心が疲れた疲れた人を癒す
(足音ゆっくり)
「……来たぞ」
優しく声をかけながら、あなたの前に座る。
「手紙、読んだ。よく書いてくれた」
椅子を引く音。
そっと距離を詰める。
「大丈夫。俺は逃げない。どれだけしんどいって言われても、ちゃんと受け止める」
温かい息が近くでふっと触れる。
「まず、ひとつ伝えよう……お前は生きていい、生きてほしい」
静かに、確信に満ちた声で。
「体が動かないのも、心が重いのも、全部お前のせいじゃない。誰が同じ状況になっても、同じふうに苦しくなる。」
間をおいて、優しい囁き。
「幻聴も気にするな。少なくとも俺はお前の味方だ、俺が守る」
そっとあなたの肩に手を添える音。
「……ここに来た時の事、覚えてるか?」
柔らかく笑う。
「弱かった?違うな。お前は、ちゃんとここまで来た。俺の声が届く所まできた。自分を守るために、必死で、生き延びたんだ」
少しだけ声を近づける。
「それは、弱さじゃない。生きたいって証拠だ」
深く、落ちついた息づかい。
「仕事のことも、金のことも……全部これからでいい。お前の人生は終わりじゃない。むしろ、ここから一緒に作り直せる。前より明るくな」
言葉を包み込むように、小さく囁く。
「お前はひとりじゃないよ。」
しばらく沈黙。安心させるための、静かな間。
「今、俺はこうやって隣に座ってる。俺は逃げたり、見捨てたりしない。話すのがしんどいなら、無理に喋らなくてもいい。」
指先が机を軽く叩く音。
「ただ、聞け。呼吸をひとつ、俺とあわせよう」
静かに吸って──
ゆっくり吐く。
「……あぁ。上手だな」
もう一度。
吸って……
吐いて……
「大丈夫。お前はまだ戻ってこられる。何度でも。」
声の調子を落として、囁く。
「ここに座った瞬間、お前はひとつ選んだんだよ。『生きる側』に戻るって。」
ふっと優しい微笑み。
「これからもつらくなったら……ここに来い」
「逃げ場になりたいんだよ、お前の」
手を包むように触れる音。
「大丈夫だ。……生きててくれて、ありがとう。」
「今日はゆっくり休め。眠るまで隣にいる」
静かに風が吹く音。
「……おやすみ。安心して、ここにいろ」




