謎の男装美少女
授業も一旦終わり、昼休みになった。今日は弁当をちゃんと持ってきている。
教室内で弁当を全て平らげた後、自分の席で雑誌を広げていた。
「たっけーなこれ」
「うーん。僕は買い換える予定はないかな」
「でもそろそろ2年になるし、どうせなら新しいのに買い換えたいよな」
そして二人の男子生徒が席を囲い、一緒になって雑誌を読んでいる。
雑誌には様々なスマホの機種が載っていて、今はその話題で盛り上がっているのだ。
「つーか余計機能多すぎだよな。なんだよPiP機能って……」
この茶髪で威勢が良さそうな男は千葉 勝という。
「確かに使わない機能多いよね。僕は半分も使い切れてないと思う」
こちらの優しそうで眼鏡をかけた男は天王寺 虎太郎だ。
二人は中学の時から一緒で、高校も一緒、更にはクラスまでもが同じだったのだ。なので自然とつるむことが多くなっていた。
「んーと。PiP機能とは動画を見つつ他の作業ができる機能のことで――」
「おれはそんな機能使わねーと思うな」
俺も千葉の意見に同感だ。
最近のスマホはやたら機能が多くて殆ど使っていないと思う。
「もっとシンプルなの無いかな? 僕でも使い易いやつがいいな」
「ならこの一番安いやつはどうだ? 1万切ってるぜ」
「う、うーん。さすがにスペックがきついかな……」
我がままな奴め。でも気持ちはわからんでもない。
「じゃあこれはどうだ。ギリギリ1万円台で去年出たモデルらしいぞ」
「……へー、この値段で中々のスペックだな。よく見つけたな晴子」
「つーかオレも欲しいんだよな。今は春日の分しかないしさ」
「じゃあ今度買いに行くか?」
「マジで!? 買ってくれるの?」
「親父に頼んでみるよ。上手い言い訳でも考えてみるさ」
「おお! サンキューな!」
「…………」
「…………」
「……なんでお前がここに居るんだよ」
「よっ!」
いつの間にか隣に晴子が居たのである。勿論、先程まで存在していなかった。
よっ! じゃねーよ。しかもまた俺の制服着ているし……。
「あれ……その髪型はどうしたんだ?」
「これか? 似合ってるっしょ」
今のこいつはいつものロングストレートではなく、ポニーテールだった。
「あ、ああ。似合ってるけど……じゃなくて! なんでまた学校に来てるんだよ!!」
「だーかーらー。暇なんだよー」
ああもうこいつは……。
そりゃあ学校に通ってないから暇だろうけれど、だからといって学校に来なくてもいいのに……。
突然の出来事で、二人も唖然としている。
「お、千葉と天王寺じゃん。なんか久しぶりな気がするなー」
「ええっ!? おれのこと知ってるの!?」
「ぼ、僕の名前も知ってるの!?」
「おい! バカ!」
「――あ。やべっ」
このバカタレが!
二人は俺のことをよく知ってるが、晴子はほぼ初対面なんだぞ!
「え、えーっと、ハルコさん?だったよね? なんでおれの名前知ってるの?」
「僕も気になるな」
「あー……えーと……そのだなー…………そ、そうだ! 春日に聞いたんだよ! なあ春日!」
「そ、そうだったような気がしなくもないような……」
「出久保が? なんでまた?」
「頼む。聞かないでくれ」
「……まぁいいけど」
……頭痛くなってきた。
騒いだせいで、クラスの中から注目され始めてるし……。
その後も、しれっと俺達の話に参加し始めたのだった。
千葉と天王寺も、会話してるときのテンションは高かった。まぁその気持ちはわかる。男装してるとはいえ、晴子は間違いなく美少女に部類に入ると思う。そんな子と間近で会話できるのだ。興奮するのも無理ない。
この二人以外の男子生徒も徐々に加わり、いつの間にか晴子中心で盛り上がり始めたのである。傍から見たら逆ハーレム状態だ。
元男だけあって、男グループにすんなり溶け込めたのだ。
晴子の人気は凄かった。
それもそのはず。気さくに話しかけられ、男の話題についてこれる上に、美少女ときたもんだ。これで人気が出ないわけがない。
「すごいモテモテだねー」
「とても出久保の親戚とは思えねーほど綺麗だもんな。無理もないさ」
まぁ確かに、あいつは理想的な女性像だからな。これで中身が俺じゃなけりゃ完璧なのになぁ……。
とりあえず、千葉は後で殴っておこう。
晴子が帰った後も学校内で姿を見られたためか、少しずつ噂が広まっていったのである。
『謎の男装美少女』。これが晴子に対する印象のようだ。クラスの連中以外には、親戚だと言っても何故か信じてもらえなかった。解せぬ。
その為、いくら学校中を探しても正体が掴めず、様々な説が飛び交うようになった。
他所の学校生徒が遊びに来ている説、誰かが変装している説、幽霊説……等々。
実は本当に男で、胸の膨らみは只のパッドだという説まであったのだ。そのせいで一部の女子生徒にも人気があるようだ。
……家に帰ったら説教してやる!




