ライバル2
「湯月先輩、あのー朝の話の続きなんですが、
1つ言い忘れたことがあったんですが
またでいいですか?」
みんなから一目置かれてる物静かな湯月先輩
「何を忘れた?」
耳を寄せないと聞こえないようなぼそぼそ口調
これで、人気営業マンというんだから、世の中変わってる
「えーと、僕が告白して、選択肢与えられた時
近くに立ってた人が笑ったんです
その人が、電車を降り際に僕に言ったんですよ」
こちらをじっとみる先輩は、続きをと目で促す
ほんと、いちいちかっこいい人だよな
いいなぁ、いつか僕もこんな風になりたいなぁ
「えーと、ま、彼女に惚れたのは、お前一人じゃないっつーことさ、だったかな」
先輩が笑った、声は出さなかったけど、
面白いなそれ、見たいな顔で笑ったよ
この人笑うことあるんだ
「ライバル登場だな」
「そうなんですよ、それも、彼女が言った言葉にすぐ反応して
なんか、二人で楽しそうで・・・」
だんだん声が小さくなって、俯く僕に
先輩は、ぽんぽんと頭を撫でてくれた
「ありがとうございます」
失敗した時、先輩も何気なく気遣ってくれる
この前、他の会社の人に迷惑かけた時も、今みたいに気遣ってくれた
子ども扱いだけどね・・・
「でも、負けませんよ、頑張ります」
大きくうなずいて先輩を見返す
頑張れと、口だけ動いた
「それが、言い忘れたことか?」
湯月先輩は、確認をちゃんとしてくれる
「はい、そうです
これって、みんなにいう方がいいでしょうか?」
言わないと後が怖い・・・
「佐伯、今日外出予定だったな」
ちらり、とホワイトボードを見ながら湯月先輩は言った
「はい、そうなんです、昼に戻れると機会はあるんですが・・・」
「行き先は?」
「鹿島コーポレーションの冴島さまです」
オールバックにした手堅い印象の役員のおじさんと今日は11時から会う予定になってる
「それは、帰れそうにないな」
確信をもって言う
「解った、他のやつにはオレから適当に伝えておく
とりあえず、お前は準備しとけ」
ほら、いけとばかりに肩をもってくるりと体を反転させられた
「はい、有り難うございます」
そのまま直進、自分のデスクに戻って準備しよう
ヘタレは、可愛がられるか、いじられるかどっちかですよね、いや、どっちもですかね