18話 激戦
渓谷の狭い道を、馬が荷車を引いて駆け抜ける音が響く。
その音に呼応するように、ガァーガァーと火燕の威嚇の鳴き声が辺りに木霊した。
「おぅおぅ、めちゃめちゃ怒ってんなあいつら。セオ、お嬢ちゃん、一瞬も気を抜くな、あいつらから目をそらすんじゃねーぞ」
「わかってるわ」
「もちろんだよ」
そんな掛け合いを僕らが交わして、それぞれ戦闘体制を整えたとき、一匹の火燕のけたたましい鳴き声を合図に、火燕達は一斉にに僕らへ襲いかかってきたのだった!
「おら、お前ら、行くぞ!」
「言われなくてもやるっつーの! 私に指図すんじゃないわよ!」
「こんなときまで喧嘩してる場合じゃないだろ!」
僕達は口々にそう言って、一斉に持ち場につく。
火燕は数にものをいわせ、前衛部隊が束になり空中から電光石火を仕掛けてくる。
その光景を屋根の影から見ていたウィリー商会の人達は体を竦み上がらせ、口々に悲鳴を上げた。
僕は四方八方から飛びかかる火燕を睨み付け、体中に魔力を込める。
そうして、ベルから借りた聖剣をクロスに重ねて構え、前方へ圧縮した空気圧を放ったのだった。
「くらえ! クロス切り!」
僕が放った空気圧は2つの風の刃となり、扇状に広がりながら辺りの火燕を切り裂いていった。
「やった! 上手くいった!」
嬉しくなって、思わずガッツポーズを決める僕。
僕の技を見たサーシャが、驚いた声をあげて言葉を続けた。
「やるじゃないの、セオ! 私も負けてられないわね。いくわよ、スパーク!」
サーシャの言葉と共に今度は空から幾重もの雷が降り注いだ。後方の火燕達が次々と感電し、地上へ落ちていく。
「すごいや! さすが、サーシャ!」
「当たり前よ!」
「無駄口叩いてるひまねぇぞ!」
命中に喜んだのもつかの間、僕たちの攻撃を避け、生き残った火燕達が翼を高速に羽ばたかせ、次々と火炎放射を放ちはじめた!
辺りが真っ赤に染まり、炎の熱が迫り来るのを感じる。
しかし荷車に炎が到達する前に、ラルムが体液を水鉄砲にて飛ばし、上手いこと相殺させたのだった。
「すげぇ、これが魔王討伐隊の戦い…!」
「火燕の野郎ざまぁみやがれ!」
屋根の下に、身を潜めていたウィリー商会の人達は、火燕が討伐されるさまをみて、そう喜びの声をあげた。
そんな彼らにラルムはいたって冷静な声色でこう言葉を続けた。
「まだ安心するのは早そうだぜ? 第二陣がおいでなすったようだ」
僕たちの攻撃で大分数を減らしたかに思えたが、岩肌の巢から続々と新しい火燕達が僕らの前に立ちはだかるのだった。
次々に襲って来る火燕の攻撃を防ぎながら、僕らも反撃を仕掛ける。馬車はスピードをあげながら、谷間に馬の足音を響かせて、懸命に火燕の群れをの中を駆け抜けて行く。
「数が多すぎる! このままじゃ、らちが明かないわ! 谷間を抜ける前にこちらの魔力切れが起こりそうよ!」
「まさか、あんなに群をなしてるとは…! ラルム何か一網打尽にする方法はないのかい!」
僕らの問いに、ラルムは防御と攻撃を続けながら、こう答えた。
「もう少しだけ耐えてくれ! そろそろやつが出てくるはずだ!」
「やつって…?」
「なんのことよ?」
僕とサーシャの問いかけとほぼ同時に、ギャーギャー!と一際大きな鳴き声が、けたたましく谷間に響き渡った。
鳴き声の方向に目線を向けた僕らは、一瞬言葉を失った。そんな僕らを横目にラルムは口のはしをつり上げてこう言葉をつづけたのだった。
「ほら、やつがお出ましだ」
「何よあれ…!」
「うそ…あんなのと戦うのかい!?」
谷間の岩部にあいた、大きな横穴から姿を見せたのは、全長2mはありそうな巨大な火燕だったのだ!通常の火燕の四倍はありそうだ。
その大きな体から耳をつんざくような鳴き声をあげて、巨大な火燕は、僕らを鋭く睨みつけるのだった。




