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21話 皆で帰ろう!

ボスが地上に落ちてしばらくの後、他の火燕カエン達も次々と姿を消していった。


今までけたたましく聞こえていた火燕カエンの鳴き声が急に聞こえなくなり、辺りは静けさに包まれたのだった。


「やった……。やったぞ!!ついに谷間を抜けられる……!!やったぞー!!」

「「おー!」」


ウィリー商会の人たちは目に涙をためて、抱きしめあったり、肩を組み合ったりして、思い思いに喜びを分かち合っていた。


それを見てほっと胸を撫で下ろした僕達。


「何とか、討伐できて良かったわね」


「本当だよ!あのボスが出てきたとかはどうなることかと思ったよ。それもこれも、ラルムが雑魚の攻撃を1人で防御してくれて、ボスに集中させてくれたお陰だよ。ありがとう」


僕がそう言うと、ラルムは照れ臭そうにフンと鼻を鳴らして、

「全く骨が折れたぜ!本当スライム使いの荒いやつらだ」

とそう憎まれ口をたたいたのだった。


「おい、お前ら~!無事か~!応援に駆けつけたぞ~!モンスターはどこだ!ワシがこらしめてやるぞ!お!お前か!ワシの大事な部下を苦しめておったのは!?成敗してくれるわ!」


皆で勝った喜びを分かち合っていると、遠くから馬車の音と共に、そう叫ぶ男の声が聞こえてきた。


音の方へ目を向けると、長い髭を蓄えた、身なりの良い小柄な小太りの初老の男が馬車の荷台の上に乗っているのが見えた。


その後ろには、若い衆が同じように荷台に乗り、心配そうに、男を支えているのが見える。


その男の手には、モンスターに特殊な弾丸を打ち込んで戦闘不能にする撃破砲を持っており、エネルギーをチャージさせた状態でラルムに銃口を向けていたのだった!


「へっ…?おいおい、なにすんだ、じぃさん!そんな物騒なもん、向けんのやめろ!」


「何と!このモンスター喋りおったわい!こんな危ないモンスターは、ますますほって置けんわ!覚悟せい!」


そう言って今にも、撃破砲を発射しそうな男に向かい、サムが慌てて止めにはいった。


「ウィリー社長!おまちくだせい!モンスターは無事討伐されやした!このスライムはモンスターを倒してくださった、魔王討伐隊の皆さんの仲間でさぁ!」


「モンスターが魔王討伐隊の仲間じゃと?そんな訳ないじゃろうが!」


「本当なんですって!そもそも荷車の邪魔をしてたのは、スライムじゃなくて、鳥形のモンスター、火燕カエンのはずでしょう?」


「それは…そうじゃが……。本当に、モンスターは討伐されて、このちっこいのは討伐隊の皆さんの仲間なんじゃな?」


「誰がちっこいのだ!」


「さっきからそう言ってるじゃねぇですか!」


サムの言葉に、冷静さを取り戻した様子の男は、撃破砲をかまえるのを止め、気を取り直すようにコホンと咳払いをした。

そうして、少し気まずそうにこう言葉を続けたのだった。


「魔王討伐隊の方々、申し訳なかった。火燕カエンに仕事の邪魔をされて、頭に血が上っておったもんでな。

冷静さを欠いておったわい。

どうやら、あなた方がワシの部下達を助けてくれたようじゃな。感謝申し上げる。

申し遅れたが、ワシはウィリーと申す。ウィリー商会という魔具原料の卸売業を生業としておる者じゃ。恩人方の名前を聞かせて下さるかな?」


「もちろんです。僕の名前は、セオドア・クロスです。

こちらが、僕とパーティーを組んでくれてる魔法使いのサーシャ・テレジア。

そして、このスライムはサーシャの秘術のお陰で、僕達に協力してくれてるスライムのラルムです。

この秘術のことはくれぐれも内密にお願いします。本来なら、口外禁止の秘術なので」


「そうじゃろうな。モンスターを手下にできることが世に広まると、色々と面倒なことになりそうじゃろうからな。承知した。この事は他言無用としよう。セオ殿、サーシャ殿、そこのちっこいの。改めて心から礼を言おう。

ワシの部下を救ってくれて、ありがとう」


「そんな、めっそうもないです!」 


「これも魔王討伐隊の仕事ですから。皆さんを無事に守れて良かったですわ」


「おい、誰がちっこいのだ!この小太りジジイ!」


ウィリー社長の言葉にそれぞれ思い思いに言葉を返す僕達。

ラルムの失礼な言葉にウィリー社長は額に青筋をたてながら、こう言葉を返した。


「なんじゃと!?全く、口の悪いスライムじゃわい。魔王討伐隊のお仲間じゃなければ撃破砲の錆びにしてやるところだわい」


「へっ!それはお互いに残念だったな!俺もお前の息子が依頼主じゃなけりゃ、けちょんけちょんにしてやったのによ!」


「なんじゃとー!!」


「ちょっと!ラルム!いい加減にしなよ!すみません、ウィリーさん。ラルムが失礼なことばかり言ってしまって。後でよく言って聞かせるので……。僕の顔に免じてどうか怒りを鎮めてもらえないでしょうか?」


「仕方あるまいな。まぁ、ワシらもこんな所で道草を食っとる場合ではないからな!ワシらの物資を待ってる方々がおるのじゃ!皆のもの急いで帰るぞ!」


「「おー!」」


こうして、僕達は、無事にウィリー商会の皆さんをコンカルノーヘ送り届けることが出来たのだった。

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