23話 つかの間の休息
ウェイドさんから原料を受け取った僕達は、その足ですぐにベルの元へ向かった。
原料を渡すと、ベルは張り切ったように腕捲りをし、さぁ腕がなるのデス!と楽しげに笑ったのだった。
「確かに原料を受け取りましタ!皆さん討伐お疲れさまでしタ!お貸ししました、聖剣とスピードリングは装備品が出来上がるまでお二人がお持ち下サイ。
あと、サーシャさんにも予備の杖を渡しておきマス。それと、お二人とも、今身に付けている防具もお預かりするので、こちらも予備の防具に付け替えてくだサイ。いつなんどき、討伐依頼がくるかわからないでしょうカラ」
「ありがとう」
「助かるわ」
装備品を魔具師に預けている間は、予備の装備品を貸し出して貰うことになっている。そのため僕らは、ベルに言われたとおり、装備品を付け替えて、ベルに預けたのだった。
「しかし、セオさん達に他にお仲間いたとは、知りませんデシタ!ラルムさん、よろしくお願い致しますなのデス!」
「おうよ、よろしくなベルちゃん」
そう言ったラルムは、自分の胸の位置ほどにあるベルの頭をわしゃわしゃと撫でた。その行動にもう!子供扱いしないで下サイ!とボサボサになった頭を手ぐしで整えながら、ベルは膨れっ面で抗議したのだった。
「そうだ、ワタクシが魔具を鍛えてる間に、よろしければ、コンカルノーを観光してみてはどうでショウ?
コンカルノーは、海に面した地形ですので海産物が名物なのデス!
それと、テト鉱脈では、美しい宝石も良くとれるので、きれいな宝石をちりばめた飾り細工が有名デスヨ!
丁度今は、シクサイとファートムソードのお披露目の儀式にあわせて、セントラル広場で、出店も多く出店してマス!」
「本当に?それは素敵ね!お言葉に甘えて観光してみようかしら!」
「でも、ベルが休む間も惜しんで頑張ってくれてるのに、観光するなんて、何だか少し申し訳ないな」
僕がそう言うと、ベルは一瞬目を見開いた後、ニッコリと笑ってこう言った。
「そんなこと、気になさらないで下サイ!ワタクシは好きでやっておりますノデ!
むしろ、皆さんにコンカルノーの良さを知っていただけたらワタクシも嬉しいデス」
「おらおら、ベルちゃんもそう言ってんだからよ!パーっと息抜きしようぜ!」
こうして、僕達は装備品が出来上がるまでの間、コンカルノーを観光することになったのだった。
「わぁ、ベルがいってたとおり、セントラル広場は出店で活気がすごいわね!ワクワクしちゃう!」
セントラル広場につくなり、サーシャはキラキラと目を輝かせてそう言った。
ラルムも、おー、うまそうな匂いがするぜ!セオとりあえず、串焼きからいくぞ!と、こちらも目を輝かせそう言ってきて。
「ちょっと待ってよ二人とも!慌てなくてもお店は逃げないよ!て言うか、ラルムは人間のご飯食べるの?」
僕の呼び掛けに、ラルムはこう言葉を返す。
「まぁ、食べなくても生きていけるけどよ。嗜好品みたいなもんだ。スライムにとっても、旨いもんは、旨いんだよ。いやぁ、人型に化けられても、金は待ち合わせてない事が多いからな。旨い飯にありつけるチャンスなんて滅多にねぇんだよ」
「ちょっと、お金持ってないなら、今日はどうやって食べるつもりなのさ」
僕の問いに、ラルムはきょとんとした顔でこう答えた。
「何いってんだ、今日の俺には、お前と言う財布がいるじゃねーか!テト鉱脈で雑魚を全部引き受けてやった事は、これでチャラにしてやるからよ!おら、財布…じゃなかった、セオ、いくぞ!よお、おっちゃん!そこの串焼き、とりあえず今焼けてるヤツ、全部くれ」
「へい!ただいま!」
「ちょっとラルム!僕そんなの聞いてないよ!…って全部は多すぎでしょ!おじさん、2本で大丈夫です!」
「何だよ、しけてんなぁ。まぁ、お前ヘッポコ剣士だから金がねぇんだっけか。しゃーねー、二本で我慢してやるよ」
「全く、それが人に奢られる態度なの?それに、一本は僕の分です!」
「ちぇー、ケチくせーなぁ」
そんなやりとりを、ラルムとしてると、サーシャが呆れたように首を横に降りながら、僕らに話しかけてきた。
「あんた達、この美しい工芸品に目もくれず串焼きに直行するなんて、品性の欠片もありゃしないわね。まぁ、いいわ、せっかくだから、少し別行動にしない?私もあんた達も、お互いに興味があるお店が違いそうだもの。」
「うん、僕はそれでいいよ」
「俺も問題ねぇ」
「良かったわ。それじゃ、2時間後に、向こうの高台にある、始まりの勇者と魔法使いの像の下で待ち合わせましょ!」
「「了解」」
こうして、僕達は別々に別れて、コンカルノーを観光することにしたのだった。