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39,しにがみの最初の追跡2日目、メイに質問しまくります

 真守太はあの後配信を再開するわけでもなく、ふて寝してしまった。

 同時に光先のやることもなくなってしまったので、ここぞといわんばかりにメイに質問をぶつける。


『どうして学校に行かなくなったのか、詳しく教えて欲しいです』

『真守太さんは小学校の頃に名前をからかわれるようになり、そこからいじめに発展し学校が怖くなってしまいました。親に相談するも、だったら学校に行かなくていいとただそれだけを言い不登校になりました。中学の入学式に一度だけ登校しましたが、周りの目が怖く感じ結局今も不登校のままです』

『いじめられていたとき、真守太さんは先生に相談したみたいだけど応えてあげたのですか?』

『いいえ。その時の先生の対応が良くなかったというのはありますが、当時の真守太さんの担任はとにかく面倒ごとを嫌っており相談した際も、なんとかなるからと流してしました』

『やっぱり親身になって聞いていなかったんだ。親もなんだよね?』

『親も同様です。夫婦仲がそこまでよくなく仕事に付きっきりなため真守太さんの面倒を両者ともあまり見たがりませんでした。だから学校に行くならいく、行かないなら行かなくていいとただそれだけ言ったのです』

『どうして親は夫婦の仲が良くなくて放任主義なんですか?』

『最初は仲が良かったです。ただ真守太さんが生まれた直後、生後間もない時期の育児は大変ですが、その時に喧嘩し疲弊しました。それから育児に対しての執着がお互いに一気に冷めてしまったようです』

『自分はまだそこらへんよくわからないけど、真守太さんにとって仕方がないことだよね?』

『そうですね。赤ちゃんの時は誰だって、特に初めての育児は苦労するものです。それで喧嘩になることもあるかと思いますがそれを理由にないがしろにするのは親として失格ですね』


(今日のメイはいつにも増して言い方が強い)


 それだけメイも思うところがあるのかもしれない。


『話は変わります。なぜ真守太さんは配信というのをやっているのですか?』

『不登校になってから家で有り余った時間を色々なことに費やしましたが、どれもピンとこなかったようです。中学生になったころ、ある日動画を観ているとカッコよく魅せるようにゲームをしている憧れの配信者さんに出会います。そこから自分も真似するようになっていきました』

『配信機材はどうやって調達したのですか?』

『放任主義の親とはいえ、真守太さんが欲しいと言えば買ってもらえたようです。本人としては一緒にゲームをやりたかったみたいですが』


(やっぱり寂しいんだよね……)

 友達もいない、親は見てくれない、理解してくれる人は画面の向こう。本当の真守太は直接誰かと話しながら自分の気持ちを、寂しさを分かって欲しかった、ただそれだけだった。

 光先は寂しいとはどういう感情なのかは分からない、表現は分かる。だから実際に真守太がどれぐらい寂しいのかはわからない。真守太の生活環境、欲しいものがほぼ何でも手に入る、環境はいいがそれでも求めるものが違うとは理解できている。

 人の本心はいつだって深淵にあって理解されないんだ。


『真守太さんは将来はどのように考えているのですか?』

『ちゃんとした設計はありませんが、配信で稼げるぐらいに規模が大きくなるくらい発展したため、そのままより稼げるところまで努力し将来的にはそれで自立出来たらと漠然と思っているようです』

『配信って稼げるの?』

『しっかりしたことは秘密ですが、チャンネルの規模が大きい人は衣食住が充実できるくらいには給料が出るみたいです。イメージは芸能人と同じ感じです』

『まず芸能人がどれぐらい稼いでいるのか知らないです』

『有名な人はたくさん稼いで、新人やまだまだ努力しないといけない人はそれだけの仕事で食べていくことに精一杯という感じです』

『なるほど』

『質問は以上ですか?』

『やっぱり会話したい』

『ダメです、追跡中は一人で極力やるって約束ですよ』

『こんだけ文字打つの大変』

『慣れればどうってことありません』

『メイはなんで慣れているの?』

『今その質問は受け付けません』

『ケチ』

『ケチで結構です』


 今日のメイには敵いそうにない、仕方ないのでメールはここまでにしておこう。

 光先は立ち上がり、真守太の部屋の窓に寄りかかりながら長時間メールで固まった体をほぐしていく。

 今は夜中、都会といえどこの時間は静けさがある。

 窓からの景色を眺める。

 真守太が住んでいるところは都内のど真ん中の高層マンション、階層も高く真下を見れば迫力がある。

 真守太のいるベッドを見れば、すぅすぅと寝息をたてている。

 光先は近づく。すると真守太お目元には水滴があることに気づく、泣いていたのだ。


(今日のことだよね……)


 光先は自然と真守太の頭を撫でていた。

 透明天使の光先には感触があるが、向こうには感じない。それが神の力、

 人が不安になっている時、こうするのがいいと本能的に思う。

 メイにいつもされているから、それの反射的な行動かもしれないと光先は苦笑する。


(明日は……)


 真守太が転生する日、どんな最後になるかはまだ光先は知らない。

 転生することが正解なのか光先は分からない。でも今の真守太にとっては心機一転できる機会を得られる。がんじがらめな今の環境を抜け出して、笑顔で暮らして欲しいと、彼のまだ100%の笑顔を見ていない光先はそう思った。

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