第13話 駄馬を名馬にする
ちょうど良い宿を見つけた。
一階は食堂になっていて奥に受付のカウンターが見える。
夕飯時なのか明るいというのに赤ら顔の男性がちらほらと酒を飲んでいた。
空いてるテーブルの椅子に腰掛け、ウインナーの盛り合わせとカブのシチューとパンを頼む。
飲み物はジュースだ。
「えー、お酒、駄目なの」
「御花畑よ。お酒は二十歳になってから」
「そうだよ、未依子ちゃん法律は守らないと」
「知ってる、とある運動部では毎日のように飲んでいるって。そして、とある男子校ではロッカーにビールが隠してあって昼飯時に飲むそうよ」
俺もその話は知っている。
実話だ。
赤ら顔の生徒をこれまた赤ら顔の先生が教える。
先生も昼飯と一緒にビールをしこたま飲んだそうだ。
授業でろれつが回ってないと評判になっている。
生徒も呑んでいるからお相子か。
「そんな、不良校を参考に出されても駄目だ」
「むー、けち」
「可愛く言っても駄目な物は駄目だ」
「お父さんみたい。そんなのだと将来、娘さんに大嫌いって言われるよ」
「良いんだよ。世間では大体、父親は言われるんだ」
「さめてるのね」
「あっ、おっちゃんがいる」
小前田が手を振っておっちゃんに知らせる。
食堂にはこの街まで運んでくれたおっちゃんがいた。
「おっちゃん、また会ったな」
「奇遇だね」
小前田がニコニコとおっちゃんに話し掛けた。
一緒に食事する事になり、話はモンスター退治の話題になった。
「お前さんら、強くてうらやましいよ。爪の垢を馬に飲ませてやりたい」
「あの馬は気が弱すぎる」
「そうなんだよ。軍馬の血統らしいんだが、正直ちょっと疑っているんだ」
「騙されたんじゃ」
「今回の納品が終わったら、妻の薬代が足りないので、売ろうかと思っていた所なんだ」
「可哀相。なんとかしてあげようよ」
「それなら、俺のスキルでなんとかしてやれるかも」
「そうかい、なら頼むとするか」
街の外に行き馬にスキルを試す事にした。
暴れられたら厄介だからな。
「おっちゃん、やるよ。カタログスペック100%」
血統書片手にスキルを掛ける。
馬は一回りほど大きくなり、顔つきも精悍な物に変わった。
毛並みもつやつやしている。
狼のモンスターがこちらに駆けてくるのが見えた。
「ヒヒン」
馬は一声鳴くと狼のモンスターに駆け寄り、後ろ足でキックを繰り出した。
モンスターま魔石となった。
馬が帰ってる。
「ブルブル」
落ちつきのある馬になったみたいだ。
「驚いたな、駄馬がこんなになるとは」
「これで高く売れるわね」
「何か凄い良い事した気分だ」
「馬車を検討してくれるのよね。あんたのスキルで、お金がっぽり稼いで買うのよ」
「駄目だ。あの職業を渡したじじいは神様だってな。私利私欲の為にスキルを使うと天罰が下るような気がする。俺の勘は当たるんだ」
「でも、薬草採取の鋏、それ破っているんじゃ」
小前田が突っ込みを入れた。
「良いんだよ。採った薬草で助かる命がいる。立派な人助けだ。さっきスキル掛けた靴は二人の苦痛を救っているだろ」
「屁理屈ね」
御花畑が呆れたような口調で言う。
「じゃあ、波久礼君の強化は?」
「俺は強化した力を人助けにしか使わない。樋口を殺したのだって人助けだ」
「本当に屁理屈ね」
「そういう訳で駄目だ」
「聞いて貰いたい事がある」
「なんだい、おっちゃん?」
「この馬貰ってくれないか」
「何でまた?」
「この馬を使いこなせる気がちっともしない」
このおっちゃんの事を思い出した。
前回、二束三文で野神に馬を買われて、自殺した人だ。
妻の薬代が払えないで死なせれば、そりゃ死にたくもなるだろう。
野神の被害者だと言える救ってやりたい。
「それなら、この馬にふさわしい金を作ってくるから売ってくれ。これは手付の代わりだ」
「これはエリクサー。貰ってもいいのか。これだけで馬の代金になってお釣りもでるぞ」
「良いんだよ。なっ、二人もそう思うだろ」
「ええ、あの時は地獄に仏だったわ。歩くのは本当に地獄だったから」
「そうそう、神様だと思った」
「では有難く頂くよ」
「馬の代金は少し待ってくれ」
「そんな、悪いよ。元はスキルを掛けてもらったからこうなったのに」
「良いんだ。人を助けて俺も助かる。ウィンウィンだ」
よし、人助けでがっぽり稼ぐぞ。




