第29話 勇気の出る石
この街に滞在して三日。
ギルドで依頼を受けて路銀を稼ぐために街の外に向かおうとした時にその場面に遭遇した。
「助けて~。はぁはぁ」
男が門に駆け込んで来た。
男の背後を見ると、でかい猪のモンスターが突進してくる。
門番は三人いて二人は勢いよく駆け出し迎撃にでる。
「行くぞ」
「おう」
「動け、この足。なんで動かないんだ」
残る一人は情けない事に真っ青な顔をして震えていた。
残る一人は新米なのかな。
始めてのモンスターにビビって手も足も出ないってところだろう。
戦況を見ると駆け出して行った門番の一人は剣と盾をもう一人は槍を持って戦っている。
剣と盾を持った門番が猪の鼻面に盾を叩き付け、怯んだ隙に左目を切り裂いた。
槍持ちの門番は横から首に穂先を突き入れた。
モンスターは煙になり魔石を残す。
危なくなったら助けようと思ったけど杞憂だったな。
俺は門を出るために震えている門番に声を掛ける。
「出たいけど、いいのか」
「駄目だぁー」
指名手配されているのがばれたのかな。
まさかそんな事はないだろう。
「あれ駄目なの」
「今度こそ絶対、首だ。あの行商人インチキ商品売りやがって」
行田の仕業かな。
「その行商人は俺達も追っている。詳しく話してくれよ」
「勇気の出る石を売ってもらったんだ。だけど、効果がなくて」
「見せてもらっても」
門番が差し出した石をみる。
黄色い色をしている他はこれといった特徴の無い石だ。
「黒い水晶みたいな物を一緒に貰わなかった?」
「ああ、サービスでくれた、これかい。このお守りは効果があるみたい。不満を吸い取ってくれるような気がするんだ」
黒い水晶はやっぱり今までと同じだった。
「売った商人はどんな奴だ」
「赤い目で、七三分けの黒髪だ」
やっぱり行田の特徴だ。
「目を見たら無性に買いたくならなかったか?」
「ああ、なったよ」
やっぱりな。
「勇気の出る石をなんとかしよう」
俺は『パワーストーン百科』をめくり黄色い石を探す。
あった、気力石だな。
持つ者に勇気を与えると書いてある。
行田は今までも嘘は言ってない。
今回も一応本物だな。
価値は銅貨一枚もない。
ある地方では川原に普通に転がっているそうだ。
石と本を持ち俺はスキルを掛ける。
「カタログスペック100%」
石は光に包まれ文字通りパワーストーンになった。
石を門番に渡すと心なしか顔が引き締まった感じがする。
「行商人の被害者は多いのか」
「門番は大体買ったと思う」
俺の問いに門番は答えてくれた。
「俺は名も無き勇者だから、問題解決に活躍したって噂しておいてくれ」
「ああ良いぜ。この石は凄いな。握っていると何でも出来る気がする」
「早死にしないように気をつけてな」
「気をつけるよ。勇気と蛮勇は違うからな」
俺はこの街の塩漬け依頼を全てこなし、名も無き勇者を宣伝しておいた。
俺達の活躍が面白かったのか、吟遊詩人も歌にし始めた。
それと平行して俺は勇気の出る石を全て改造して回った。
門番が商人が次に行きそうな場所の情報を集めてくれた。
「酒場で聞いた話だが、行商人からこの辺りの穀物の生産を引き受けている村々の事を聞かれたと言ってたぜ」
穀物か。
「おら運べよ。ここから先は補給が出来ないんだからな」
俺の記憶が甦った。
穀物の袋を担いだっけな。
「頼むから、収納スキル持ちに運ばせてくれよ。もう力が出ない」
「言ってるだろ。スキルで運ぶとそいつが死んだ時に回収できないって」
「戦いの場の手前で荷物を出せばいいだろ」
「口答えするのか。鞭で打ってやる」
俺は鞭で打たれた。
「くがっ」
「おらおら、良い声で鳴けよ」
「やめてくれ」
Eランクのクラスメイトが、かばってくれた。
かばってくれた奴は生きているだろうか。
記憶から戻った。
収納スキル持ちは、生産職に多い。
生産職は戦闘力に欠ける。
前回の時は、野神達が守るのをめんどくさがって、収納スキル持ちが何人も死んだ。
荷物が回収できないのを知ると、EランクとFランクの俺達に背負わせて運ぶようになった。
今回は、収納スキル持ちは死んでないようだ。
女子が出ていって、野神達が生産職を少し気に掛けるようになったら良いんだが。
余計な死人は出て欲しくない。
状況が分からないのが少しモヤモヤする。
早く行田をぶっ殺して、野神もぶっ殺さないと。
行先は野神達が進む方向と一致している。
焦らないでいこう。
次の目的地は穀物の生産の村だな。




