22話 ラルムの姿
「いやぁ、助かったさね!荷物も親父もきっちり届けてくれてありがとよ。ったく、親父も若くないんだからよ!無茶ばっかすんなよな」
ウィリー商会のお店につくと、ウェイドさんは、馬車と、その影に隠れるようにして立つ、少し気まずそうなウィリー社長の姿を見て、そう言葉をかけてきた。
そんなウェイドさんの言葉に、ウィリー社長は顔を真っ赤にしてこう言葉を返した。
「なんじゃと!ワシは、まだまだ現役だわい!そもそもお前がもっとしっかりしとったら、ワシも悠々と引退できるんじゃがな!大体お前は……」
「あーあー!小言は後にしてくれ!俺は今、セオ殿達にお礼をしなきゃなんないんだよ。セオ殿、本当にありがとう。ほれ、これ頼まれていた魔具の原料さね。大事に使っておくれよ」
ウェイドさんは、ウィリー社長の小言を華麗にかわすと、カウンターの中から、僕達が頼んでいた魔具の原料を渡してくれた。
それを見たウィリー社長は、仕方あるまいな、後で覚悟せいよとウェイドさんに悪態をついたのだった。
ウェイドさんから無事、原料を受け取った僕はこう言葉を返した。
「こちらこそ、ありがとうございます!」
僕に続けてサーシャも言葉を返す。
「やったわ!これで武器と防具をグレードアップできるわ!」
「ふぅ、やれやれ。とんだ使いっぱしりをさせられたぜ」
ラルムはそう首を左右に降りながら、僕達のあとに言葉を続けた。
そんなラルムをマジマジと見て、ウェイドさんがところで…と話しかけてきた。
「セオ殿、その青い髪の男はどなたですかい?討伐を依頼したときにはいなかったですよね?」
「あぁ、紹介がおくれてすみません。僕達の旅の仲間でラルムと言います。コンカルノーヘ来る途中で意気投合しまして、暫く魔王討伐の手伝いをしてくれることになったんです。討伐の依頼を受けたときは、丁度別行動していて、ご紹介が出来なかったんです」
……ということにしておく。本当は違うけど。
ジェイドさんは僕の言葉を疑うようすもなく、すんなりと受け入れてくれたようだった。
その様子を見て、ウィリー社長は、我が息子ながら、扱いやすいヤツだわい、とそうボソリと口にする。
ジェイドさんはラルムに向かいこう言葉を返した。
「そうだったんですかい。いやぁ、中々凶悪な顔…じゃなくて、強面な顔してるのに、討伐を手伝ってくれるとは……意外と親切なお方なんですねぇ」
「おい、それ誉めてんのか?」
「へい、もちろん」
そんなウェイドさんとラルムの軽口の応酬を見ながら、不満そうにサーシャが僕に呟いた。
「何よ、ラルムのやつ。人間に擬態出来るなら、最初からそうしなさいよね!スケルトンの魔法は地味に魔力消費するんだから!」
「まぁまぁ、あの形態はラルムも大変みたいだから、仕方ないよ」
そう、今のラルムの姿は青色の髪の毛をした180m程ある人間の姿になっていたのだった。
コンカルノーヘ戻る途中に、それじゃあ、またスケルトンをかけるから、コンカルノーの中では静かにしていてよ。とラルムに声をかけると、
えぇーまたかよ!と心底嫌そうな顔をしたラルム。
しょうがねぇなあと言って体の形を変化させて、みるみるうちに人型に変わってしまったのだった。
そうして、これなら文句ねぇだろ?とそう得意気に笑ったのだった。
その姿を見たウィリー社長はいやはや、驚いたわい。と目を大きくしながらこう言葉を続けた。
「人型になれるのなら、ウェイドには秘術の話はせずに、旅の途中で会った仲間とでも紹介したらよい。秘密を知る人間は少ない方がよいじゃろうからな。」
「よろしいんですか?息子さんへ嘘をついてしまっても」
僕の返しに(まぁ、秘術の話自体、嘘な訳だけど)、ウィリー社長は、ホッホッホと笑い声をあげて、よいよい、あいつは悪気なく口を滑らせるタイプじゃからな、知らん方があいつの為じゃて。とそう言葉を返したのだった。
こうしてウィリー社長の助言をうけた僕は、ジェイドさんにはラルムがスライムであることは伏せ、旅の仲間とだけ紹介したのだった。