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5話 初めてのモンスター討伐 

「「「うぉおおお!」」」


 突然空に放り出されて、僕らは三者三様に悲鳴をあげながら、地面に叩きつけられた。


 しりもちを着いたおしりを撫でながら、僕とラルムはサーシャへ猛抗議をする。


「サーシャ! 移動魔法が雑すぎるよ! いきなり空に放り出すなんて、心臓止まるかと思ったじゃないか!」


「本当だせ! 見かけに似合わずガサツなお嬢ちゃんだな!」


 僕とラルムの抗議に、サーシャは両肩のホコリをパンパンと払いながら、こう言葉を返した。


「しょうがないじゃない。こんなに長距離の移動なんてしたことないんだもの。



 そもそも、エルラドから400マイル(約640km)も離れたコンカルノーの付近まで飛ぶことが出来たことに、感謝しなさいよ!

 

 他の部隊の魔法使いは、行けてエルラドの両隣のテンペスタか、アルテノームぐらいよ!」


 そう言って、両腕を組んで、自慢げにふんぞり返るサーシャ。


 そんな子供みたいなサーシャに苦笑しつつ、ここは素直にお礼を言うことにした。


「そこは感謝しております。


 サーシャのお陰で、だいぶショートカット出来たもんね。ありがとう。


 今コンカルノーまで、後どれぐらいのところなんだろう?


 一応遠くに目視で確認できる距離にはあるみたいだけど」 

 

 僕の問いに、サーシャはコンパスと地図を取り出し、位置を計測し始めた。


「うーん、コンカルノーまで、およそ10マイル(約16km)ってとこかしら。


 この調子なら、今日中にはコンカルノーにたどり着けそうね。


 ここからは徒歩になるから、周りには充分気を付けるのよ」


「そうだな……、エルラド周辺とちがって、ここのモンスターは気性が荒いやつが多いぞ。


 セオお前、そんなへっぴり腰で大丈夫なのか?」


 そう言って、サーシャとラルムは二人して僕の方を向いてきた。


 僕は、腰に手をあて、もっもちろん! 大丈夫だよ! さぁ、コンカルノーへレッツゴー! と少し裏返る声でそう言って、歩き始めた。


 少し後ろからは、本当に大丈夫かしらね? と囁くサーシャの声と、


 おい、見てみろ。あいつ足震えてるぞ。と言葉を返すラルムの声が聞こえてくるけど、聞こえないふりを決め込む。


 内心二人の言う通りビビりまくりだったのだが、僕だって男だ。ビビってるなんて認めるわけにはいかなかった。 


大丈夫! 僕だって、魔法学校で魔術の練習をしてきたんだ! 習ったことをしっかり出来れば倒せるはすさ!


 そんなことを自分に言い聞かせながら、一面に広がる草原の向こうにそびえる、魔具の国コンカルノーへ歩みを進めたのだった。


 僕達は今、『シクサイ』と『ファートムソード』を手にいれるため、東南にある魔具の国、コンカルノーを目指している。


それが魔王討伐の一番最初の行程だからだ。


 この大陸ウナウォルタは、5つの主要国とその周辺にある小さな町や村で構成されている。


 主要国は大陸の北のエルラド、西のアルテノーム、西南のドルク、東南のコンカルノー、東のテンペスタ、この5つで成り立っており、


 その位置関係はちょうど北のエルラドを中心に、五芒星を描くように国家が形成されている。


 そして、その五芒星の中心にある、禍々しい雲が覆う、朽ち果てた城が、


 旅の最終目的地の、魔王が封印された『カラミティ城』、俗に言う魔王城と呼ばれる所だ。


 主要国には、それぞれ祈りの塔が設けられており、守り人と呼ばれる人たちが代々、封印魔法を施している。


 そうして、大陸全体に魔法陣を形成することで、何とか強靭な魔王の魔力を大地に押さえつけているのだ。


 けれど、『シクサイ』と『ファートムソード』で弱体化させた魔王は、大地に封印されてる間に、徐々に魔力を取り戻してしまい、やがて封印魔法は破られ、また復活を遂げてしまうのだ。


 そうなれば、守り人の力だけでは、封印魔法を形成しなおすことが困難となるため、


 『シクサイ』を使い、各地の封印魔法を引き直した後に、魔王を倒す必要があるんだけど、


 『シクサイ』も『ファートムソード』も魔王討伐を終えた後は、魔力を使い果たし、鉄くず同然となっているため、


 魔具製作に特化した魔具の国コンカルノーで預かり、ほぼ一世紀をかけて元の状態まで戻しているのだ。


 魔法学校で習う魔王討伐の方法は、まず『シクサイ』と『ファートムソード』が安置されるコンカルノーに向かい、国王より、それぞれのアイテムを譲ってもらう。


 譲ってもらえる討伐隊は勿論、一隊だけ。譲る討伐隊の決め方はその時代の国王に任されている。


 国王が出したミッションをいち早くクリアした討伐隊に授けたり、武道大会を催して、優勝したものに授けたりと、その時代の国王によって本当に様々だ。


 そうして、『シクサイ』と『ファートムソード』を手にいれた討伐隊は、各地の主要国に周り、『シクサイ』にて封印魔法を施すと、



最終決戦としてカラミティ城に乗り込み、魔王を討伐し封印魔法を発動させるのだ。


 その道中で、モンスターの被害で困っていると依頼があれば、モンスター討伐をし、力を付けながら魔王討伐を目指していく。


 とここまでが、僕達が習った魔王討伐の流れである。


 ちなみに、主要5カ国の中で、魔王討伐部隊を持つことが許されているのは、エルラドただ1カ国のみだ。


 『シクサイ』と『ファートムソード』を装備出来るのは、始まりの勇者アイゼンリッヒの血をひくエルラド人だけだからだ。


 討伐の権利を持たない他の主要国は、魔具作りや、知識の保管庫を担ったりと、得意分野を生かし、エルラドから派遣された魔王討伐隊を援助してくれているのだった。



 僕達は、青々と生い茂る草木をかき分け、コンカルノーに向け、慎重に歩みを進めていた。


 遠くからではわからなかったが、いざコンカルノー周辺に近づいてくと、草原の草木は思いの外、背の高い葉が多く、僕達は腰の辺りまで草木に飲み込まれてしまっていた。


 舗装された道もあることはあるのだが、運悪く僕らが降り立った場所が、舗装された道の丁度真裏にあたり、その道まで回り道をするより、草原を突っ切った方が早いと言う結論にいたったのだ。


 歩みを進める度に、葉先が擦れる音がカサカサとなるため、周囲の異変を察知しづらいのと、草木に足を取られて思うように進めないのが地味にしんどい。


 ラルムは、自分の足で歩くのを早々に諦め、僕の頭の上に乗っている。ラルムたけ楽をするのはズルいので、僕の頭の上から、辺りに異変がないか見てもらうことにしている。


 サーシャはと言うと、あーやだ、やだ、こんなに草が生い茂ってるなんで聞いてないわよ……。こんな藪の中を歩くなんて、かぶれるしゃないの……! と小声で文句を言いながらも後についてきていた。


「おい、セオ! 右だ!」

 突然ラルムが鋭い口調でそう僕に声をかけてきた。


 それとほぼ同時に、視界の端で何かがカサカサと凄い勢いで近づいてくるのが見えた。そしてそれは、僕の方へ向かって、真っ直ぐに突っ込んできたのだ!


 僕はとっさに腰から剣を抜き、盾にするように体の横へ滑らせた。直接衝突されるのを避けようとしたのだ。


 目論見通り、剣が盾になり衝突は免れたが、衝撃を全ては支えられずに、足元はズズズと地面を擦り、2~30cm程後退させられた。


「だあぁぁ!」


 僕は雄叫びをあげ、盾にしていた剣を力一杯振り上げ、突進してきた物体を撥ね飛ばした。


 撥ね飛ばされた物体は、くるり一回転すると、綺麗に弧を描き、草むらから少し離れた視界の開けた岩場に着地をした。


 そこで初めて突撃してきた物体の正体が明らかになる。


 相手の姿をその目にとらえたのだろう。

 ラルムが、厄介なのがきたなぁ、おい……!唸るようにそう言うと、瞬時に僕の頭から飛び退けたのだった。


「セオ! ありゃ、でんきネズミだ! 身体中に電気を帯電させてるから、下手に近づくと、感電して動けなくなるぞ! 距離を取って戦え!」


「わっ、わかったよラルム!」


ラルムの言い付け通り、少し後ろに飛び退き、距離を取る僕とサーシャ。


 僕達が後ろに飛び退けたのとほぼ同時に、でんきネズミはバチバチと体の表面に帯電させていた電気を、一気に辺りに放出し始めた。


 ドカーンと雷が落ちたような轟音と共に、周りの草木は焼け焦げ、ジリジリと焦げくさい臭いが立ち込める。


「あっぶなぁ! もう少し遅かったら丸焦げだった……!」


「ちょっと、ラルム! こんな時の為にあんたがいるんでしょう! 相手の弱点とか何かないわけ?」


 絶え間なく放たれる電撃を、紙一重でかわしながら、サーシャはラルムにそう文句を垂れる。

 

 ラルムも、ぴょんぴょんと身軽に電撃をよけ、サーシャの問いにこう言葉を返した。



 「こいつはなぁ、魔法耐性も高い上に、体にまとった電気のせいで、物理攻撃もダメージをうけねぇ!」


「そんな……!」


「打つ手なしじゃないのよ!」


「……けど、唯一水属性の魔法には弱い! お嬢ちゃん! 水属性魔法使えるか?」


 ラルムのその言葉を聞いて、サーシャは不敵な笑みを浮かべると、高らかにこう言い放ったのだった。


「……誰に対して聞いてるの? 任せなさい! 盛大な威力でお見舞いしてやるわ!」


 サーシャはそう言うや否や、空間魔法で杖を取り出し、呪文を詠唱し始めた。


 けれど、呪文を唱えるのに集中し始めたサーシャは、ほんの一瞬でんきネズミから注意がそれてしまったのだ。


「サーシャ! 危ない!」


「きゃあ!」


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