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12,しにがみは空を飛ぶ

(無事に楽しく暮らせると良いな)


 光先は薬莢をいつもの癖で噛みながら片付けを始める。

 彼はアクシデントで命を、しかも人災によって奪われた。

 この後バイクの運転手は警察に捕まる。今回は山あいの事件で犯人がその場から逃げてしまうため少し時間がかかる。逃げないでしっかり反省して欲しかった。

 だからせめて光先はお祈りする。これもひとつの光先の癖なのかもしれない。

 今日得た教訓は物を大切にすること。物を愛すること。本当に人は色んな人がいる。


(さて)


 どうやって帰ろうか。こう考えている時点でそのままワープして帰ることが味気ないと思っている。

 光先はローファーの紐をきつく縛る。

 そして空に飛ぶ。

 光先は両足を蹴りだしと共に一気に上空にまで上昇する。


(上がり過ぎた……確か……)


 光先は空中でローファーを両足で叩きタップさせる。その音と共に上昇が止まる。

 ローファーを勢い良く蹴りだすと、蹴りだした方に勢い良く進み、両足でタップするとその場で止まる。実によくできた神様の贈り物だ。

 最初はなれなくて楽しさのあまりついつい暴走し、ビルに何回も激突してしまった。幸い超絶能力がある制服パワーのおかげで無傷、ビルにも損傷はない。神様ありがとう。


(夜景綺麗)


 光先が今目にしている光景は関西の一部だろうか。都市部は灯りが濃く、星の群生のように集まっている。それ以外のところは暗く静かに息を潜めているようだ。

 こうして時間を見つければ神様パワーを使って娯楽をする。光先には十分過ぎるくらいの楽しみだ。

 上を見上げれば曇が近い。手に取ることは不可能だが、本当に取れてしまいそうな距離。星もより一層輝いて見え、気のせいだろうが月も大きく見える。


(さ、帰ろう)


 帰宅するために東方向に蹴りだす。空中でも動作で反応し加速していく。また何回も蹴ることによってどんどんスピードが増していく。


(鳥ってこんな感じなんだ)


 長距離飛行は今回が初めて。周りを気にする必要はないのだがそれでも建物や鳥、飛行機にはぶつかりたくないので慎重に飛行する。

 光先は右に左に軽く揺らしながら、時折バレルロールする。今度はまるで戦闘機になった気分。

 楽しい。もっと欲を言えば景色を楽しみたいが夜なのでくっきり見えないところだ。カクヅチさんにお願いして夜目が効く眼鏡でも作ってもらおうかな。

 新幹線よりも速い、リニアよりも鋭い速度で光先は一気に東京に戻っていく。

 夜のいい所はあった。鳥やヘリコプターがいないこと、今光先飛んでいる高度ではそのものたちに接触してもおかしくないライン。しかし、夜だから休んでいる、自由に飛ぶことができる。それが何より楽しい。

 本当に寄り道したいがメイに報告が遅くなってもいけないのでほどほどに帰ることにした。



(疲れた)


 光先は玄関の鍵を開け入る。行きはベランダから出たが帰りはちゃんと玄関から入る。それがルーティンだった。その方が戻ってきた感じがするからという理由だけ。

 いつものように制服を立て掛け、ストッキングは洗濯カゴに入れる。


(そろそろ洗濯しなきゃ、めんどい)


 とりあえずまだカゴには入るし、予備はまだある。明日やろう。

 下着もボンボンと脱ぎ、シャワーを浴びる。


(メイに勝てるところあるかな)


 光先は自分の体のラインをなぞりながらふと考える。あのダイナマイトボディとまではいかないしても女性が欲しいところを全部持っているメイにどこか勝っている部位はあるだろうか。

 洗いながら探すことにする。

 光先は身体のラインが細め、身長は平均身長だがその軽さゆえに少し小さく幼く見える。フットワークが軽いことはいいのだがもうお肉があってもいい気がすると本人は考えている。たくさん食べれば成長するだろか。だがしかし光先は天使なので体つきは変わらない。

 光先はため息をこぼしながらシャワーを終えた。

 タオルで体と髪を拭き、いつものようにだぼだぼジャージを着て冷蔵庫を覗く。


(今日は何にしよ……)


 今日は昼、夜とかなり活動した。食欲がこの体から発することはないのだがそれでも何か食べたいと思うのは人間らしくありたいと思っているからだろうか。

 光先は冷凍のお好み焼きを手に取る。今日はガッツリ食べたい気分だ。

 レンジに入れ、その間にオレンジジュースと箸とフォークを取る。

 そうだ、待っている間に洗濯機を動かそう。洗濯カゴを持ってガーっと一気に洗濯機に放り込み、丸いジェルの洗濯剤を入れる。最初から分量が決まっている便利物、人間の英知の塊だ。最後にピッと洗濯機の電源を入れ、こっちは任務完了だ。

 ちょうどレンジから音が鳴る。開けると湯気が立ち込め、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。


「あちち……」


 お好み焼きは温めたばっかなためまだ容器も熱かった。急いでテーブルに持っていく。


「いただきます」


 一口サイズにお好み焼きをカットし、ふーふーをしてから口に頬張る。


(美味しい)


 どうやったらこんなに美味に料理を作ることができのだろう。自分では自信がない。記憶を失っているので経験がなく、そもそも形すらちゃんと作れるかも怪しい。

 せめて料理の先生でもいたらいいなーと思いながら、はふはふとお好み焼きを食べた。

 その後洗濯した衣類をしっかり乾かすために干して、今日の日課が終わる。といってもあとひとつ残っているのだが。

 光先はVRゴーグルをつけ、ベッドで横になる。


(スイッチオン)


 神世界へログインだ。

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