを感じた。
対決も近いのかもな。
さて刈り入れだ。
採取名人でパチリとムーギを切るとムーギの実は一回り大きくなった。
「立派なムーギですな」
「採取名人がもっとあればな」
「採取名人なら、村の道具屋で売っとりますぞ」
「そうか、サンキュ」
俺は道具屋で採取名人を買占め、スキルを掛けてドラゴンの血を塗りたくった。
そして、村人総出で刈り入れをした。
「ありがとうございます。私の首もつながりました」
村長と村人に笑顔が戻った。
「肥料を余分に作っといたから気兼ねなく使って。その本の内容はあてにしちゃだめだよ。農業に詳しい人を招くんだな」
「はい分かりました」
「みなさん、窮地を救った名も無き勇者をよろしく」
付近の村々が同じ様な被害にあっていたので救済して回る事にした。
行田の奴、ろくでもない奴になったな。
前の時も酷かったが、今回は輪をかけて酷い。
早く殺さないと。




