トマトを食べるか、公爵位を手放すか
第二話です!よろしくお願いします!
「クロッキート公爵令息は、何かお嫌いなものはおありですか?」
「そうですね・・・。私は、トマトとか・・・?」
「あら、そうなんですか?なんか少し意外です」
小さく笑いをこぼすと、彼は苦笑いした。
「そうですよね。次期公爵ならトマトくらい食べなさい、と言われるんですけど、あれだけは無理ですね・・・」
「じゃあ、もし、トマトを食べて、公爵の立場を手に入れるか、トマトを食べなくて、次期公爵の地位を手放すか。どちらを選びますか?」
悪戯っぽく尋ねると、ええ〜っと彼は声を上げて、うーん、と唸ってしまった。ふふっと笑いをこぼしてしまう。
「そんなに迷われるのですか?」
「そうですね・・・。別に、私自身は公爵の地位はいらないんですけど・・・」
「あら、じゃあ、トマトを食べなければよろしいのよ」
軽やかにそう言うと、でもなあ、とこぼしている。
「どうして、そこまで迷われているの?」
「だって、結婚する女性は、公爵の方が良いだろう?」
突然、そう言われ、余裕は一気になくなった。びっくりして、思わず立ち止まる。彼を見上げると、彼は微笑んでいた。
「そ、そうかしら?」
「貴女のために、私は一回だけトマトを食べてみせましょう」
「まあ!ふふっ」
嬉しくて、同時に面白くなってきた。
「今度、トマトパーティをしましょう!」
わたしがにっこりと満面の笑みで提案すると、彼は苦笑いしながら、頷いた。
爽やかな風を受けて、髪の毛が少し揺れる。綺麗な紅葉が今日は殊更に美しく見えて、思わず微笑む。
「どうされましたか?」
「いえ、今日は何だか、紅葉が綺麗だなって思いまして・・・。嬉しくなったんです」
「ああ、分かります。私もそう言うとき、ありますから」
二人同時にまた歩き始める。
「この時間は、穏やかでいいですね」
「ええ、そうですね」
「そう言えば、どの季節がお好きですか?」
きかれて、わたしは前を向いたまま、微笑んで答えた。
「秋ですわ」
「本当に?奇遇ですね、私も秋が一番好きです」
嬉しそうに、自分もだと微笑む彼。わたしは、彼を見上げていった。
「あら、本当?わたくしにあわせようとしているのではなくて?」
悪戯っぽく彼の顔を覗き込むと、少し驚いたような顔をしてふっと笑いをこぼした。白い歯がきれいに揃っている。
「ええ、本当ですよ」
「ふうん」
「参ったな、信じてくださいよ」
わたしはふふふっと笑った。彼も、つられて、あははっと笑っている。
「あっ、ついたわ!ここでボートに乗れるときいたのだけれど・・・」
「ええ、私もききました。今日は、最初からここに来るかなって思っていたので、公爵家のもののボートを用意させていたんです。乗りましょうか」
驚いて、彼を見上げる。
「まあ!用意周到だわ!でも、わざわざありがとう存じます」
嬉しくて、思わずはしゃぐ。
「これです」
そこには、綺麗な木のボートがあった。
「素敵!本とかに出てきそうね!」
「喜んでいただけたようで何よりですね」
嬉しそうに笑って、自身が最初に乗り込み、座る場所を確保する。それから、わたしに向かって、手を
差し出してくれた。
「ありがとう存じます」
引き続き、読んでくださり、ありがとうございます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
まだ、続きます!
投稿は不定期に行いますが、頑張るので、読んでくださると嬉しいですᕦ(ò_óˇ)ᕤ