相性占い
今は晴子と二人で町中を散歩している。
これからスーパーに向かい、色々と買い物をしていく予定だった。
だが晴子が散歩してから向かおうと提案してきたので、こうしてブラついているわけだ。
たぶんある程度時間を潰して、タイムセールを狙うつもりなんだろう。
そうして散歩していると、晴子がとある建物の前で立ち止まった。
「なぁ春日」
「ん? どうした?」
「まだ時間もあるし、ゲーセン寄って行かないか?」
すぐ近くには前にも来たことのあるゲーセンがあった。
「まぁいいけど……」
「よっし。んじゃ早く入ろうぜ」
「お、おう」
二人でゲーセンの中へと入っていった。
ここらには見慣れた筐体が置いてあるが、いくつか新しい台が追加されたようだ。
それらを人通り眺めて、面白そうな台があれば二人でプレイした。
一通り遊び終え、そろそろゲーセンから出ようかと思った時だった。
「なぁなぁ。最後にアレやっていかないか?」
「アレ?」
「ほら。あの小さいやつ」
晴子が指差したのは、俺がやったことのない筐体だった。
上の看板には『的中率90%越え!!』と表示されていた。どうやら占いが出来る台みたいだ。
「まさか占い? 別にいいよ俺は」
「いいじゃん。春日もやろーよ」
「う~ん……でもなぁ……」
「1回だけだから。どうせすぐ終わるだろうし」
「まぁそういうことなら」
「んじゃ決まりっ。ほら行こうぜ」
「ちょっ……引っ張るなって」
相変わらず強引な奴だ。
まぁいい。さっさと終わらせて帰ろう。
晴子が100円を入れてスタートボタンを押す。
どうやら相性占いというのが出来るらしく、名前を入力する画面へと変わった。
「これって二人分入力するのか?」
「だろうな」
というわけで二人分の名前を入力していく晴子。
「って、ちょっと待て。晴子の分はいいとして、なんで俺の名前も入れるんだよ!?」
「ん? だってこれ相性占いだし」
「そうじゃなくて! 何で晴子の相方が俺になってるんだよ!?」
「別にいいじゃんか。オレとの相性がどうなのか気になるじゃん」
「あのなぁ……」
こういうのって、普通は恋人同士でやるもんじゃないのか。
つーか俺なんかとやっても面白くないだろうに。
まぁたかがゲームだし、気にするだけ無駄か。
入力し終えると、次に生年月日を入力する画面へと移行した。
晴子が操作しようとするが、すぐに動きが止まった。
「あのさ。ちょっと思ったんだけどさ。オレの生年月日っていつなんだ?」
「は? まさか自分の生年月日忘れたのか!?」
「いやいや。そうじゃなくてさ。『春日』の生年月日は分かるけど、オレの――『晴子』の場合はいつになるだろうと思ってさ」
「………………あっ」
そういうことか。
俺は普通に生まれたから生年月日が存在するけど、晴子は違う。こいつの場合はかなり特殊な事情だからそういうのが無いんだ。
ある日突然現れたもんな。だから生年月日なんてものが存在するのか怪しい。
というか晴子はどうやって現れたんだろう?
「ど、どうしようか……」
「ん~。この場で考えても仕方ないし、春日と一緒でよくないか?」
「それでいっか」
そういうことになった。
入力し終わると、診断中と表示された。
「さーて。どうなるかな」
「おー。それっぽい雰囲気が出てるな」
画面にはまるで銀河のような場所が映っている。
そしてしばらく待つと、結果が表示された。
そこには――
「へぇ……」
「!!」
【お二人の相性は『100%』です。】
なんての書いてあった。
「み、み、見たか! オレらの相性100%だってよ! 100%!」
「らしいな」
「す、すごくないかこれ! 100%なんて滅多に出ないよな!?」
デカデカと100%と表示された画面を見てはしゃいでやがる。
「んなことないだろ。ゲームなんだから無難な結果になる設定なんだよ」
「で、でも! ここに『的中率90%越え!!』って書いてあるじゃん!」
「そんなの信じるなよ……」
こんな嘘くさい宣伝文句を真に受けてやがるのか。
試験テスト前に「俺は全然勉強してないわー!」っていうやつ並に信用できん。
「ふふん。どうだ?」
「何がだよ」
「オレ達の相性バッチリだってことが判明したじゃんか!」
すっげぇ嬉しそうだなこいつ。
子供みたいにテンション高くなってやがる。
「だからどうした」
「なんだよー。春日は嬉しくないのかよー」
「こんなのたかがゲームだろ。当たるわけないっての」
「夢のないやつだなー」
俺は占いなんて信じてないし、興味もない。
おみくじで大吉が出ても大して喜ばないし、大凶が出ても落ち込んだりもしない。
だから晴子もそんな感じだと思うんだけどな。
「そういやオレって、昔からこういうの興味無かったっけ」
「分かってるならいちいち聞くなよ」
「む~……」
やっぱり晴子だって分かってるじゃんか。
なのにこんなゲームごときで嬉しそうにしてやがる。
どういう心境の変化だろう。
「……まぁいいや」
「そろそろ帰ろうぜ。丁度いい時間だしな」
「そうだな」
すぐにゲーセンから出ることにした。
その道中のことである。
「ふんふんふ~ん。ひゃっくぱ~ひゃっくぱ~」
晴子がやけにご機嫌なのである。
さっきの占いの結果がよほど嬉しかったらしいな。
あんなゲームで機嫌がよくなるとか変なやつだ。
しかも俺との相性がよかったぐらいで喜んでたもんな。まぁ相性0%!みたいな結果よりはマシだとは思うけどさ。
そんなことを考えつつ文房具店を通り過ぎようとした時、あることを思い出す。
「あっ! そうだ!」
「ん? どうした春日?」
「そろそろ新しいノートが欲しいと思ってたんだ。買うのすっかり忘れてたよ。すまん晴子。ちょっと買いに行ってくるよ」
「あいよ。オレはここで待ってるよ」
急いで文房具店に入り、新品のノートを手に取ってレジへと進んだ。
レジには若い女の人が担当していた。
「いらっしゃいませ~」
……おお。なかなか美人な店員だ。
恐らく俺と同じ高校生かもしれない。そのくらい若く見える。
しかもおっぱいもそこそこある。ここまで容姿端麗な子はあまりいないだろう。
代金を支払い、おつりを受け取る。
「ありがとうございました~」
そういってニッコリと微笑んでくれた。
本当に可愛らしいな。
営業スマイルだと分かっていても、つい喜んでしまう。俺だって男なんだから仕方ないじゃないか。
なんとなく得した気分になったな。
今日はいいことがありそうだ。
どうでもいいことを考えつつ店を出ると――
「かーすーがー!」
「うおっ!?」
ジト目で睨みつけてくる晴子がそこに居た。
「な、なんだよ? どうしたんだよいきなり?」
「どうしたじゃないよ。ちょーっと優しくされたぐらいで、デレデレしやがって……」
「うっ……」
さっきの場面を外から見ていたのか。
「べ、別にデレデレなんかしてねーよ!」
「嘘付け。鼻の下伸ばしてたくせに」
「なっ……」
くそっ。やはり晴子にはお見通しか。
「か、仮にそうだとしても晴子には関係ないじゃねーか! 俺の勝手だろ!」
「………………ヤダ」
「は? なんか言ったか?」
「……もう二度とあんなみっともないマネするなって言ったんだよ!」
「な、なんだよそりゃ!? いくらなんでも横暴すぎるだろ!」
「うるさい! ダメったらダメなの!」
なんだよこいつ。いきなり訳の分からんこと言いやがって。
俺が何をしたってんだ。
「いいな? もう絶対にダメだからな?」
「だ、だから俺は何もしてないって――」
「い い な ?」
「わ、分かったよ……」
何を怒ってるんだこいつだ。
さっきまでご機嫌だったくせに、急に不機嫌になりやがって。
ほんと意味分からんやつだ。
その後も晴子はずっと機嫌が悪かった。
ちなみに今日も晴子が夕飯を作ってくれたが、俺の分だけ何故かおかずの量が少なかった。




