まさかの来訪
読んでくださり、ありがとうございます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
よろしくお願いします!
「お久しぶりですが、お元気にしていましたか、クラリッサ嬢」
にこやかに我が家の応接室に現れた彼。わたしもにっこりと微笑みを浮かべて、
「ええ、元気にしておりましたわ。前回はご迷惑をおかけしてしまって・・・。風邪などは引かれませんでしたか?」
わたしはそれだけが心配だった。
「はい、特に何もありませんでした。私こそ、さんざん笑ってしまって・・・。申し訳ない」
「いえ、お気になさらないでください」
謝罪をお互いに終えると、言うことがなくなってしまった。部屋に沈黙がおりる。なんだか、既視感のある景色だった。
「そうだわ、前会ったときね」
思わずそう呟くと、彼が不思議そうにわたしを見る。
「何のことですか?」
「前も、自己紹介すると、静かになってしまったでしょう?憶えていらっしゃいますか?」
「ああ・・・。そうでしたね」
二人でくすくすと笑う。なんだか彼といると笑ってばかりの気がする。たまに怒ってしまうが。
「暇ですし、また公園にいって、ボートでもこぎますか?」
「もう!」
わざと怒ってみせると、彼ははははっと声を立てて笑った。
「冗談ですよ。そういえば、今ふと思ったんだが、人って怒ってるふりをするときって必ず、手を腰に当てますよね。何故でしょうね」
「確かに・・・!威厳を示すため・・・?」
「ああ、なるほど」
そんなたわいもない話を繰り広げながら、お茶を楽しむ。案外、彼とは良くやっていけるかも知れない。
「そう言えば、貴女の誕生日はいつですか」
唐突にきかれ、少し戸惑うけれど、わたしは素直に答えた。
「十一月十七日です」
「来週なのですか?」
驚いたように彼が尋ねる。わたしは頷いた。隠すことでもないだろうし、釣書にも書いてあるはずだ。
「ええ、そうですね。十七歳になります。貴方は?」
「私ですか?十二月二十日です」
「あら、一ヶ月差なのね!何歳になりますか?」
「十二月二十日で二十歳になります」
わたしは何だか納得した。彼が大人な雰囲気を持っている理由を。
「わたしより三歳上なんですね。何だか大人に感じるわ」
「ふふっ、それほど差はないでしょう」
「そうかしら。でも、もう成人なさっているのですもの。わたしはまだ一年待たないといけませんし」
わたしがふふっと微笑むと、彼はそうかなあと呟いた。和やかに話し続けていると、執事が少し焦った
ように入ってきた。
「どうしましたか、カシュー?」
執事、カシューは少し息が乱れたまま、口早に言った。
「クラリッサお嬢様、クロッキート公爵令息様、ご歓談中、申し訳ございません。ですがあの、突然、王
太子殿下がいらっしゃって・・・」
「王太子殿下・・・?」
「何故、ここへ?突然すぎるし・・・」
彼が不思議そうに呟いているが、不思議なのはわたしも同じだ。とにかく、どのような状況できたのか、把握しないと。
「カシュー、どうして王太子殿下がいらしたのかはご存知?」
今代の王家とスウェルブ公爵家は、近い血縁関係はない。むしろ、彼の家、クロッキート公爵家の方が近いのだ。何せ、彼は王太子殿下の従兄弟なのだから。わたしの父が今の国王陛下と再従兄弟にあたる。もう混乱してくる家系図になるのだ、王家は。
「いえ、存じません。旦那様が応接室にご案内なさいまして、そのままお嬢様にこのことを伝えてくるように言われました。それ以来、応接室に王太子殿下とともにおこもりになっています」
「何故そんな急に・・・?」
思わず呟くけれど、その答えが返されることはない。
「貴女は行かなくてよろしいんですか?私のことは気にしないでください。ここで待たせていただけるなら、お待ちさせていただきますし、邪魔でしたら、帰りますし」
「いえ、全く邪魔なんてことはありません!」
わたしが全く違うと否定すると、彼は少し嬉しそうにそうですか、と言った。
「でも、行った方が良いのかしら・・・。こういう場合ってどうすればよろしいんでしょう。わたし、王太子殿下とお会いしたことないですし」
この国では、デビュタントは十八歳からだ。わたしは来週やっと十七歳になるので、まだあと一年はあ
る。
「うーん。どうだろう、確かに迷いますね。お父上からは何とも言われていないのですか」
「はい、何も申し付けられておりません。お嬢様にお伝えするよう言われたのみでして・・・」
カシューも困ったように首を傾げている。
「お嬢様、少々こちらでお待ちいただけますか。旦那様から新しいことが言われていないかをおききして参ります」
「ええ、お願いね」
わたしはカシューに託して、彼の方を見た。
「急に巻き込んでしまって、申し訳ありません。全く邪魔ということはないのですし、むしろ、もう少しお話ししたいのですけれど・・・。本日は、家のものもばたばたしておりますから、これ以上お構いすることはできそうにありません。不快でしたら、わたしに言わずに帰っていただいてももちろん構いませんので」
わたしがそう言うと、彼は分かっている、と頷いた。
「でも、私も貴女ともう少しお話ししたいですし、まだいても構いませんか」
「良いのですか!?嬉しいです」
わたしは嬉しくて、思わず口元をほころばせた。まさか残ってくれるなんて、思いもしなかった。
「お嬢様、きいて参りましたところ、お嬢様にも良ければ応接室に顔を出してほしい、婚約者様をおいてけぼりにはしないこと、とのことでございました」
わたしは首を傾げる。
「ということは、貴方もつれてきて、ということかしら」
「私はついていけるなら、本望ですよ」
さりげなく彼がフォローしてくれる。
「良いんですか?では、ご一緒に参りませんか。婚約者としてのご挨拶も兼ねて」
「王太子殿下にご挨拶をしておくのは良いですね。では、参りましょう」
消してしまって、すみません!
ですが、物語の時系列的に、誕生日がおかしかったので、直しました・・・。
引き続き、読んでくださり、ありがとうございます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
まだ、続きます!
投稿は不定期に行いますが、頑張るので、読んでくださると嬉しいですᕦ(ò_óˇ)ᕤ