死後の世界
「へっきしょん!!……んあ?」
自分のくしゃみで目が覚めた。やや暗い場所だがふわふわな毛並みの上で眠っていたようだ。
自室ではない。ここはどこだ?
「###?」
部屋の隅から布がめくられ、褐色の女性が現れた。何か言っているようだが言葉が分からない。手元にはフルーツ。こちらをニコニコと見ている。
「えっと……?」
女性は何か閃いたような顔をした後でフルーツをそばの棚に置き、こちらへ来る。友好的な人らしいが……
「あの、あなたは……」
ふわふわな毛並みの上に彼女もあがり、私をそっと抱きしめてくれた。突然のスキンシップに混乱しつつなぜか顔を赤くしてしまった。
「##、###ー!」
首の後ろにチクリと痛みを感じた。耳鳴りがして、視界が一瞬暗くなる。敵だったか?騙されたのか?私は殺されたの?
「これでどうかしら?私の言葉がわかる?」
「なななな、なにが……!?」
「ふふ、よほど運の悪い死に方をしたのね。ここの世界とチャンネルが合っていなかったわ」
死に方?世界?チャンネル??なんのことだ、私は死んでなんかいないはず。そもそも充電器を買いに……
「夢か…?」
いつから夢を見ていたんだろうか。充電器を買いに行こうと玄関のドアを開けたら砂漠に出た。そして巨大なポメラニアンに追いかけられて、女性に手招きされて……
そこまで考えてから女性の顔を見る。相変わらずニコニコしている。
「巨大ポメラニアンから助けてくれた人ですか?」
「巨大ポメラニアン?あぁ、チャンネル不良のせいで基礎知識も何もないのね。でも大丈夫よ。拾ったのが私で良かったわね!あなた、名前は?」
「キラリス……じゃなくて山本花です」
うっかり自分のハンドルネームを口に出してしまう。これだから陰キャボッチは。ぶっちゃけ本名を名乗る機会よりハンネを名乗ることの方が多いから、間違えるのも無理はないんだと心の中で言い訳をする。
「キラリス!いい名前ですね!」
「いや、山本……」
「よろしく、キラリス!」
えぇ……まじかぁ。この顔でこの年齢で中学生の時に「キラキラなアリス、略してキラリス!」って付けた名前で、流石に自分でも恥ずかしいとさえ思う名前で固定ですか…?このジメジメキノコの名前がキラキラのアリスですか……?
「キラリス、お腹は空いていない?あとこの世界についてどれくらい分かる?」
先ほど持って入ってきたフルーツをこちらに差し出す。見た目はリンゴのように見えるが、大きさが全然違う。ピンポン球より小さい。こういう品種?なのかな。食べるところもなさそうだが。
「この世界についてもなにも…あむ……そもそもここはどこなんですか?私は充電器を買いに外に出ただけです」
味はリンゴと変わらなかった。丸のままかじると芯があり、ふた口程度で1つを平らげてしまう。
「充電…?なんのことか分かりませんが、あなたはどうして死んだか覚えていないの?」
「だから死んでませんって」
「そんなはずは……だってここは……」
死後の国。そう呼ばれているそうだ。なんでも皆生前の記憶があり、死んだ時の記憶もあり、夢を見るようにここに来たのだという。
「まじで私死んでる……?」




