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第5話 初めての旅路

「あの兵士たちに認識阻害の魔法をかけた。それだけだ」

「え!? そんな魔法まで使えるの!」


「息苦しい王宮生活には、姿を偽るために必要だったんだ。生み出すのに1年かかったがな」

 

 これも魔法陣の良いところだな。自由に魔法を組み立てることができる。

 ――魔法陣展開 生成、発動、付与など、たくさんある。 

 まあ、相応のセンスも必要だが、色々な事に応用できるのはいいことだ。


「限度はあるが、それくらいならできるぞ」

「はぇ…… 流石ね。……これはとんでもない人を連れてきたかもしれない」

「何か言ったか?」


「い、いや! なんでもないわ、それよりこれからどうするの? もう夜中よ」

「? まあいいか、そうだな……」


 夜は危険だ。王都のように壁がない今、魔物とかがわんさかいる。

 王都の近くで野宿もありだが…… 別の危険があるな。兵士に見つかったらもっとややこしいことになる。


 ……いや、逆にありじゃないか?


「俺はそのまま行っていいぞ」

「え? 大丈夫……なの?」

「ああ、問題ないぞ」

「……本当よね?」


「ああ、信じてくれ」



 ~~



「きゃぁぁぁっ!!」

「よーし、大分釣れてきたな」


「バゥッ! バゥッ!」


 後ろから追いかけてくるナイトウルフたち、それから全力で逃げる馬車。

 よし、魔物はある程度集まったな。


 俺の作戦はこうだ、わざと魔物をおびき寄せてそれを狩る。これで効率よく狩れることは間違いない。

 道は一直線で、もちろん魔物も一直線に追いかけてくる。これが狙いだ。


「追いつかれるわ! もっとスピードを上げないと!」

「おい、これ以上上げると脱輪するぞ?」


「それどころじゃないわよ!」


 メルサは相当焦っているように見えるが…… しばらく辛抱してほしい。

 十分引き付けて…… もう少しなんだ。

 傷つけずに、そしてなるべく多く狩りたい。一発で仕留められる距離まで待つか。


「シュベルト、何とかして!」


 メルサが必死に訴えかけてくる。

 いや、まだ、まだだ。確信を持てるまで……


 ――ゴガンッ!!

「!? 車輪が……! いやぁ!」


 馬車が体勢を崩し、その反動でメルサが外に放り出されてしまった。

 ナイトウルフはそれを逃がさず、メルサに襲い掛かる!

 

「バルルゥッ!」

「ひっ……! うぅっ!」


 (避けらない…… 私、死ぬ、の……? イヤ……!)

 無防備なメルサは、目をつむることしかできない……

 


 ……飛びついて来たな? 

 俺は静かに人差し指を奴らに向けた。集中しろ、時間を止めるように……


 お前らはもう、詰んでいる。



 ――魔方陣展開 発動 衝撃波


「飛べ」


 ――ドォォォォンッ!! 

 

 魔法陣から繰り出された波動は、いとも簡単にナイトウルフたちを吹き飛ばす!

 すさまじい轟音と共に、衝撃が響きわたった。


「いやぁ! 今度は何!?」

「……ガッ、ガ……ァ」


 ……目標沈黙。うまく行ったな。ナイトウルフは5匹、大きな収穫だ。

 そして、まだ宙に浮いていたメルサをキャッチした。


「よっと、大丈夫か?」


「う、うぅ…… シュ、シュベルト……? もう! やるなら早くやってよ!」

「すまない、できるだけ狩りたかった」


 今俺が使ったのは衝撃波だ。これで獲物をできるだけ傷つけず、手に入れることができる。

 ナイトウルフも死んだわけでは無く、気絶しただけだ。


「そういうわけだ、ナイトウルフの方へ行ってくる」

「え? ちょっと! はぁ……」


 俺はメルサをその場で降ろし、ナイトウルフの方へ向かう。

 メルサは、ぺたりと座り込んだまま、動くことは無かった……



 ~~



 それから、メルサは馬車を直し、俺は仕留めたナイトウルフを馬車に詰めていた。もう朝になりつつある。


「はぁ、ようやく出発できそうだわ。こんな経験初めてよ……」

「こっちも終わりそうだ」


「もう……次はこんなことしないで!」


 あぁ…… メルサ相当怒ってるな。さすがにまずかったか……

 は、早く話題を変えなければ。


「……そういえば、俺たちはどこに向かっているんだ?」

「…………」

「わ、悪かったよ」

 

「……はぁ、もういいわ。私たちは今、レサリアに向かっているの」

「レサリアか……」

 

 正教国レサリア。王国の隣国であり、国民全員がラーハ正教を信仰する国だ。

 ラーハ正教はこの国でも主要な宗教だから、別に怪しい国というわけでは無い。


「この先に分かれ道があって、そのうちのひとつがレサリアに向かう道になるわ」

「そうなのか。もうひとつは何なんだ?」

「……リウの街につながっているわ」


「あー なるほど。レサリア一択だな。リウなんて行ったらとんでも無いことになる」

「そうね、そのつもりよ」


 ……そんなことを言っていたらもう分かれ道だ。

 道に看板は立っておらず、辺りに建物や人も見当たらない。

 魔物が多く生息している場所だから、あまり人は居ないのだろう。


「メルサ、どっちだ?」

「うーん…… 待って、今地図を見てるから…… うん? んん?」


 メルサは地図とにらっめこをしている。……地図は回したり、逆さで見たりしないと思うのだが…… 大丈夫か?


「地図、反対だぞ」

「……え? …………あ! ホントだ!」

 メルサは顔を赤らめながら慌てて直した。

 


 右は森の中を進むルートで、左は平原を進むルートだ。


「……多分こっちね! 行きましょう」

 左の道を指さして進み始めた。


「…………」

 本当に大丈夫だろうな?


「ふぅ…… この時間帯なら魔物もあまり出ないわ。これでひと安心ね」

「そうか、んぅ…… 眠くなってきた」

「確かに…… 一睡もしてないわね」

 メルサはぐっと背伸びをする。

 

 おかしい。いつもなら3日は寝ずに動けるのだが…… 今日はとても疲れているな。なぜだ……


「しばらく寝てもいいのよ、危なかったらまた起こすし」

「メルサも寝てないだろう? 俺だけ眠るのも……」


「私は全然大丈夫よ、街についてから寝ればいいし」

「そうだな…… お言葉に甘えるとするか」

 俺は、荷車の端に腰をかけて、目をつむった。

 

 ――色々なことがあったな。王宮から追放されて、今は幼なじみの護衛をしている。

 まったく、人生なんて何が起きるか分からない。


 今は、この旅を…… 楽しむことに……しよう……


「…………」

「…………おやすみ。シュベルト」



 馬車は、平原を進み続けるのだった。

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次はローザ視点に移ります!

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