第20話 痩せて見える鏡でダイエット
この街も怪魚で潤っていたはずだ。
不公平だと言われると困るので、対岸の街と同じ様に温泉を掘り当てる事にした。
俺はダウジング道具を片手に街をうろうろしたが、中々良い場所が見つからない。
唯一良いなと思われた場所は民家の裏庭だった。
「裏から邪魔するよ!!」
しばらくして裏口のドアが開いた。
「裏口から尋ねてくるなんて変わった人ね」
でっぷりと太ったおばさんがこちらを興味深げに見ていた。
「俺達は怪しい者じゃない。ここに温泉を掘りたいのだけど」
「それは怪しいでしょ。いいこういう時は。奥さん耳寄りな話がありまっせ。投資すれば一年で元金の一割が貰えるんでっせ。お得でっしゃろ」
「未依子ちゃん、それは詐欺の口上よ」
「まあ、賑やかな人達。お茶でもどうかしら」
「せっかくだから、頂くよ」
お茶をご馳走になり裏庭に温泉を掘る許可を取った。
「御花畑、頼む」
「いくわよ、アースコントロール」
地面に穴が開きそこからゴッゴッと音がする。
しばらくして、穴からは熱湯が吹き上がった。
「まあまあ、大変」
「俺としてはこの温泉はこの街の為に、役立てて貰いたい」
「そうだわね。そうしてみるわ」
「迷惑掛けたから困っている事があれば解決するよ」
「じゃあ、あれをなんとかしてもらおうかしら」
どんな困った事がと思った俺達が、連れてこられたのが、ある姿見の前だった。
「この鏡が何か?」
「みるみる痩せる魔法の鏡と言われて、買ったのだけど。少しも痩せないのよ。困ったわ」
「小前田、鏡の前に立ってみろ」
「わー、何かほっそりした」
この鏡は歪んでいるな。
痩せる鏡じゃなくて痩せて見える鏡だ。
酷い商人がいたもんだな。
「何かこの商品の事が書いてある説明書がありますか?」
「ええ、チラシが」
どれどれ、『姿を映すだけでみるみる痩せる魔法の鏡、ダイエットに最適、今日からあなたも理想体型、今ならお買い得の金貨十枚』と書いてあった。
一見詐欺に見えるがギリギリで罪には問えないようなキャッチだ。
でも、これならスキルが使えるな。
「じゃあ、いきます。カタログスペック100%」
鏡は光に包まれスキルが掛かった。
「私が試しに使ってみても良い?」
「そうだな、実験台一号は小前田だ」
小前田は姿を鏡に映す。
「うわ、体が軽くなった」
「ずるい、私も、私も」
「御花畑も使わせてもらったら良い」
御花畑が鏡の前に立つ。
「うわ、あんたのスキル今日ほど凄いって思った事は無いわ」
次はおばさんが鏡の前に出て、みるみる痩せて別人の様になった。
「近所に自慢できそうだわ。そうだ、こうしちゃいられないわ」
おばさんは俺達を置いて出ていくと、おばさんの軍団を引き連れて戻って来た。
「押さない、押さない。今、スキルを掛けますから。カタログスペック100%、カタログスペック100%……カタログスペック100%」
俺はおばさん軍団が持って来た鏡にスキルを掛け続けた。
商人は相当数を売ったんだな。
なんか商人の尻拭いというか片棒担いでいる気分になってきた。
後で商人に一矢報いたい。
「売った商人を覚えているかな?」
「ええ、あなた達みたいに黒髪、黒目だったわ。年頃も同じぐらい」
俺がおばさんに尋ねると親切に教えてくれた。
黒髪、黒目の少年って、クラスメイトじゃないか。
野神達の仕業で間違いない。
「もう少し詳しく」
「七三分けでエラの張った顔だったわ」
どうやら行田のようだ。
奴の職業は商人だったから、それも頷ける。
確か、鑑定スキルと、交渉スキルと、説得スキルと、収納スキルを持っているはずだ。
前の時は戦闘職ではないが、野神がAランクにした。
金を稼ぐのが上手いからだ。
詐欺まがいの商品を売るとはな。
もっとも前の時は強請り集り、何でもありだった。
おばさん達には大変感謝されお礼に『おばちゃん虎の巻』なる本を貰った。
そして、御花畑と小前田はちゃっかり例の鏡を一枚手に入れて俺のアイテム鞄に突っ込んだ。
俺達は行田の痕跡を追う事にした。
奴を葬ろう。
死刑確定だ。




