最終話 ざまぁの結末
「ぐわぁ! その力はなんだ?! 申し訳ありません、邪神様……。命の残りを封印解除に捧げま……す……」
黒い渦巻いた穴が開き邪神の封印が解けた。
邪神は10メートルほどの体で跪いている。
体を震わせる度に魔王城が壊れ、瓦礫が落ちてくる。
邪神が一声吠えると、俺が作った穴どころではなく、文字通り魔王城の屋根が吹き飛んだ。
「小前田、御花畑お前達は今から聖女と賢者だ。名乗りを上げろ」
「ポーションの聖女、ヨシミ」
「獄炎の賢者、ミイコ」
「俺は名も無き勇者だ。よし、条件は整った」
俺は『ヘンゲル予言』を持って、邪神に駆け寄り、足に触る。
「カタログスペック100%」
光が邪神を包み、ボロボロと邪神が崩れる。
「封印が解けた我が崩壊するだと! 無敵のはずの我が何故滅びるぅ……」
邪神が喋る度に壁に亀裂が入っていく。
最後っ屁が無い事を祈る。
「預言書に書いてあるんだよ、『勇者と聖女と賢者が邪神の封印解けし時に集えば邪神が滅ぶ』と。さよならだ」
「これも運命か……。だが、我は滅びんぞ。いつかまた復活するであろう……」
その時は異世界人に頑張ってもらいたいもんだ。
「これを受け取れ」
邪神から黒い光が飛ぶ。
慌てて避けたが、手首に掠ってしまった。
聖剣が手から落ち、血がぽたぽた垂れる。
邪神が全て黒い塵になった時に桜沢さん達が入って来た。
「大変、怪我をしたのね。回復職お願い」
「ヒール。効かない。エクストラヒール。駄目ね。ゴッドヒール。もう手がないわ」
「見せて」
小前田が俺の手首にエリクサーを掛ける。
傷は治らない。
もしかして、浄化の杖を握った。
血は止まったが傷は治らなかった。
まあいいか。
邪神をやった引き換えだものな。
「そこで倒れているやつらを回復してやってくれ」
「えー、野神と側近を回復するのは嫌なんだけど」
「それは放っておいて良いよ」
「了解」
桜沢さん達はクラスメイトの男子達を介抱しに掛かる。
よかった『浄化の杖』は効力を発揮しているようだ。
俺の側には王女が来て少し戸惑った後に話し始めた。
「私、運命に逆らってみようと思います」
「それは良いかもな」
「あの、一緒に歩んではもらえないでしょうか」
「お誘いは嬉しいんだけど。異世界の事は異世界人がどうにかすべきだと思っている」
「そうですね。甘えですね」
「今後は異世界の人間だけで方を付けるように、語り継いではもらえないか」
「分かりました。それが世界を救ってもらった者のせめてもの責務でしょうから」
王女は一人魔王の間から出て行く。
通り過ぎる時に王女の横顔に涙が光った。
「良かったの。王女の誘いに乗らなくて」
御花畑が言った。
「ここは俺達の住む世界ではないんだ」
「そうね。来訪者だもんね。家族と永遠に別れて、異世界を取りたくないわ」
「波久礼君、異世界なら漏れなくハーレムが付いてくるよ」
と小前田。
「そんなのは柄じゃない」
「そうだね。そこで考えを変えるようなら絶交よ」
さて始末をつけるか。
呻いている野神のそばに寄ったところ、様子がおかしいのに気づいた。
魔王に斬られた傷が治ってきているのだ。
完全に回復するまでに止めを刺す。
剣を突き入れると野神は飛び退き、俺が邪神との戦いで落とした聖剣を拾った。
野神からは黒いオーラと純白のオーラが渦巻いている。
まるで太極図だ。
「お前を倒して、魔王討伐と邪神討伐の功績を奪ってやる。そして俺は世界征服するのだ」
「ほざけ」
「みんな。野神君と、波久礼君が一騎打ちするわ。場所を開けて」
桜沢さんが、決闘の場所を整えた。
「俺は聖邪を併せ持つ完全な生命体になった。今なら神にさえ勝てる」
「御託は良い。掛かって来い」
「パーフェクトアルティメットスラッシュ!」
「ふっ、無闘取り」
俺は聖剣を奪い取ると野神ににじり寄った。
「辞めろ、何をするつもりだ」
「俺は勇者だ。カタログスペック100%」
俺は片手に聖剣、もう一方に『究極勇者エクストラスペシャルDX』を持ってスキルを発動した。
聖剣が光を纏い輝いた。
物語では勇者の聖剣の一振りで邪に落ちた神を斬ったと書いてある。
俺は居合の構えをとり、聖剣を横薙ぎした。
「勇者必殺技の一つ聖邪破断剣」
野神の上半身と下半身が分かれた。
だがまだ生きている。
「降参だ。辞めてくれ。頼む。許してくれ」
俺は野神の額に聖剣を突き立てた。
天から稲妻が落ちてくる。
俺は聖剣から手を離した。
『すまん手が滑った』
どこからか声が聞こえた。
雷が聖剣に落ちて、野神のオーラがなくなった。
「鑑定してくれ」
「鑑定。野神はアンデッドになったようね。神の奴隷とも書いてあるわ」
野神は体を再生しながら、むくりと起き上がると。
「我……は……勇者。神の……奴隷。モンス……ターを倒すのが……使命」
そういうと頭に刺さった聖剣を抜き、城から出て行った。
あいつの最後に相応しいのかもな。
永遠にモンスターを狩って過ごすがいいさ。
「みんな俺のスキルで元の世界に帰るぞ」
「やった、遂に帰れるのね」
「あーあ、魔王を退治してウハウハは結局夢か」
「麻呂ナード、元気に暮らすのよ」
従魔やテイムした動物は半日遅れで到着するエターヤル王子の部隊が保護してくれる手はずになっていた。
「スケルクロウ達を生き返らせてお願い」
黒谷さん頼んできた。
「ああ良いぜ。カタログスペック100%」
スケルクロウを光が包む。
そこにはすっぽんぽんの美女が。
お前、女だったのか。
慌てて黒谷さんが服を渡す。
テイマー系の職業の者は従魔らとの別れを惜しんでいた。
その他の者は喜んでいる者やがっくりしている者など様々だが。
一人も帰らないとは言わない。
そして、輪になったクラスメイトに加わり、『来訪者戦記』片手にスキルを掛ける。
「カタログスペック100%」
俺を含めたクラスメイト31人は光となって消えた。
遂に終わりだな。
気づいたらあの白い空間に一人で立っていた。
「手間を掛けたのう」
爺が目の前に現れ声を掛けてきた。
「みんなは?」
「今頃は教室に着いているわい」
「それで」
「そっけないのう。ちょっと褒美を渡したいのじゃ」
「要らないから早く帰してくれ」
「せっかちじゃのう。カタログスペックを地球でも使えるようにしておくぞい。ではさらばじゃ」
俺が瞬きしたら教室に立っていて、異世界で死んだ奴まで生き返っていた。
クラスメイト達は全員が席に座っているみたいだ。
いいや、野神だけがいない。
ご丁寧に花が野神の机の上に飾られていた。
きっと野神はアンデッドになって、今も異世界でモンスターを狩っているのだろう。
-続編に続く―
あとがき
この作品、最初は短編でした。
評判が良かったので長編にして完結させたわけですが、続編を現ファンで書いてみたいと思ってしまいました。
続編を書くには色々と設定を変えたかったので、改訂版を始めまして、それで無事改訂できたとなったわけです。
続編は『異世界帰りの勇者、陰陽師にジョブチェンジする』です。
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