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44,しにがみは転移の任務もこなします

『光先。次は転生じゃなくて転移の依頼になるけど、いい?』

「やることは変わらないよね?」

『そうね、よろしく』

「うん」


 光先はメイからかかってきた電話を切り、現場に向かう。



 木野萌奈美。

 読み方はきのもなみ、9歳の女の子。前髪のピンクのヘヤピンが印象的な可愛らしい子。

 学校の帰り道、これから転移される。つまり行方不明になる、可哀想なことだが異世界からの出来事はいつだって突然やってくる。

 転移や召喚は、その人の魂だけでなく体ごと向こうの世界に行ってしまう。

 転生の場合は体は現世のまま、魂だけ異世界に飛ばす。その体は死体となり葬式などやるべきことをやっていく。

 小規模の転移は体ごと異世界にいくため、行方不明扱いになる。警察が捜索しても中々見つからない、見つけることができないのはすでにその人が異世界に行ってしまったからなのだ。世の中に行方不明者が後を絶たないのはそのことが原因、厄介すぎる異世界。

 と、メイから光先は教わっている。なんとかあくびを嚙み殺しながら要約を覚えた。

 ただ疑問は残る、光先は今仕事をしている。その前に誰か似たようなことを仕事にしている人がいたのか、それだけ尋ねたことがある。ただ「そのうち分かるわよ」とはぐらかされた。

 どういうことか光先は全然わからないがとりあえずそのまま任務をすることにする。

 萌奈美ちゃんは都内にいるいたって普通の家庭で育った女の子だ。

 そんな子がどうして異世界に転移させられるのか、どうやらただ偶然選ばれたから、選ばれてしまったかららしい。


(可哀想……)


 それだけじゃない、なんでも今回の異世界は少し特殊なようで、転移魔法なるものを使わせた魔王が無類の幼女が好きらしい、それだけで身の毛がよだつ。

 転移魔法は大規模なものでパラレルワールドなるものからも複数転移させるようで、10歳に満たない女の子たちがその世界にいき、魔王はハーレムを形成しようという魂胆らしい。普通に吐き気がする。

 パラレルワールド、こことは違う世界。どうなっているのかメイに質問したら、


「似た世界は光先が同じようによろしくやっているわ、遠くなっても誰かが同じようにあなたの仕事をしているか違う仕組みになっている。それこそ異世界のようにね。ややこしくなるから、あんまり考えない方がいいわよ」


 光先はメイが言っていることを全く理解出来なかったので、言う通りやめようと思った。つまりこの世界以外の世界は異世界、そういうことにしておこう。

 話を戻すと萌奈美ちゃんはロリコン魔王の世界に飛ばされてしまう、そしてその目的は語るまでもないだろう。そんな邪悪な世界に何も知らない小学3年生が突然転移する。

 ただ唯一救いはあるようだ。他の転移者は魔王が魔界付近に転移してしまうらしいが、萌奈美ちゃんはその反対の存在、勇者の目の前に転移するらしい。

 そこで保護され、あれやこれやと過ごしていくようだ。願わくばその勇者、16歳らしいが年下好きでないことを、もしそうだとしても純愛になることを思わずにはいられない、ただでさえ変な異世界なのだから。



 学校の帰り道、いつもの通学路、いつもの風景。

 通行人も特に不審者はいないようだ。

 もし怪しい人が近づいたらランドセルについている防犯ブザーを遠慮なく鳴らせとお母さんから毎回のように言われる。

 確かに大人たちは自分よりも背が大きいし、ガタイもいい。だけどわざわざこっちに近づいてくるような人はいないし、クラスメイトがそんなことを言っていた試しもない。

 同じ女性くらいだろうか、この前ハンカチを落としてしまったが通りかがったスーツをきた女性が声をかけて渡してくれた。その女性は柔和に話しかけてくれて助かった。警戒するまでもないだろう。

 女性、女の子は良い。同性だからこそ気軽に話すことができ、当然話が良く弾む。中には自分にはよくわからない世界で話すクラスメイトもいるけどそれも一種の憧れに変わる。

 一緒に話し、一緒にお弁当を食べ、そして休み時間にまた話す。たまに男子がこちらを見てくるがどうでも良かった。

 男はよくわからない、クラスメイトの男子は下品だ。下ネタをひとたび誰かが言えばこぞってゲラゲラと笑っているような連中だ。全員がそうではない、優しい男なるものがいるのかもしれないが会ったことがない。そもそも自分から男に話しかけることもないが。

 母親に言われた通り、男子には警戒を怠らない。あいつらは常に下品なことを考えている危険な生物なのだ。クラスメイトの女子の中には男子に進んで話しかける人もいるが、凄いと思う。どうしてそんな危険生物に自ら進んで立ち向かっていけるのか、不思議でしょうがない。

 自分にお父さんなるものはいない。いなくて構わない。お母さんが言っていた、男って近づくと臭いのよ、だから別れたと、常にだらしなくてものは散らかすし汚いと、明け透けでこちらのことをまるで考えないわがままなのだと、だからあなたさえいればそれでいいと。

 そこまでいわれる男ってなんだろうって思うこともある。

 そもそもどうして女の子と男があるのだろうと不意に考えることがある。

 まだまだ小さい自分では理解できないと、お母さんに聞いた時言われた。きっと何かしらの仕組みがあるのだろう、そしてそれは大人になれば理解できるようになるのだろう。

 早く大人になってお母さんのようになりたいと思っている。

 なんでも出来て、自分の世話もしてくれる大好きなお母さん。なにより美人だ。

 そのためにはたくさん色々なことを勉強して、頭を良くして、お肌にも気を遣ってあげなければ。

 自分でもいうのも変だが可愛い女の子だと思う。だってお母さんの子供なんだから。

 だから自分の身を大事にしなければならない。この通学路はその戦いだ。変な男から、男の子からちょっかいかけられないようにそそくさと帰る。

 誰か一緒に帰る女の子がいればいいが、自分の通学路は残念ながらいないので1人だ。

 確か男の子はいた。眼鏡をかけて少し気の弱そうな男の子、でも優しい一面も持っていそうな男の子。

 だけどそれに惑わされてはいけないこともお母さんから言われている、そうして隙をみせて話しかけたり一緒に帰ったりしたら何をされるかわかったもんじゃない。

 今日も大人たちのように早歩きで家を目指す。

 小さな公園がある角を曲がろうとした時だった、大きなめまいがした。

 めまいに対向するように自分は何回も瞬きを繰り返す。

 収まってきた、そして目の前を確認すると、そこには気の優しそうなイケメンが立っていた。

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