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俺 VS オレ

 この女が俺だという事は良く分かった。しかしここで問題が発生する。それは名前に関してだ。

 二人が同じ名前を名乗ったら、非常にややこしいことになる。

 という事で、名前を考えようとしたのだが――


「お前の名前はどうするよ」

「えっ、オレが変えるのか?」

「そりゃそうだろ。元は男の俺の名前だからな」

「ふざけんな! オレだって男だぞ!」

「今は女だろうが」

「そ、そりゃそうだけど……」


 まぁ、気持ちは分かる。ある日突然名前を変えろ!なんて言われたら俺なら拒否する。うーん、どうするか……。

 ふと、床に落ちているゲームのパッケージを目にする。これだ!

 そのパッケージを手に取り、見せた。


「これで負け越した方が名前変えるってのはどうだ?」

「……いいだろう」


 手に持っているのは、格闘ゲーム――格ゲーと言われるジャンルだ。こいつも俺なんだから実力も互角。いい勝負になるはずだ。

 さっそく、ゲーム機のスイッチを入れ、コントローラを手に取り、強く握った。







 つ、つまんねえええええええ!

 いい勝負所じゃない……いい勝負すぎる(・・・・・・・)

 使用キャラクターはもちろんの事、動き方、コンボ、更にはコンボミスする所まで一緒だったのだ。するとどうなるか?

 勝ったり負けたりはするものの、どれも試合展開が似たり寄ったりなのである。これでは普通にじゃんけんするのと大差ない。


「なぁ。止めようぜ」

「そうだな」

「……オレが名前変えるわ」

「……悪いな」


 んで、名前を考える事にしたのだが――


「と言っても何にするよ」

「そうだな…………春日子ってのはどうだ?」

「安直すぎるだろ」

「じゃあお前が考えてみろよ」

「う……えっとそうだな……カスガコは?」

「一緒じゃねーか!」


 駄目だ……中身が一緒なせいで、思考まで同レベルだ……。二人居るのに一人で考えてるようなもんだ。


「んーと……そうだな……じゃあ春子はどうだ?」

「ふむ。悪くないな」

「このままだとあれだから……少し変えて……」


 紙とペンを取り、そこに『晴子』と書き、見せた。


「これでどうよ?」

「……へぇ。いいじゃんそれでいこう」


 という事で、もう1人の自分の『出久保 春日(でくぼ かすが)』は『出久保 晴子(でくぼ はるこ)』となった。


「よろしくな。『晴子』」

「おう、よろしくな。『春日』」

「……なんか変な気分だな」

「だよなー」


 互いに笑う。と思ったら突然、晴子がニヤリとした表情を浮かべた。


「それとも『お兄ちゃん』のがよかったか?」

「…………」

「冗談だよ。そう睨むなって」


 おい、こいつ性格悪いぞ。




 その後、少し調べたい事があったので、モニターの前に座り、PCの電源を入れた。……とその前に、お気に入りサイトの巡回するか。

 マウスを動かして操作してる時だった。後ろから晴子が覗き込んで来たのだ。


「おい変われよ。オレも使いたいんだよ」

「少しは待てよ、まだ立ち上げたばかりだろうが」

「いーじゃんかよ。調べたい事があるんだよ」

「だから後で使わせてやるから――」


 ムニュン。


「……? どうした?」


 この背中に当たる柔らかい感触は……まさか……。


 ムニュン。ムニュン。


「何で急に黙るんだ――ははーん、そういうことか」


 ムニュン。ムニュン。ムニュン。


「お、おい! 何してるんだ!」

「当ててるんだよ」

「なっ――」

「こういうのも好きだったもんなぁ?」


 くそっ。やっぱり性格悪いぞ。どうなって――いや、こいつは俺だったな。ということはつまり……周囲から見たら自分はこういう性格をしてたってことか?

 ……今度から気をつけよう。


「人の振り見て我が振り直せ。だな」

「俺の思考を読むんじゃねえ!」


 そうか……こいつには隠し事が出来ないのか……。

 どうせ見るサイトは同じだし、一緒に見る事にした。

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