第26話 永遠に書けるペン
気になる話を学生から聞いた。
詐欺の品物を買わされて困っている友人がいるらしい。
金はそれなりに持っているから謝礼は期待できると聞いた。
なので、俺達はその人物に会いに行く事に。
その人物は一等地の一角に狭い店を出して営業していた。
店にはペンの絵と共に代書承りますと書かれた看板が出ている。
「こんにちは、詐欺の被害にあったんだって」
「そうなんだよ、聞いてくれるか」
ペンだこを持った手を振り振り、男の代書人は説明し始めた。
「永遠に書けるペンだっていうから、大枚はたいて買ったのに。実際は詐欺の何者でもなくて」
「見せてくれるか」
「どうぞ」
差し出されたペンと説明書を見る。
ペンにはあの黒い水晶がはまっていた。
説明書には永遠に書けるペンと商品名があり、色々と製品の自慢が書いてあった。
そして、最後に小さい文字で尽きる事無くインクを継ぎ足せば永遠に思えるほど書けるでしょうと書かれている。
前回の記憶が甦った。
「頼む。寝させてくれ」
俺は監視役の男に哀願した。
「寝させてやりたいが、俺はEランクでな。言いつけを破ると殺されちまう」
俺の周りには生産職のEランク達がペンを握り、目の下にクマを作り書類仕事をしていた。
俺達は溜まった書類を処理してたのだ。
内容は多岐にわたる。
会計報告から、ラブレターまである。
生産職はまだ良い。
昼間は生産のノルマを果たせば寝る時間が作れるからだ。
俺の昼間の仕事は討伐。
眠ったらお陀仏だ。
くそう、会った事のないエミリーにどうやってラブレターを書きゃ良いんだ。
褒めるにも情報は必要だろう。
君は俺の太陽だとでも書けば良いのか。
Aランクの奴ら、貴族令嬢に出すラブレターぐらい自分で書けよ。
ぶっ殺されるから言わないが。
くそう、ノルマが終わらない。
睡眠不足が思考低下に拍車をかける。
俺達が何をしたって言うんだ。
「これ、怪しすぎ。なんで買ったの」
俺は小前田の声で、我に返った。
「製品の説明を聞いているうちにボーっとなって、いつの間にか購入していたよ」
「商人はどんな奴だった」
「七三分けで、エラの張った顔をして、赤い目の奴だった」
行田だな。
「魔法かスキルを使われたんじゃない」
話を聞いていた御花畑が口を挟んできた。
「スキル使っちゃって解決したら」
そう小前田が言う。
「と言っても。永遠に書けるペンの伝説なんてないだろう。普通のペンを沢山買って使うのが無難じゃないか」
「このペンすごく気にいってるので何とかなりませんか」
「なにか気にいる要素があるのか」
「ラブレターとか代筆すると色々ストレスが溜まりまして。特にインクが切れたり垂らしたりするとイライラ倍増です。それを吸い取ってくれるような気がするんです」
「ずばり、あなた恋人いないでしょう」
「未依子ちゃん、さすがに不味いよ」
「恋人が居る奴なんて爆発すれば良いんだ。どうせ、お前達も恋人同士なんだろう」
「俺達は学校の同期だ。俺が二人を引率している」
「誰が役立たずだって」
「そうよ。酷い」
「でも俺がいなかったら野垂れ死んでただろう」
「ぐっ言い返せない」
「そんな関係だ」
「そうか悪かった。ラブレターを見るとむかついてむかついて」
「その感情をペンが吸い取ると」
「ええ、そうなんです。でも、手放そうと考えると手放したらいけないような気になるんです」
「何か術か呪いでも掛かっているんじゃ。小前田、頼むよ」
「鑑定。えっ、本当に呪いに掛かっている」
「呪いの解き方は」
「道具の親機があってそれを壊さないと駄目みたい」
「それは手に余るな。とりあえずペンだけをなんとかしよう。みんな何か無いか」
俺達三人はアイデアを出し合ったが、御花畑がそうそうに飽きて家捜しを始めた。
「えーと、知識の神様にまつわる話とかないのかな」
「こら、御花畑。話に加わらないで本とか読むなよ」
「エロ本は無かったけど、良い物を見つけたわ」
「なんだ」
「この歌集の歌にね。ウルタムの木を炭にすればインクがこんこんとあるんだな。つかえるんじゃね」
「ウルタムの炭ってあるのか」
「ほのかに良い匂いがするので料理に使います。でもこの歌のウルタムの木は霊木ですよ」
俺の疑問に代書人が答える。
「歌詞にはウルタムの木としか書かれていないのだったら問題ないよ」
ウルタムの炭の破片を用意して、歌集片手にカタログスペック100%。
こんこんとインクが湧き出る炭が出来た。
それをペンにつけて、説明書片手にカタログスペック100%。
永遠に書けるペンの出来上がりだ。
「ありがとう。これでむかつくラブレターの代書も少しはましになりそうです」
代書人によれば他にもペンの詐欺にあった人はいるようだった。
ペンを改良して回り、謝礼はたっぷり出る事に。
懐の暖かくなった俺達は国境を越え陸路で次の街へ旅立った。




