42,しにがみはやり終え主に報告します
光先は3日ぶりに自宅であるマンションに帰ってきた。
変わりばえのしない自室、だから安堵を感じる。
(今日はお風呂にしよう、ゆっくりしたい)
それから着替えて準備し、何十分かお湯に浸かり、晩御飯を食べる。
そしてメイの元にいく。
応接間に光先が入れば真っ先にメイにハグされた。
「うぅ、くるし……」
「お帰り!無事に帰ってきてよかったぁ!」
「無事に帰らないってどういう状況?」
「うーん、グレてここに来ないとか?」
「そんなことしないよ」
「そうだね!」
「くるしって」
メイは光先が戻ってくることが相当嬉しいようでめいいっぱいのハグをしてきている。
恵体のメイにそのようにされると意識せざるをえない、光先はだんだん不機嫌に変わりかける。けっ、羨ましいこったい。
メイの仕事場に移動し、
「どうだった?」
「追跡してよかったよ。真守太さんについて色々知れたから。最後は残念だけど……」
転生する、ということは一度死ぬということを経験しなければならない。最後が残念になってしまうのはしょうがないとは分かっているがいざ目のあたりにすると悲しい。
「そうね、いくら恨みつらみを持ったからって、それを行動に移すことは違うわ。どうせなら違うことの原動力にすれば良かったのに」
「あのあと少し見てから帰ったけど、男の人はどうなったの?」
「すぐに逮捕されるわ」
「そっか、そうだよね」
「確かに真守太さんも良くないところはあった、でもそれを注意する親が見てくれなかった、これがなにより可哀想よね」
「そうだね、その親はどうなるの?」
「葬式を済ませ、離婚するわ。真守太さんにこれといった未練がないから……」
「そっか……」
真守太は親と一緒に何かしたかった。それがお出かけでもいい、ご飯を一緒に食べることでもいい、でもそれをしてもらえなかった。愛はお金で買えないから。
もっと寄り添った親なら、大人たちが真守太の近くにいたのなら変わった未来もあっただろう。それをやり直すために転生するのだ。
「転生後はどうなるの?」
「詳しくまでは流石にわからないけど、愛してくれる親の元で生まれ、それから銃が中心の世界で巡っていくみたいね」
「それは良かったね」
「そうね、自分を愛してくれるだけで幸せよ。行き過ぎは良くないけどね」
「メイはどうだったの?素敵なお母さんだったの?」
「私は独身よ」
「は……?御冗談を」
「本当よ。生涯独身よ」
「……」
てっきり誰かがメイのナイスバディに惹かれ結婚していて、羨ましくなんかないんだからね!って言おうとしたが思わぬ反撃で面食らう光先。
「結構、しなかったの?」
「そうよ、子供は好きだったからそれに携わる仕事をしていたけどね」
「そうなんだ、初耳」
「初めて言ったし、あなたは記憶がないから初耳なのは当たり前でしょ」
メイがなに当たり前のこと言っているのよ的な表情しているが、光先は無視して、
「やっぱり子供には親の愛は必要?」
「それはそうよ。ひとりで生きられる子供なんていないからね。あなただって私が監視していないと何するかわかったもんじゃないわ」
「チャントヤッテルヨ」
「まだあのダボダボジャージ着ているんじゃありませんでしょうね?しっかり家でも身のこなししないといけないのよ」
「チャントヤッテルヨ」
「怪しいなー!」
そう言って再び抱きついて今度はこちょがしを始めてくるメイ。
「や、やめ……」
「ほら白状しろー!」
もちろんすぐにイザナミさんにすぐに見つかり、
「メイ!まーたやって!」
「ち、違いますよ!だらしない光先をしかって……」
「こちょこちょしながら叱る神がいますか!?」
「いません……」
「まったくもう……」
ありがとうママ~、助かったよー。あのメイって神自分の豊満な体押しつけて憎たらしかったのー。
光先はイザナミさんのお膝元に座り、頭を撫でてもらう。イザナミさんの周りには今日も元気そうに精霊たちがいる。
「光先ちゃん、無事に終えてきたようね」
「はい、有意義な時間でした」
「それに比べてメイちゃんは……」
「ああ!言わないでください!」
イザナミさんの口を閉ざすためだが知らないがメイが抱きついてきた。当然光先もそこにいるのでおしくらまんじゅう状態、恵体2紳に挟まれる形、イザナミさんは許せるがメイはまたこうして隙あらば自分の体を押し付けてくる、痴態か。
それより、
「うちの神さんが何かしたんですか?」
「なんで旦那みたいな言い方してんのよ!何もしてません!」
「ふふ、メイちゃんがそう言うなら、そういうことにしておきましょう」
どうやら光先が追跡任務を行っていた裏でメイは何かしていようだ。
だが実際光先のメールにはすぐ反応してくれていたし、つきっきりでサポートしてくれていたことは事実だ。
「メイ、今回はありがとう」
「なによ改まって礼なんて」
「メイが何かやらかしたわからないけど、しっかりやってくれていたことは変わりないから」
「だからどうしてやらかした前提なのよ、何もしてません!」
「こーらメイちゃん、光先ちゃんの好意を素直に受け取りなさい」
「はい……どういたしまして」
イザナミさんが来てからいつもに増してメイが幼く思えた。どうしてか追求するのは可哀想なのでするつもりはないのだが、この方が話しやすい光先は思ったのでそのままでいい。
(自分はメイやイザナミさんに愛されている)
帰ってきてからもそれが分かる、とっても素敵な環境だ。