恋の食あたり
他愛のない恋バナです(#^.^#)
イラストです。
ヒロインの反田 萌 さん
「でね、大岡さん、子宮筋腫だったらしいの、悪性では無かったって本人はホッとしていたらしいんだけど……」
「それは、まあ……良かったわね」
「良くないわよ!」
「えっ?! 何で??」
「あのね! 自分のカラダの事、特に婦人科系の事は……洩らしちゃいけないのよ! こうして噂になっちゃうでしょ?! 自分で言っててなんだけれど……こういった“噂”が“いいご縁”の足を掬うって事が起きたりするの!」
なるほど、真衣さんの言う事には一理ある!
淀みなくテンキーを打ち続けながら周りの会話に聞き耳を立てている私は思いを巡らしてしまう。
昨日、学生時代からのカレシに振られた。
もう“半同棲状態”でカレシの私物が部屋に溢れかえっているにも関わらずだ!!
私は全くの“寝耳に水で”……カレシは別のオンナに乗り換えた。
部屋を引き払うカレシと顔を合わせたくないから、私は自分の部屋にすら帰る事ができず……今日から幾日かホテル住まいだ。
予約したホテルのクリーニングサービスは下着や小物は不可らしいから……今日はともかく週中にはコインランドリーへ行かねばならない。 会社の近くは危険だし、途中下車する羽目になるかも……
この様な煩わしい物事や、何より『いったい私のどこがいけなかったの?!!』と言うカレへの未練が頭を侵食し始めると、途端に涙腺がバカになってしまう……
せっかく頭をフル回転させて“余計な事”は考えない様にしていたのに……
結局、また席を立って“お花摘み”に走る私は、間違いなく“ゲーリー疑惑”を掛けられるだろう。
それでもまだ、『噂』の主役になるよりはマシと言うものだ。
昨日までの“持てる”自分では無くなってしまって……いずれは“情報戦の真っただ中の”椅子取りゲームに参戦せねばならないのだから。
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学生時代にバイトをしていた漫画喫茶は駅前にあって、私には付近の土地勘があった。
確か近くにコインランドリーがあった筈と、その途中駅で電車を降り、昔のバイト先を横目に商店街から住宅地へ抜けると、目的のコインランドリーはまだあった。
丁度誰も居なかったのでそそくさと洗濯機に投入してスマホをいじっていると
「反田センパイ?」
と、名前を呼ばれた。
ギョッ!として思わず振り返ると、“イケメン”が大きなランドリーバックを抱えて立っている。
勿論、見覚えのある顔で……漫画喫茶でバイトの後輩だった寶月くんだ。
「どうしたんですか? こんな所で!」
「寶月くんこそどうしたのよ! そんなおっきなバッグで」
「オレは毛布洗いに来たんですよ」
「あっ!粗相でもしたの?」
「しませんよ」
「じゃあネコだ!」
「ウチはペット禁止です」
「『ネコ』だって色んな種類があるでしょ?」
「どんな“ネコ”も居ません! って言うか……センパイ、話反らそうとしてるでしょ!」
「……そんなこと……無いよ」
「じゃあ、なんでわざわざこのコインランドリーに来てるんですか?」
「そんな事、どうでもいいじゃない」
「まあ、そうですけどね」と毛布を洗濯機に突っ込みながら寶月くんは重ねて聞いて来る。
「中谷センパイは元気ですか? 一緒に住んでるんですよね」
結局、言及されてしまった……
「別に……一緒に住んでる訳じゃないし……元気なんじゃないかな……多分」
「やっぱりダメになっちゃったんですか?」
「ちょっ!! 『やっぱり』って何よ?!」
「中谷センパイが、オ……“女”にだらしないのは、漫画喫茶の男性スタッフの間じゃ有名でしたから」
「そうなんだ……」
「そうなんですよ」 そう言って寶月くんは私の横に腰を下ろした。
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漫画喫茶と同様に24時間制のその居酒屋は、バイトをやっていた当時、飲み会によく利用した場所で……
バイトが終わった順に参加の“24時間飲み会”なる物をやったくらいだ。
どうやら今でもその風習が残っているらしく……漫画喫茶のバイトTシャツそのまんまの恰好でワイワイやってる連中も居る。
「なんだかタイムスリップしたみたい」
「そうすか、オレはよく来るんで、そう言った感慨はないから」
「バイトの後輩とも会う?」
「それはさすがに……最近は無いかな」
「なんだ! つまんないヤツだな」
「なんすか それ?」
「怒った?」
「別に怒っちゃいませんけど、オレとセンパイって歳、1個しか違わないんですよ! オレもとうに社会人ですし……第一、バイトもセンパイが辞めた後、すぐ辞めたんですよ」
「そうなの?? 楽なバイトだったのに……」
「あんまりノンビリしたバイトは性に合わないんです。」
「何それ!貧乏性?」
「ある意味そうかもしれませんね。親からは『バイトなんかやらないで家業手伝え!』って言われてたから……」
「あれ?! 寶月くんの実家ってお店やってるの?」
「店じゃないですけど……自営みたいなもんです。なので『修行しろ!』と」
「じゃあ何で、漫画喫茶のバイトやってたの? あっ!分かった!! 好きな子が居たんでしょ!」
「はい! センパイは覚えてないでしょうけど……オレ、漫画好きだけど家では読めなかったから……客としてあのお店には良く行ってたんです! その頃からセンパイの事は『可愛い子が居るな』って!」
こやつ傷心な私の心のスキを突いて口説こうとでもしてる??
「アハハハ! イケメンな顔で、そんな冗談言わないの!! うっかり本気にしちゃうから!! それに、今は社会人なんだよね」
「卒業してしまいましたからね。会社勤めです」
「ひょっとして、あの!『“今をときめく”寶月コーポレーション』とか! アハッ! そんなベタな展開ある訳ないよね!」
「ベタですみません。オヤジの会社に就職しました」
私は口に含んだ白だか赤だか、チャンポン飲みの、“どっちだったか?”ワインを吹きそうになった。
「ガチ??!!」
「はい!ガチで! 因みに中谷センパイはオレの事知ってたんで……何気に『クチ利いてくれ』って言って来たんで……オヤジは『少なくとも女性にはだらしない人』と言って置きました。 でも今から考えると入社させて、離島の関連会社に出向してもらった方が良かったかな」
なんてのたまって悪魔的な微笑みでウィンクするこのイケメン後輩は、その吸い込まれそうな瞳でじっと私を見る。
「そろそろ飲み直しません? オレの家で。独り暮らしのガランとした部屋ですけど、お酒は豊富にありますし、アテはオレが作りますよ」
「ダメだよ!私、帰らなきゃ!」
「わざわざ遠くまで来て洗濯した服を抱えてどこに? 毛布ならさっき洗濯したし、着替えは取りあえずさっき洗濯した物を着ていてくれれば、アマのお急ぎ便で揃えますよ!何なら毛布も買いましょうか?粗相した時の為に」
エーッ!!!!
何なの!!!!この『お姫様展開』は???
こやつ!私の飲み物に何か盛ったりしていないだろうな!!!
なんだか、さっきから胸がドキドキとヤバいんだけど……
とにかく!
『お花摘みに行く』でもして、アタマ冷やさなきゃ!!!
ヤバいヤバいヤバい
私、
恋の食あたりだ!!
続く??
それは野暮かな(笑)
野暮だなあと思いながらも
『この後、やっぱりするのかなあ??』
と考えてしまった“しろかえで”です(^^;)
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