表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/17

第1話 俺があいつの護衛になった理由 1

 ――とある街道にて……


「グハハハッ! 見ろっ! 女と護衛がたった一人だぜ!」

「ひひっ、こいつはカモだ!」


 ――襲い掛かってくる盗賊たち。

 奴らの目的は、奪い、殺し、もてあそぶ。それだけだ。


「ねぇ、シュベルト…… このままじゃ、追い付かれる……」

「……大丈夫だ。俺に任せておけ」

「え!? 何してるの!?」


 そのまま俺は馬車から飛びおりた。さて、もう逃がしはしない。 

 

「……ぉお? 誰か降りてきやがったぜ? ついに諦めやがったか! ガハハッ!」

「…………」

 

 ――魔法陣展開 生成 棘……


「ふっ、そんな剣一本で? 俺様に? ……まぁいい。このガレン様に立ち向かう勇気だけは褒めてやる」


 そのまま、盗賊頭と思われるガレンは俺の目の前までやってきた。


「おい坊主、何か言い残すことはねえのか?」

「……その必要はない」 

「はぁ? もういい。おいおまえら! まずは逃げた馬車を追え! って…… なんだ?」


 しかし、後ろには、誰も生きている者などいない。既に皆、死んでいた。

 今、俺の周り、そして盗賊たちの死体あたりに、たくさんの魔法陣が青白く光を放っている。

 そこから棘が出て、彼らを貫いたのだ。


「なっ、ぁ、ぇ……?」

 あり得ないような光景を見て、ガレンは自然と後ろに下がってしまう。


「少々古風な戦い方でな、これを見るのは初めてか?」

「ま、魔法陣だと…… それも無詠唱…… そんな廃れた、やり方で…… これほどの使い手が…… まさ、か…… ガッ」


 ガレンはこれ以上話すことなく、倒れる。

 こいつも棘で一刺しだ。少しは戦えると一瞬期待したんだが、違うかったようだな。

 ……さて、早くメルサのところへ戻るとしよう。


「お~い! シュベルト、大丈夫だった?」

「……あぁ、問題ない」


「はぁ、良かったわ。こっちがヒヤヒヤするじゃない……」

「…………」


 ――俺はわけあって、今は幼なじみの旅商人の護衛をしている。

 数日前には、全く考えもしなかったことだ……




 ~さかのぼること数日前、王座の間にて~



 

「近衛騎士シュベルト、貴様を王女護衛から解任することにした」

「……は?」


 国王アルデリウスは、そう冷淡に言った。


「貴様は国家の重要機密を持ち出し、他国に漏らしたことは分かっている」

「恐れながら国王よ。 その様なことは……」


「黙れっ! 王に対する反逆者め! 平民ごときがやすやすと話しかけるな!」

「クッ……」


 国家反逆? 機密情報? そんなもの知るわけがない。

 こんなのでっち上げに決まっている…………!


「……以上の罪状によって、貴様を極刑に処す」

「ちょっと待ってください、おじ様! シュベルトはそのようなことをしておりません!」

「ローザ様……」


 俺は王女、ローザ様の護衛をしている。

 別に誇るつもりはないが、何百、何千との暗殺者から彼女を守ってきたのだ。


「王女よ、あなた様もその反逆者にたぶらかされているのです。何と恐ろしい……」


 イグナスも一緒になってこっちを攻めてくる。

 汚い物を見るような目。こいつ……


「おじ様も、彼の実力は知っているでしょう! 彼は国防の要ですよ!」

「……別に大したことは無いだろう。我から見ても、やつは無能だと考えるが」

「そんなわけがないでしょう!」

 

「いいや! 気をお確かに、王女様! 実際、こやつが何もしていないのを目にしているでしょう!」

「それは彼が魔術師で……」

「魔術師? ありもしないことを抜かしている詐欺師だ!」


 まるで駄目だ。奴らは聞く耳を持たない。

 俺は腰に手をあて、剣を抜く一歩手前までに迫る。……いや、まだ抜く時じゃない。冷静にだ。


「もう決まったことだ。異論は認めない」

「そ、んな……」

 ローザはうつむき、絶望の表情を浮かべた。

 あまりにも、おかしい! 何だ、何の目的でこんなことを……


「…………」

「そういえば、王よ。後任はどうされますか?」

「……何も決めておらぬ」

  

「では、王女護衛の後任は我が息子、ゲオルグでどうでしょうか? 彼は王都の士官学校を卒業しており……」

「ふむ…… 考えておこう」


 宰相イグナスはそれを聞き、ニヤリと笑った。

 それに比べて、ローザは苦い表情を浮かべるだけだ。


 ――こいつ、自分の息子と王女を近づけさせるためだけに、俺を……!


 なんだか馬鹿らしくなってきた。今までなぜここを守ってきたのだろうか。

 ああ、もういい。好きにやってやる……!


「……イグナス殿。本当は自分のご子息とローザ様をくっつけたいだけでは?」

「しゅ、シュベルト…… それをここで言うのは……」


「なっ…… ぶ、無礼者っっ! 今、私を侮辱したなっ! ゆ、許さんぞっ!」

「よし、やつを地下牢に連れていけ。もう邪魔だ」

「…………っ! クソッ!」


「!? ま、待ってください! シュベルト! シュベルトっ!」


 ローザは涙ながらに俺に手を伸ばしてくる。

 ……いや、取ったら駄目だ。彼女もここに居た方が幸せだろう。

 まだ王城にはローザ派の人たち……メイド長など、彼女を守ってくれる人がいる。

 対して俺は一人だけだ。すまない……


 俺は彼女の手を……取ることはなかった。

 

「シュベルトぉ……! ねえっっ!!! おいてかないでっっ!!」

「やつが逃げたぞ! 追え! 追えぇぇぇっ!!」


 そのまま、俺は一目散に王城から飛び出すことになったのだ……



 ~~



「チッ、しつこいな……」


 俺は真っすぐに下町へと向かい、裏路地でまこうと考えた。あそこなら人は少ない。

 しかし、追手はどうも諦めてくれない。まだ俺のことを探しているようだ。


「あっ、いたぞ! こっちだ!」

「クッ…… こっちか」


「発見! 発見っっ!!」

「こっちも駄目か!!」


 


 ――まずいな。段々俺を囲うように布陣していっている。

 そうなったら戦いは避けられない、できれば殺し合いにはなりたくないのだが……

 

 仕方ない、ここは屋根を伝って逃げるしか……!

 ……ここはどうか? いや、駄目か…… じゃあ、あっちは……


「……え? な、ちょちょっと! 前! 前!」

「……あ? なっ!」


 ――!? しまった! 気を取られすぎていた。

 目の前に少女が! ぶつかるっ!


「ふぎゃっ!」

「……っっ、っておい。大丈夫か?」


「ぅ…… 前くらい見てよ!」

「す、すまない……」


 俺の前には尻もちをついたアクアブルーの髪の少女がいる。

 ん? どこかで見たことのあるような……


 じー………………


 ってそんなことをやっている暇なんてない! 早く逃げないと!


 ――魔法陣展開 付与 跳躍

 そう心の中で唱える。


「と、とにかく今は時間がないんだ! それじゃ!」

「あっ、待って! ……と、飛んだ?」


「また後で会えたら会おう!」

「……………………あっ!」


 彼女の前にあるのは粉々になった陶器たちである。

「わ、私の商品がぁ! …………あいつ、絶対に見つけ出して弁償さしてやるんだから!」


 彼女の拳には、力がこもるのであった……



 ~~

 

 

「おい! まだ見つからんのか!」

「す、すみません! どうも、われわれの包囲陣から抜けられたようです……」

「クソッ、どこから逃げた……?」


 屋根を飛び移りながら、兵士たちの話し声が聞こえてくる。

 よし、とりあえずはまけたようだ。


 逃げ続けてはや2時間、相手も諦めかけている。


「まあ、せいぜい逃げ回ってろ。どうせここから出ることはできん……」


 ――まあ、確かにそうだな。

 ここ、ラーペン王国王都、ハライルは四方を高い外壁で囲われている。

 突破できるだろうが…… できれば戦いたくない。


 …………本当に大丈夫か? どうしたものか。


「おい、そろそろ手配書を出すんだ。こうなったら仕方ない」

「はっ! 直ちに!」

 

 ――それだ!

 まだ手配書が回っていないうちに、とりあえず冒険者ギルドへ行ってみよう。

 もしかしたら、協力してくれる人がいるかもしれない。


 そうして、俺は街の中心部へと向かうのだった。

初日は12話投稿しようと思ってます。

続きも読んでくれると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ