体観察
ある日のこと。
コタツに入りながら寝そべって漫画を読んでいると、晴子がすぐ隣までやってきた。
「ん? どうした晴子」
「そんな格好で漫画なんか読むなよ。みっともない」
「別にいいだろ。ほっとけよ」
「せめて普通に座ってからにしろっての」
「寒いからやだ」
ほんと最近の晴子は口うるさくなったなぁ……
「ったく、オレがこんなにもだらしない奴だったと思うと情けなくなるぞ」
「別にいいだろ。俺の好きにさせろよ」
「はぁ……」
放っておけばそのうち諦めるだろう。
さーて、漫画続きでも――
「だったらオレにも考えがある」
すると晴子は近づき、そのまま俺の背中に馬乗りになりやがった。
「ぐえっ……何するんだよ!?」
「春日が言うこと聞かないからだろうが」
こ、こいつ……強硬手段に出やがった。
「ほれほれ。言うとおりにしないとどかないぞー?」
「ぐっ……」
くそっ。背中が重い……
そっちがそういうことしてくるなら、こっちだって意地でも動かん。言いなりになってたまるかっての。
「どうしたー? オレの言うこと聞く気になったかー?」
「うるせぇ! やなこった!」
「頑固だなぁ……」
言ってろ。
この程度ならなんとか我慢できるし、こうなりゃ根競べだ。
「ここまでしてるのにまだ本読む気かよ。いい加減諦めたらいいのに」
「やかましい」
「…………」
……お。やっと静かになったか。
よしよし。さすがに晴子も諦めたかな?
と思ったが――
「んーと……えいっ」
「ちょ――」
こ、こいつ……俺の服を脱がそうとしてきやがった……!
腰から肩の部分までまくられて、背中がひんやりする。
「や、やめろ! 寒いだろうが!」
「春日が観念するのなら止めてやるよ」
ここまですることないだろうに。ほんと強引なやつだ。
決めた。そこまでするなら俺も絶対動いてやるもんか。
しかし寒いな。冬に上半身裸のままでいるとか正気じゃない。
もし風邪を引いたら後でぶん殴ってやる。
「…………」
あれ。また晴子が大人しくなった。
と思ったら、突然背中を触り始めた。
「お、おい。何してるんだよ」
「別にいいだろ。少しぐらい触っても」
冷たい手の感触が背中を刺激してくる。
「や、やめろって。触るんじゃねーよ」
「元はオレの体だったんだし、これぐらいで文句言うなよ」
「変な言い方すんな!」
こいつは何がしたいんだ。行動がさっぱり読めん。
「…………」
「…………」
「あっ、ホクロ発見」
「…………」
「へぇ。オレの体ってこうなってたんだな……」
やけに背中を触ってくるな。マッサージを受けいてる気分だ。
「これが……男の体……」
さ、寒い……
服が脱げている上に、晴子が冷たい手で触ってきてるからな。下半身はコタツに入っているとはいえ、体温がどんどん下がっていくのが分かる。
このままだと本当に風邪を引いてしまう。
「も、もうやめろ! 悪かった……俺が悪かったから! 早くどいてくれ!」
「…………」
「晴子! 聞いてんのか!?」
「……えっ? ああ、うん。すぐ退くよ」
晴子が退いてくれたので、急いでコタツの中へと潜った。
「あ~……あったけぇ……」
「…………」
「さすがに今だけは見逃してくれよな。これは晴子が悪いんだから」
「…………」
「おーい?」
どうしたんだろう。急にダンマリになりやがった。
顔も少し赤い気がするし、何があったんだ?
そういや俺の背中をジロジロ見ていたな。それから黙り始めたんだよな。まさか俺の体に何か変わったところでもあったんだろうか。
……まぁいいや。今とりあえずコタツで温まろう。




