第23話 手作りハーブティーで美声を取り戻す
俺達はあっという間に出来た温泉で旅の疲れを癒していた。
宿の食堂で湯上りの体を冷やしながら、絞りたてのジュースをぐいっと一気飲み。
旅も良いもんだと思い始めていた。
食堂の隅から弦楽器と共に歌が聞こえる。
「ゆ゛う゛ぐれ゛のべや゛で~&¥+△%*〇*&¥※*+△$¥%@☆△/△$¥※*×◇&*&◇&@☆*◎」
もの凄いしわがれ声で途中からは言葉が聞き取れない。
かろうじて性別が女性だと分かる。
「何か風呂上りの良い気分が台無しよ」
憤慨した様子の御花畑。
「理由があるかも」
御花畑をなだめながら小前田が言った。
「下僕、あんたの出番よ。歌を改善して私達を良い気分にさせてよ」
俺の方を向いて御花畑が言い放った。
なんか無茶振りがきたな。
まさか、酔っている訳じゃ。
「くん、くん」
「何っ近いわよ。湯上りの色気にやられたのね」
「なんか酒臭い」
俺は少し顔をしかめて言った。
「周りの人間が飲んでるから臭いがするのよ」
「そうゆう事にしておいてやるよ」
なんとなく良い気分だったから、人助けしてやろうという気になった。
歌い手は兵士と思われる数人の男に囲まれていた。
兵士の中に見知った顔を見つけた。
荒木だ。
こいつは剣道部で、丸刈りの頭が特徴だ。
体つきは良く鍛えられている。
四角い顔で厳めしい。
なんでここにいるんだ。
俺達はメイク術で変装しているので、荒木は俺達に気づかないだろう。
前回の記憶が甦る。
「荒木の奴、使える奴だが、これが厄介だな」
荒木の職業は狂戦士だ。
一度スイッチが入ると、なかなか治まらない。
仲間にさえ襲い掛かる始末だ。
「おい、波久礼。荒木に気付け薬を嗅がせろ。お前、死角から近づくのが得意だろ」
俺は気付け薬を持って、死角から荒木に近づいた。
荒木は滅茶苦茶に剣を振り回している。
今だ。
瞬きする瞬間に近づいて、気付け薬を鼻に押し付けた。
「臭っ、お前。やりやがったな」
俺は正気に戻った荒木に斬られた。
そして気付け薬を鼻に押し付けられた。
「ほら、何か言ってみろ。臭いだろ。お前がやった事だ」
俺の斬られた傷にポーションが掛けられる。
激痛で気を失いたいが、気付け薬で出来ない。
俺は絶叫した。
「これに懲りたら、俺にその薬を使うな。分かったか」
だが、この後も、薬は使われた。
荒木の職業が狂戦士なので仕方ない。
その度に斬られたのは拷問と言える。
兵士が声を荒らげて俺は我に返った。
歌い手は若い女の子でリュートみたいな楽器を手に震えている。
美人だなどこがとは言わないが。
「領主様がお呼びだ」
「ごえ゛がでな゛ぐでむ゛り゛でず」
「ちょっと通して」
「お前はなんだ」
「声を治せるかと思って」
「なるほど、医者なのか」
「いえ医者じゃないけど、ちょちょいと」
「ほう詐欺師や呪い師のたぐいか。まあ良いだろうやってみろ」
解決の方法だが、実は少しあてがある。
この前、貰った『おばちゃん虎の巻』に喉が良くなるハーブティなるものが載っていた。
美声、間違いなしと書いてあるから上手くいくはずだ。
材料は幾つかのありふれた薬草と調味料だった。
薬草は小前田のポーション作りの為にアイテム鞄に沢山ある。
早速、調合してお茶にした。
「カタログスペック100%」
カップに淹れたお茶にスキルを掛ける。
お茶が光を放つ。
「喉が良くなるお茶だ。ささっ、ぐいっと」
俺は彼女にお茶を差し出した。
彼女はしまったという顔をしたが、少しためらった後にお茶を飲み干した。
「あっあっーー、治っちゃった。何て事してくれるのよ!!」
なんで罵倒されなきゃいけないんだ。
でも声が美しすぎて腹が少しも立たない。
「一曲歌いながら、頭を冷やしてみたら」
「そうね、宿の客にも悪いしね」
そう言うと彼女は歌い出し、周りの人間はうっとりと彼女の歌に聞きほれた。
「領主様がお待ちかねだ。声が治ったのだから問題はないな」
「えっと、ちょっと二人だけで話をさせてもらえないか」
「手短にな」
「怒りは収まったか」
「喉風邪を都合よくひいたから、嫌な領主から逃げられると思って。でも考えてみたら早計だわね」
「今晩やり過ごして、明日になったら他の街に行く予定だったのか」
「ええ、今晩、逃げる予定だったわ」
「それは悪い事をしたな。河向こうの領主も大概だったけど、ここも酷いな」
「どうしてくれるの」
「そうだな、責任をとって領主をどうにかしてやろう」
「そんなこと出来るの」
「お茶も問題無かったろ。問題解決力には自信がある。任せろ」
「そうね、こうなったらね。メリアよ。よろしく」
「波久礼だ」
少し作戦を練ってから、俺達四人は兵士達に連れられ領主の館に向かった。




