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It's a wonderful world② ~彼女の気持ち~

作者: スミス・ポール

突然降りだした雨が


路面の色を変えていく




私は小走りで彼の待つカフェへと急いだ




カフェのドアを開けると


彼が軽く手を挙げて合図した




私は息を整えながら


彼の向かいの椅子に腰掛けた




店員にコーヒーと


少し迷ってからシフォンケーキを頼んだ




それから少し談笑をした




私は今“ブライダルアドバイザー”なので


その話をした




来週の日曜日に開かれる結婚式で


花嫁が持つブーケがまだ決まっていないと言った




彼は笑って


「いっそのこと君が好きなカラーにしたら?これから秋だし、薄いオレンジ色のを使えば雰囲気でるんじゃない?」


と言った




それを聞いて私は困った


そしてとっさに


「それは駄目。好きな花だからこそ、とっておきたいの」


と答えてしまった




彼は面食らったような表情をしてから考え込むように目線を下げた




それからカップを手に取り


残っていたカプチーノを一気に飲み干した




店員がコーヒーとシフォンケーキをテーブルに置いた


そして水が半分以上残っている彼のコップに水を継ぎ足していった




彼は少し驚いた顔をして店員を見たが、すぐに笑顔に戻って「ありがとう」と言った




店員が立ち去ると、彼は「そんなに水を飲ませたいのかね」と小声で私に言うと、コップを手に取り水を飲んだ




私がコーヒーを少し飲むと


彼は窓の外を見た


彼の目が少しうつろになっているのが分かる






その後、私たちは


取り留めのない話をしていたが


私はこの後の段取りを考えていた


それからカフェを後にした




いつのまにか雨はあがっていた




彼は私が好きな歌を鼻歌で歌いながら


右手を差し出してきた




私はそれに応じて手をつないだまま街を歩いた






しばらく歩くと


彼の手から力が抜けて


倒れそうになったので


私は彼を支えた




それから交差点の角に止めてある車に手を挙げて合図をした




車は私の脇に止まり


中から先ほどのカフェの店員が出てきた


店員は気を失っている彼を抱えて後部座席に投げ込んだ




そして運転席に乗り込み走り去った






走り去る車を見送った後


軽くため息をついてから


私は歩きだした




街から少し離れた所にある花屋は遅い時間にもかかわらず営業していた




店に入ると奥から年配の男が出てきて「いらっしゃい」と言った




そして「今日はカラー?それともバラ?」と聞いてきた




私は黙ったまま


薄いオレンジ色のカラーを指差した




それを見た年配の男は


「成功だね」


と無表情のまま言った




男はカラーを何本か取り紙に包み、何も言わず手渡して奥に引っ込んだ




私も何も言わずに店を出て


足早に家路についた






部屋に戻りカラーを包んでいる紙を開けると


見たことのない男の顔写真とプロフィールが入っていた


新しい任務だった




この男に近づき、親密になって信用させなければならない






わたしはまた




軽くため息をついた

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