第17話 別人になれるメイク術
俺達は討伐依頼を受ける為にギルドに来ていた。
「今日はどんな依頼を受けるかな」
「このジュエルドラゴンなんて良いんじゃない」
「御花畑、なんでそんな難しい依頼を持って来るんだよ」
「宝石のドロップがあるんでしょ。お買い得よ」
「未依子ちゃん、ギャンブルは身を滅ぼすわ。こっちの上級ポーションの納品にしない」
「そうだな、今日はそれにしとくか」
「ちっ、つまんねぇ奴」
舌打ちしたってドラゴンはやらないぞ。
ドラゴンスレイヤーになるのが目的じゃないからな。
窓口で受付嬢に声を掛ける。
「おねえさん、この依頼を受けるよ」
「ギルドカードを出して下さい。あら?」
受付嬢は俺のギルドカードを読むと次に俺の顔をじっと見る。
「何か」
「きょ、きょ、きょ」
受付嬢は俺の後ろの方を見て言った。
「キョンシーは出ないだろう」
俺は後ろを振り返るが小前田と御花畑以外は近くに居ない。
「凶悪犯のハグレ一党。みなさん指名手配犯です。捕まえて下さい」
「二人とも、逃げるぞ」
俺はガヤガヤと集まってきた冒険者の死角から、死角に移動して入り口まで辿り着いた。
よし、二人はしっかり付いて来ている。
宿に駆け込み、御者台に座り手綱を握った。
「よし二人共乗ったな。はいよー、シルバー」
俺が鞭を振ると馬車は弾丸のように街を爆走する。
そして、まだ情報が来ていない門を普通に出た。
「追っ手はきていないな」
「いったい何なのよ。もー」
「俺には心当たりがある。野神が手配したんだろ」
決闘でもないのに親鼻と祖塩をぶっ殺したからな。
あれがばれたんだろう。
「私達、これから追われる身なの」
「心配するな小前田。良い考えがある」
「スキル使って、別人に成りすまそうって訳ね」
「御花畑は察しがいい。じゃじゃーん、『別人になれるメイク術』」
俺はアイテム鞄から本を取り出した。
「それなら、可愛くしてあげるわ」
「女装なんて絶対しないぞ。メイクは小前田に頼む」
それから俺達はメイクを施した。
もちろん女装は断固拒否。
「カタログスペック100%。二人にもスキルを掛けるぞ。カタログスペック100%、カタログスペック100%」
不思議な事に二人が別人に見える。
「よし、行くぞ」
「あんた誰」
「俺だよ波久礼だよ」
「そうだったわ」
「おい、おい、頼むよ」
「未依子ちゃんはうっかりさんだね。もちろん私は分かっていたわ」
いや、小前田、絶対に分かっていなかっただろう。
「とにかく、さっさと街に戻るぞ」
俺達はしれっと門番に挨拶して街に入った。
ギルドに馬車を停め、恐る恐る建物の中に入る。
窓口へ行き。
「新規登録したい。俺はシロウ。二人はヨシミとミイコだ」
「なんか顔に既視感が。あっ、凶悪犯の。でも別人ね」
受付は騙され俺達は再登録する事が出来た。
魔道具も騙されてくれたようだ。
野神は女の子の数が少なくなって荒れていて、怒りをモンスターにぶつけているようだ。
モンスターに恐れずに向かって行く姿が評判を呼んで名声が高まったらしい。
過去の映像が蘇る。
「今日は飲むぞ」
野神がモンスター退治を終えて街に凱旋する。
取り巻き連中を連れて酒場にくりだした。
少し遅れて女生徒達が連れて来られる。
女生徒の衣服がはぎ取られた。
「波久礼、お前は見張りだ」
これから何が始まるかは分かっている。
止めないと。
俺はこんな時の為に、小前田から貰っていた睡眠薬を、野神達のグラスに入れた。
しれっとした顔で酒場から出て、扉の前に立った。
だが、嬌声が聞こえて来た。
くそっ、毒耐性の馬鹿野郎。
スキルが憎い。
回復スキルが憎い。
扉が開けられ満足した顔の野神が出て来た。
「お前、酒になんか入れただろ」
「知らないな」
「まあいい。勉強になった。毒を入れられたら、何人かは死んだかもしれん。これからは毒見役を置いて食事するさ」
くそっ、手札が一つなくなった。
「2回戦といくか。戦闘も入れたら3回戦だな」
野神がまた酒場に戻る。
痛ましくてドアの向こうは見れなかった。
くそっ、職業がないのがこんなにもどかしいとはな。
一矢報いる為の手はないか。
俺の思考は過去の記憶から戻った。
今回はスキルが一つある。
大丈夫だ。
野神を殺せるはずだ。
俺達は魔王城に向かうため次の街へ出発した。




