14話 原料調達
「まず、サーシャさんの装備に必要な原料は、
杖の発動時間を短くするために、魔力伝導率に優れた『アナキティス』と、発動時の威力をあげるために、込められた魔力を増幅して吐き出してくれる鉱石『オリハルコン』、
防具を軽くし、強度を出すために必要な、軽くて丈夫な金属『オンパロス』の3つとなりマス。
次にセオさんの装備に必要な原料は、
聖剣の魔力耐性をあげるために、魔力耐性、伝導率に優れた『ヒヒイロカネ』ヲ。
これは、永久不変の鉱物とも言わレ、非常に安定した鉱石の1つなのデス。
そして、聖剣の物理的強度を出すために、丈夫で加工しやすい鉱石の『黒石』ヲ。
最後に、防具に魔法プロテクトの追加効果をつけるために必要な、受けた衝撃を吸収し、膜をはる性質をもつ不思議な鉱石『リア・ファル』この3つとなりマス!
それぞれ必要な分量は、こちらのメモに書かせて頂いてマスので、ご準備をお願いシマス」
ベルはそう言うと、僕にメモを受け渡してくれた。メモを受け取った僕は大事にしまいながら、僕はベルにこう問いかけた。
「それで、装備を仕上げるのは、どのぐらいの期間があれば、間に合いそうかな?」
「そうデスね、弟子たちを総動員したとして……最低5日は欲しい所デス」
「それじゃ、私たちが原料調達に費やせる日数は、多くて4日って所ね」
そんな僕たちのやり取りを、黙って見守っていたブレディがこう口を挟んだのだった。
「しかし、君たちは原料を調達する当てはあるのかい?」
そうブレディに問いかけられ、あ……と固まる僕達。
ブレディは、仕方ないなと少し呆れたような笑みを浮かべると、私の知り合いの商人を紹介しよう、ついてきたまえ。とそういってくれたのだった。
「ムリだな! 急に言われても用意できねぇよ」
「ウェイドよ、そこをなんとか、用立てもらえないだろうか?」
フレディにつれられ、原料を扱う市場街で一番大きな店を構える、ウィリー商会へと足を運んだ僕達。
パタパタと忙しそうに走り回る商人達へ激を飛ばしながら、ウェイドと呼ばれた店の若主は、カリカリと頭をかきながら、目の前につまれた書類に目を通しつつ、カウンター越しに僕らにこう言葉を返した。
「とはいってもよ、出没し始めたモンスターのせいで、物資をつんだ荷車が途中で立ち往生しちまってんだよ。
お陰で品薄で、お得意先にも品物を卸せなくて、店は見ての通りてんやわんやさ。
親父は主として責任感じちまったのか、自分が物資を運んでやるとか言い出して、荷車を迎えにいっちまったし」
ウェイドのその言葉に、フレディが少し目を見開き、驚いたような声色で返事をした。
「それで、ウィリー殿がいないのか。しかし、大丈夫なのか?
ウィリー殿はモンスター討伐の心得えは持ち合わせてはいないだろう?」
「あぁ、それが親父のヤツ、最近国が作った最新式の対討伐武器の撃破砲を持っていくから平気だって言って、聞かなくてよ。
年も年なんだから、体をいたわって大人しくしてほしいんだがよ……。
しょうがないから、若い衆を護衛につけて、向かわせてるところさね。お陰でこっちは、更に人手不足になっちまってるところさ。
……と言うわけで、残念だが力になれそうにねぇんだ。悪いな」
そういってウェイドは、申し訳なさそうに眉を下げ、僕達の方を向いた。
その時初めての僕達の方をまともに見たウェイドは、ビックリしたように目を開き、興奮した口ぶりで僕たちへこう言葉をかけてきた。
「おい、アンタらひよっとして、エルラドから来た魔王討伐対のやつらかい?」
「ええ、そうだけど。それがどうかしたの?」
ウェイドの問いに、不思議そうにサーシャが返事を返す。
ウェイドは、カウンターから身を乗り出しながら、僕たちへこう言葉を続けたのだった。
「おいおい、それを早く言ってくれよ!
よし、交換条件としようじゃねーか。
アンタらが、立ち往生している俺たちの荷車を、無事店まで送り届けてくれたら、アンタらが欲しがってる原料を用立ててやるよ」
その言葉に僕とサーシャは顔を見合わし、お互いにコクリと頷きあった。そうして、ウェイドへ微笑みながら僕は、こう返事を返したんだ。
「わかりました! 必ずや荷車を送り届けましょう! 任せてください!」
その言葉にウェイドは満足げに頷くと、あ、ついでに道の途中で、親父達も回収してくれと困ったような顔をして笑ったのだった。
こうして、僕たちはウィリー商会の依頼で荷車を護送することになったのだった。