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第8話 女子会 (やれやれ、少し落ち着いた。)

 一体、どれほどの時間が経過していたのだろう?1時間?1時間半?

 シスターにお礼を言いながら部屋を出て廊下の窓にから見た夕暮れは、しかしさっきまでと、ほとんど同じだった。実は15分程度のものだったのかもしれない。それでも私には、部屋に入る前にこの廊下を歩いたことが、遥か遠い昔の様に思えた。

「さあ、行きましょう。きっと、笹山さんもこちらですよ。」

 シスターもすぐに部屋から出てきて、ドアを丁寧に閉めながら言った。

 廊下を進むと、開けっ放しのドアの奥に少し大きめのテーブルが見えた。テーブルを6名ほどのシスターが囲み、奈緒もちゃっかりその仲間に入っていた。なんの話をしているのだろう?ここからは聞こえなかった。

 テーブルの上には大きめのポットと、色も形も様々なカップと、そしてクッキーらしきものが入った竹籠が見えた。ふと、「女子会」という単語が思い浮かんだ。

「みなさんご紹介します。笹山さんのご友人、宮野さんです。」

 シスターの突然の紹介に、シスターの方々の視線が一斉に私に向いた。

「宮野由香里です。笹山さんと同じクラスです。どうぞよろしくお願いします。」

 突然のことにびっくりしたけど、なんとか挨拶した。

「どうぞどうぞ、こちらへ」

 そう言ってテーブルを囲んでいたシスターの一人がどこからか椅子を二脚調達して来た。私は恐縮しながらテーブルの輪に加わった。別のシスターが戸棚からカップを出して私の前に置き、紅茶を注いでくれた。私は恐る恐る紅茶を口にした。それは普通の紅茶だったけど、あれやこれやで夢見心地だった私を次第に現実に引き戻してくれた。カップというか、マグかな?雰囲気は女子会だけど、素っ気ないテーブルにビニールクロス、オシャレとはちょっと違う茶器。なんだか田舎っぽい。けど、落ち着く場だった。シスター達はお揃いの制服風の修道服。私と奈緒はM高の制服。そんな女子9名が一つのテーブルを囲む姿は、やっぱ立派な「女子会」だった。

 「そういえば、さっきクッキーがあったような?」などと思ったその時、隣のシスターが遠くにあったその竹籠を取って来て「どうぞ」とそのクッキーを薦めてくれた。「超能力?」いや、そんなことはないのだろうけど、なんか修道服ばかりの集団の中にいると、変な妄想をしてしまう。いやいや、ここまで来たら、その「超能力クッキー」とやらを食べてみましょう!とばかり、一つを口しにした。

 美味しい!クッキーといっても、形が整ったものではなくて、見た目はゴツゴツ。食べるとクッキー生地にスライスしたアーモンドや砕いたナッツ、あとこれはシリアルかな?とにかく色々な物が入っていて、とても鮮やかな甘さ、香ばしさ。とても美味しかった。

 クッキーで一気に高揚したところで、もうひと口、紅茶を飲んだ。楽しい。

 ふと奈緒の方を見ると、奈緒も私を見て肩をすぼめながらピースサインをしてみせた。お前は小学生か?でも確かに良い時間だった。

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