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8,中学クラスの異世界転移

(また始まったのか……)


 沼田翔太は騒がしくなった教室を見てげんなりした。

 翔太が通っている中学校、都内の生徒数が多いどこにでもある学校。そんなところにひっそりと通っているはずだった。

 今日の天気は5月らしい陽気に見舞われて、登校しやすかった。それまでは良かった。

 クラスメイトの機嫌がすこぶる悪い、同じ陰キャの玄田は戦々恐々として震えている。無理もない、男女の陽キャたちが言い合っているのだから。


「男子!いい加減越田先生をいじめるのは辞めなって言ってるの!」

「いじめじゃねぇって!ちょっとからかっただけだろ!なぁ越田ちゃん!」

「その態度がいけないって言っているの!!」


 越田ちゃんと言われているうちの担任の先生、そう言われている所以ゆえんはやっぱり年齢だろう。普段年嵩としかさのいった先生ばかりみる学校という環境で唯一20代で、身長もそんなに高くなく、誰にでも人あたりのいい越田先生はみんなの憧れになるわけだ。

 もちろん翔太もその一人。年上っていいよね。

 クラスの男子の陽キャはそんな先生をからかうようにいつも接している。彼らの勇気には恐れ入る、自分は話しかけることすら緊張するというのに積極的になれることが羨ましいとすら思う。

 ただ彼らの行動はどんどんエスカレートしている。それは許せないとは思っていた。最近は先生の体に触るようにちょっかいをかけて喜んでみれば、引っ掛けの問題を仕掛けて恥ずかしいことを言わせている。実にけしからん。もっとやれ。

 おっといけない、ついつい本音が。確かに翔太も本音はそのように思うことがやっていい事とは別だ。想像するくらいが丁度いい。その考えが陰キャなのかもしれないが。

 翔太は基本的中立な考えだ。

 女子も女子で問題がある。先生を擁護していることを言っているが男子とやっていることはさほど変わらないから。同性だから許されると思っているがそんなことはない。ずるい、悔しい。

 先生も先生だ。別に叱っても構わないはずなのに怖いのだろうか、怒ることをしない、だからこそ図に乗ってしまうのだ。ダメなものはダメと言うだけなのに。

 そんなクラスの関係なのだが、これでも男女陽キャお互いのリーダー的存在は互いに付き合っている。つまりこれはただの痴話げんかなのだ。クラスを巻き込まないでくれ。

 先生はいつものようにおどおどしている。宥めるように話しているが奥の席にいる翔太のところまで声は届かない。そんなにビビらなくてもいいのに。


「あんたらのやり方が汚いって言っているの!翔太だってそう思うでしょ!」

「えっ?!」


 女子の陽キャリーダーに話をふられた。大変困る。

 彼女、細上ほそうえは翔太と幼なじみ、どうしてここまで性格が違っているのに幼なじみなのかは自分でも疑問に思うが家が隣なのだから仕方がない。そのため幼少期はよく一緒に遊んでいた。

 だからこそいつも気さくに話しかけてくる。幼少期からどんどん見た目が変化していく彼女、そしてその取り巻きからの視線は大変痛く感じるのだがいつも上手くかわしてした。

 しかし今回はそうもいかない。授業中、逃げる場所がない。

 それに、彼女を敵に回すと厄介なことも十分知っている。怒ったらとんでもない粘着質になることは幼少期かた変わっていない。


「そ、そうだね……」

「ほらぁ!翔太だってそう言ってるのよ!」

「おい!話が違うぜ将太!お前は賛成していただろ!」


 まぁ、そうなっちゃいますよね、将太は心の中で乾いた笑みを浮かべる。

 今度自分に話しかけてきた少年は鳥下とりした、男子の陽キャリーダーで細上の彼氏。

 どこまでもやんちゃ少年な見た目をしている彼を細上と付き合うように取り合ったのはほかでもない将太。

 細上の魅力に気づき、付き合いたいといった彼の度胸を褒め称えそのようにそそのかした。これで女子からの視線が外れると思ったから。

 それから鳥下とは何回か話すことがある、気軽に話してくれるこんな陰キャな自分でも。嬉しい限りだ。

 そんな彼からしたら、今の状況をよく思わないだろう。しかし困った、そのように思っているのは翔太も同じだ。

 細下を敵にするわけにもいかない。現に取り巻きから鋭い視線がこちらを刺してくる。防護服を持っていない将太にはダイレクトにダメージが入る。そんな目で見ないでください。

 同様に将太と同性ものたちも同じように刺してくる。当然だ、裏切るような形になってしまっているのだから。こんなに痴話げんかに自分を挟まないでください。死んでしまいます、精神的に。


「それは、その……」


 将太は陰キャらしい愛想笑いを浮かべながら言葉を濁す。

 結局さっき色々考えていたがいざ前に出ると何も話せない。思ったことをただ話せばいいだけなのにそんな蛮勇は出来なかった。


(結局先生と変わらないじゃん)


 先生もきっと今の将太の心情と同じだったのだろう。恐怖が先にくる、特に先生は教師歴が浅い。経験と自身、どちらも身についていない。

 将太も同じだった、そしてクラスメイトも皆同じだ。こんな雰囲気の中、第三者として仲介に入ろうとは思わない。

 親友だと思っていた玄田はこちらと目を合わせようとしない。クラスの陰キャ属は全員下を向いてやり過ごそうとしている。

 でもそれでいいと安堵している自分もいる。巻き込みはごめんだと。


「なに!将太あんたあいつの味方になるつもりなの!どうなるか分かっているの?!」

「それは……!」

「将太はいつだって俺の味方だよ!だよなぁ!」

「それは……」


 それはそれ、これはこれ。言いたい、でも後が怖い。

 こんな自分は異世界に行ったら国も守れないだろう、そう自嘲した時だった。

 教室が揺れ始める、地震か。それにしては随分小刻みに揺れる。

 と考えた瞬間、眩い光が立ち込める。たまらず将太は目を覆う。

 何が起こっているんだ。いや知っている。ラノベで見たことがある。これは異世界に転移する時の光だ。こんな時に何を冷静に分析しているんだ。本当に異世界に行くかも分からないのに。

 でもとりあえず窮地から逃げられることにほっとしている。神様とは本当にいたのか。


 そうして将太のクラスは大規模転移に巻き込まれる。将太は人ではないモンスターに生まれ変わって第二の人生がスタートする。

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