第10話 一つの復讐を終えて
前回の魔王討伐の時の記憶を思い出した。
「おら、予備の投げナイフだ背負いに入れておけ」
樋口にそう言われた。
前回の魔王討伐の時、スキルが無い俺は荷物持ちをしていた。
投げナイフの束を渡される。
ずっしりと重い。
「こんなに持てない。収納スキル持ちに任せたら」
「馬鹿な奴だな。収納スキル持ちが死んだら、収納した荷物は消えるんだよ。お前が死んでも背負いは残る」
「知ってるけど」
アイテム鞄という物が沢山入る便利アイテムがあるが、凄く高価だ。
まだ野神達は買うつもりがないようだ。
「分かってるなら言わせるな」
「荷物が重くなったらモンスターから逃げられない」
「いちいち口答えしやがって。よし、俺がお前を鍛えてやる。荷物を背負ったまま走れ。ほら投げナイフも忘れるなよ」
俺は仕方なしに走り始めた。
荷物が重くて長く走れない。
スピードが徐々に落ち始めた。
「スローイング」
俺の尻に激痛が走る。
くそっ、投げナイフを投げやがった。
「おらおら、ぼさっとしてると、けつがざくろになっちまうぞ」
俺はスピードを上げた。
街を一周する間に何度も投げナイフが刺さった。
宿に帰って来て、自分の部屋に戻ろうとする。
一刻も早く治療しないと。
小前田の部屋の前を通ると、小前田が首輪をして立っていた。
彼女は奴隷だ。
だが、Fランクの俺に優しくしてくれる。
「酷い。誰にやられたの」
「樋口に」
「ポーションを持って行きなさい」
「でも数を調べられているのだろう」
「失敗が出た事にすればいいのよ」
「ありがとう」
俺はポーションを飲んだ。
尻の怪我が治る。
足音がしたのでその方向を見ると樋口が歩いてきた。
樋口は意味ありげな視線を俺に向けると、小前田の肩を抱いて、小前田の部屋に入っていった。
くそう。
彼女の境遇は分かっている性奴隷だって事はな。
その境遇から助け出せない俺はなんて無力なんだ。
怒りがこみ上げるがどうしようもない。
俺は壁を拳で叩いた。
手の皮膚が傷つき、血が流れ出る。
部屋のドアノブを握って、今入ったら殺されると思った。
なんで俺はこんなに意気地なしなんだ。
結局、俺は何もしないで、自分の部屋に戻った。
「では始め」
クラスメイトの審判役がそう言って、手を振り下ろした。
その声で、我に返った。
樋口、前回は散々煮え湯を飲ませてくれたな。
「シャドウ」
樋口が影に溶ける。
知ってるよ。
この後は、刺しに来るんだろう。
「スタッブ」
俺は余裕でかわした。
喫茶店で鍛えた後ろの客の位置も把握する技と、達人の動きの合わせ技だ。
樋口のシャドウスキルが攻撃したため解ける。
「何っ!」
樋口が瞬きする瞬間を狙って、口に爆弾を突っ込んだ。
爆発。
樋口の頭は吹っ飛んだ。
小前田の爆弾で殺してやった。
前回の時の小前田はいないが、仇を討ってやったぜ。
「嘘っ、殺したの。見損なったわ」
桜沢さんの俺を非難する目つき。
「何を甘い事を言っている。モンスターとの戦いは殺すか殺されるかだ」
「でもクラスメイトなのよ」
こいつを生かしておくと、野神の意見に反対する奴が消されていくんだ。
必要な事だ。
「今は分からなくて良い」
「何時なら分かるっていうのよ。私は分かりたくない」
まだ日本にいる時の感覚が抜けてない人間に、何を言っても無駄だろう。
「野神、これは正式な決闘だ。俺の事は罪に問えない。だろ。約束は守れよ。ランク付けはなしだ」
「くっ、使えない奴だ。スキルを一つしか持たない相手に負けるとは。面汚しも良い所だ」
「戦ってくれた人間に対してその言葉はないだろう」
「殺したお前が言うな」
決闘は野神が散々使った手だからな。
喧嘩を吹っ掛けて決闘で殺す。
罪に問えない。
「波久礼君、私は信じているわ。何か理由があったんでしょう」
小前田が寄って来てそう言った。
「あいつはクラスメイトを暗殺するような奴なんだ」
「そうなの。あり得るかもね」
「御花畑は聞かないのか」
「私だって囮にした奴らをぶっ殺したいわよ。機会があればしているわ。許せない事があるのよね。目がそう言っている」
「まあな」
俺は、小前田と御花畑を連れてその場を後にした。




