第19話 怪魚討伐
代官はその日のうちにお役御免になった。
怪魚の依頼料は金貨百枚に跳ね上がったけど、乗りかかった舟だ。
俺は釣具を購入して、『釣りアホ日報』片手にスキルを掛ける。
本によればこの仕掛けでどんな大物も釣れると書いてあった。
釣りで思い出した。
前回の時はモンスター釣りをやらされたな。
「おい、お前ら、何か面白い事を考えろ」
野神そんな事を言い始めた。
「モンスター釣りをやったらどうです。餌は波久礼にやってもらいましょう」
そう、浦山口が提案した。
浦山口の職業は罠師。
罠師ならもっと安全なのを考えろよ。
「面白い。やってみろ」
俺はロープとフックを付けられた。
そして熊のモンスターの巣穴に突撃させられた。
追いかけてくる熊のモンスター。
俺は懸命に逃げた。
巣穴から出ると、野神がゲラゲラ笑っている。
「おい餌。モンスターが食いついてないじゃないか。当たりがきただけじゃ駄目なんだ。針に引っ掛けないと」
野神がそう言う。
俺はモンスターが瞬きする瞬間に、フックを口の端に引っ掛けた。
俺は慌てて、体のロープを解く。
取り巻きがロープを引っ張って、モンスターを手繰り寄せた。
近寄った所で野神が聖剣を一閃。
モンスターは魔石となった。
「餌は食われてないようですね。まだ使えます。次に行きましょうか」
浦山口そう言う。
「少し休ませてくれ」
「餌は食われるのが仕事だ。血まみれで巣穴に放り込んでも良いんだぞ」
「くそう、行けばいいんだろう」
釣りは何度も行われた。
最後に野神が飽きたので終わったが、嫌な事を思い出した。
でも今日は餌じゃなくて釣り師だ。
「二人とも行くぞ、誰が怪魚を釣るか勝負だ」
「負けないわよ。釣りゲームでは散々に大物を釣ったから、いけるはず」
御花畑が自信を持って言い切った。
「私、初めてで。でも、頑張ります」
対照的に小前田は控えめに言った。
三人で河に釣り糸を垂らす。
おっ、早速手ごたえ。
引き上げると五十センチぐらいのマスに似た魚が掛かっていた。
二人を見ると御花畑の釣果は十センチぐらいの雑魚を三匹。
小前田はボウズだった。
しばらくすると当たりがピタッと止まる。
大物の気配か。
「きゃあ、きゃあ」
小前田の声が聞こえ目をやると、竿が限界までしなっていた。
「絶対に放すなよ」
それから、小前田が格闘する事一時間、遂に魚影が見える。
一度、空中に跳ね大量に水しぶきを上げて水中に戻った。
魚は十メートルほどもあり、これは鯨クラスの大きさだろう。
だいぶ魚も弱ってきたみたいだ。
水面に口を出しパクパクやっている。
「御花畑、止めを」
「ファイヤーランス」
ジュワっと水面から水蒸気が上がり怪魚にファイヤーランスが炸裂する。
怪魚は消え去り、魔石が水に沈んでいくのが見えた。
やっぱりモンスターだったか。
俺は上着を脱ぎ捨て河に飛び込み、魔石を水中でキャッチした。
証拠の魔石をギルドに提出。
依頼料は一ヶ月前の水害で被害を受けた村への寄付として領主に渡しておいた。
宿でくつろいでいると表が騒がしい。
窓から外を見ると松明を持った住人がいる。
怪魚を殺した奴を半殺しだとか物騒な事を叫んでいた。
「二人共、逃げるぞ!」
俺は隣の部屋をノックして叫んだ。
俺達は裏口から夜逃げをする事になった。
馬車にシルバーをつなぎ、街の外へ出るように言って馬の尻を叩く。
俺達が運転していないのに馬車は出発した。
そして、俺達が建物の物陰に隠れていると。
「こっちだ」
「えーと、どなた?」
「あんたには感謝しとる。漁師を代表してお礼を言わせてくれ。ありがとう」
ああ、漁師の方ですか。それなら、少し安心かな。
「それで何の用」
「河を渡らせてやる」
「それは願ったり叶ったりだ」
「既に馬車も船に積んである」
用意が良いなぁ。
これは頼む手だな。
「お世話になります」
船は夜の河を静かに滑り出した。
月明かりだけが頼りの船旅だ。
「なんか夜の河ってロマンチックね」
「私は吸い込まれそうで何か恐いな」
「少し生臭いのでロマンチックではないな」
「ムードのない男は嫌われるわよ」
「俺はムードより安全を取りたいよ」
夜の河は少し恐かったが無事に河を渡り対岸の街に着く事ができた。




