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もう1人の自分が女だったらどうしますか?  作者: 功刀


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修羅場

 いつものように学校へ行く支度を済ませ、鞄を持ち、部屋から出ようとする。

 もう何年もやっている動作なので何事も無く進んでいく。が、この時は少し違っていた。何故ならドアに手をかけたところで晴子が呼び止めたからだ。


「今日も弁当持っていかないんだな」

「まぁな。最近は美雪が弁当作ってくれるから作る必要もないんだよ。お陰で大助かりさ」

「……へぇ。美雪の弁当ねぇ……」

「よく分からないけど、最近の美雪はやけに弁当作りに精を出しているみたいなんだよ」

「…………」


 しかも日によって中身も違うからいつも楽しみにしている。飽きさせないように工夫しているのだろう。

 一度本人に「大変なら無理して作らなくていいよ」と伝えたんだけど、「弁当作るのが楽しいから気にしないで」と返されてしまった。何度も言うのもなんだし、結局その言葉に甘えることにしている。

 もしかして料理人にでもなるつもりなのかな。でも美雪の腕前なら繁盛しそうな気がする。俺なら毎日のように通うだろう。


 おっと、そろそろ学校に行く時間だ。


「じゃあ俺はもういくよ」

「……ん。ああ、がんばれよー」


 晴子はなにやら考え事をしていたみたいだけど……今は気にしてもしょうがない。それよりも早く学校に行かなければ。




 チャイムが鳴り響いて午前中の授業も終わり、待ちに待った昼休み。

 美雪が俺の席に椅子を寄せ、机の上に二人分の弁当箱を取り出した。


「いつもサンキューな美雪。本当助かるよ」

「……気にしないで。私が勝手にやってることだから……」


 実際本当にありがたい。いちいち弁当作る手間も省けるし、何より自分で作るよりも遥かに美味い弁当が食べれるんだ。

 美雪が神様か天使に見える。これからは足を向けて寝れないな。


「……? なんで……私に向けて拝んでるの……?」

「気にしないでくれ。それよりも弁当箱開けていいか?」

「うん、いいよ」


 さっそく弁当の蓋をつかんで開けようとした時だった。

 教室のドア付近から見慣れた声が聞こえたのだ。


「おっ。いたいた」

「!! 晴子ちゃん!」


 やってきたのは晴子だった。

 その姿を見た瞬間、千葉が即座に反応した。まるで犬みたいなやつだ……

 晴子はここ最近、学校に来ていなかったから気持ちは分からんでもないけど。


「晴子ちゃん……その、大丈夫なのか? ほら、あんなことがあったんだから……」

「心配すんな。もう平気だって。心配かけたな」

「よかった……」

「元気になってボクも嬉しいよ」

「天王寺にも世話になったし、本当サンキューな」


 晴子は以前のような元気を取り戻したようだ。もう心配は要らないだろう。

 これで一安心かな。


「それで、今日はどうしたの?」

「ちょっと春日に用があってな」

「出久保に?」

「ああ。おーい春日。弁当持って来たぞー」

「なに!? 晴子ちゃんの弁当だとぉぉ!?」


 よく見たら、晴子は片手に小さな袋を持っていた。

 というか弁当ってどういうことだ?


「な、なぁ。おれの分は無いのか!?」

「また今度作ってやるよ」

「マジか!? いやっほぅ!!」

「いいなぁ……」


 喜びのあまり浮かれてる千葉を無視し、晴子は俺の元へと近づいてきた。


「おい晴子。なんで弁当なんか作ってきたんだ? 美雪が作ってくれるって朝言ったよな?」

「まぁそういうなよ。せっかくオレが作ったんだからよ」

「いやいや。既に俺の分はあるんだしさ、わざわざ持ってくることはないだろ。つーか弁当二つは量が多い」

「だったらオレの分だけ食えばいいだろ」

「いやだから……」

「……!」


 つーか個人的に弁当……というより美雪の料理が食べたいんだ。晴子ならこの気持ちも分かるはずなのにな。

 というかなぜ弁当なんか作ってきたんだろう。持ってきてくれなんて一言も言ってないし、作ってくるとも聞いていない。


「……はる君は……どっちのお弁当が食べたいの……?」

「へ?」


 美雪から予想外の質問が飛び出てきた。


「あの、美雪? どうしたんだ急に……」

「…………」


 ジーっと見つめてくる美雪。

 少し怖い……


「い、いやいや。美雪の弁当に決まってるじゃないか。晴子のは勝手に持ってきただけだし」

「……ほっ」

「おいおい。まだ決めるのは早いだろ。オレのはさっき作ってきたばかりだから出来たてだぞ?」

「そ、そうなのか」

「春日も冷めた弁当よりも出来立てのが食いたいだろ? だからオレのにしとけって」

「むっ……」


 まずい。美雪が明らかに不機嫌そうにむくれている。

 というか何で晴子はこんなにも威圧的なんだろう。晴子らしくない。


「私のお弁当は……冷めても美味しいように出来てるもん……」

「そうかもしれないけどさ。どうせなら出来たての温かい弁当のがいいよな。なぁ春日?」


 えっ。俺が答えるの?


「た、確かに。そりゃ温かい内に食べられればいいけどさ……」

「ほらな? だから美雪ちゃんには悪いけど、春日はオレの弁当が食いたいってさ」

「……むぅ」


 やっべ。さらに不機嫌そうな表情になっている。


「ま、待て待て。別に晴子の弁当が食いたいって言ったわけじゃないぞ。どうせなら出来たてのがいいという事であって――」

「やっぱりオレのがいいんじゃないか。じゃ、決まりだな」

「だから待てって言ってるだろ。晴子が勝手に決めんな」

「……はる君は、私のお弁当は嫌……?」

「み、美雪?」


 どんどんややこしくなってる気がする……


「だ、大丈夫だって。俺は美雪の弁当が食べたいんだ。せっかく作ってきてくれたのに食べないわけが無いじゃないか」

「本当……?」

「本当だって。だから晴子の言う事なんて真に受けなくていいよ」

「ふふん……」

「……っ!」


 なぜか美雪は勝ち誇ったかのような表情をしている。しかも俺に対してじゃなくて晴子に向けてだ。けど美雪のほうが背が小さいので、晴子を見上げるような格好になっている。

 今度は晴子が不機嫌そうな表情をし始めた。


「……そうだ。これからはオレが弁当作ってくるからさ、美雪ちゃんはもう春日の分を作らなくてもいいよ」

「……!」

「朝早く二人分の弁当作るの大変だろ? これからはオレが春日の弁当作ってくるからさ。だから安心していいよ」

「……別に大変じゃない」

「いやいや。二人分のおかず考えるのも、作るのも結構面倒だろ? だったら代わりにオレが負担するからさ。美雪ちゃんもその方が楽でいいだろ?」

「そんなことないもん。はる君は私のお弁当おいしいって言ってくれてるし……これくらいなら平気だよ?」

「でも負担になるだろ? だからそんなに無理する必要はないんだぜ?」

「無理してない。はるちゃんこそ、無理しなくてもいいよ……?」

「…………」

「…………」


 ……おかしいな。

 この二人は仲良しだったはず。それなのに何でこんなにも言い争ってるんだ?

 しかもたかが弁当ぐらいで口論になるなんて、二人ともらしくない。

 さすがにこれ以上ヒートアップするようなら止めたほうがいいかもな。というかいい加減メシ食いたい。


「なぁ。二人とも落ち着けって。たかが弁当ぐらいで――」

「春日は黙ってろ」

「はる君は静かにしてて」

「あ、はい……」


 二人に気圧(けお)されてつい萎縮してしまった……

 どうしよう。俺だとこいつらを止められない。

 誰か助けて……


「おーおー、随分とモテモテじゃないか出久保」

「羨ましいなぁ……」

「うるせぇ! お前らは黙ってろ!」


 ダメだ。千葉と天王寺(野次馬ども)はアテにならん。人の気も知らないで面白そうにはやし立てやがって。後で覚えてやがれ。

 さてどうしよう。ここまま放っておくと昼休みが終わるまで続けてそうだ。それだと弁当を食い損ねてしまう。やはりここは俺が何とかするしかないか。


「二人ともいい加減にしてくれ。休み時間終わっても続けるつもりか? 俺も腹が減ったんだし、そろそろメシに――」

「そうだ。だったら春日に決めてもらおうじゃねーか」

「はる君に……?」

「これからどっちが弁当作ってくるか。それを春日が指名するんだ。これなら文句ないだろ?」

「……望むところ」

「へ?」


 あれ? 

 なんか話の方向が……

 二人が俺の方を向いて近づいてくる。


「というわけでどっちの弁当が食いたいんだ? もちろんオレのだよな? 毎日出来たてのまま届けてやるぞ?」

「……私のお弁当、がんばって作ったんだよ? 冷めても美味しいように……してあるよ? はる君が好きなおかずも、たくさん用意してあるよ?」

「あの、ちょっと……」


 さらに接近してくるので、思わず後ずさる。

 というか少し怖い……


「早く答えろよ春日」

「はる君……答えて」

「お前らさっき俺に黙ってろって言ったよな!?」

「どっちを選ぶんだ? 当然オレだよな!?」

「私は信じてるよ……」


 ここは真面目に答えないとダメっぽいな。というかそうでもしないと終わらなさそうだ。

 もし毎日、晴子か美雪の弁当が食べれるとしたら……いやまてよ?

 よくよく考えてみれば、晴子のはいつでも食べれるんだ。一緒に住んでるわけだしな。


 そうなると……

 やはり食べれる機会が少ない美雪を選んだほうが――


「まさかとは思うけど、オレのはいつでも作ってもらえるとか考えてないだろうな?」


 ギクッ


「だったら……もしオレを選ばなかったら、もう二度と春日にはメシ作ってやらねーからな!」

「は、はぁ!? そりゃないだろ!? 横暴だ!」


 晴子の料理もけっこう美味いからな。しかも最近は腕を上げているらしく、明らかに前よりも上達している。もはや料理の腕前は俺よりも上だ。

 そんな晴子が二度と料理してくれないとなると少し……いや、かなり辛い。こいつの作る料理も楽しみの一つでもあるんだ。それが無くなるとは考えたくない。


「おいどっちを選ぶんだよ?」

「私だよね……?」

「オレだよな?」

「ちょ……だから二人とも落ち着いて――」


「春日!!」


「はる君っ……!!」


 ……カンベンしてくれよ。何で俺がここまで追い詰められなきゃならんのだ。

 さすがに腹が減ったし、とりあえず無理にでもこの場を収めよう。




 その後話し合いの結果、美雪と晴子は交互に弁当を作る事になった。というか最初からこうすりゃよかった気がする。

 結局今日は両方が持ってきた弁当を食べる事にした。腹が減っていたせいか、弁当二つをあっさり平らげることが出来た。


「思いのほか二人前でも食べきれるもんだな」

「ま、こんな展開になると予想してたからな。量を少なめにしといたんだよ」


 ………………だったら最初に言えよ!

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