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短編集 その他

運命の輪

作者: 燈夜

気晴らしに書いてみた。まあ、フィクションです。

輪廻転生って知ってる?

現世で悪い事をした人間は来世で報いを受け、それなりの人生をまた送ると言う業だよ。

最終解脱と言うのは本当に難しく、輪廻の輪から逃れる事は相当に難しいらしいんだ。

「なんみょーほーれんげきょー」や、「なむあみだぶつ」「あーめん」を何度繰り返しても無駄だと言うことなんだな。

俺みたいな凡人はどんなに頑張っても結局輪廻を繰り返すということなんだ。うん。


んで、なんの話をしていたんだっけ。

そっか、転生。転生だ。

俺、春日朝日(かすがあさひ)は良い子を演じてきた。

試験でよい点数を取るためにこっそりカンニングをしたり、母ちゃんに買い物を頼まれたとき、こっそりおつりから百円を抜く。こんなあくどい事を毎日繰り返していたわけだ。


どうだ。極悪だろう?


んで、そんなある日、俺は死んだ。交通事故だった。

そして輪廻転生。

なんに生まれ変わったって?

一応人間だった。安心したよ。

トンボやネズミ、あるいはバッタなどという場合もあるから注意だ。

もしそんな下等生物に転生した場合、人間に生まれ変われるのは輪廻を何度繰り返さなければならないのか判ったものじゃないから。


ちょっと話が逸れたね。

転生先って、実は数種類の候補の中から選べるんだよ。

もちろんそれには制限があって、ある程度のランクの幅の中からしか選べないわけだけど。

まあ、十連ガチャで1枚以上SR確定、って奴だ。

普通ならSRを選ぶんだろうけど、SR以外を選ぶことも出来る。


だけど、俺は先にも言ったように前世で悪い事ばかりしていたから、大して良い転生先は無かった。

DV夫に泣き崩れる母、母の連れ子の姉を持つDV夫との間に埋まれた異父弟であったり、片親確定の愛人に捨てられた女性の腹の中の子供であったりと、ろくなものが無い。

その後の人生お先真っ暗な俺の姿が透けて見えるわけだ。

んで、肝心のSR級。

そこに俺は注目したね。

正社員夫婦の長男坊。40の父親と35の母親の間に生まれた、やっと授かった待望の長男って役割の家庭だ。


俺は無難にそれにした。だって、他に選びようが無いだろ? まだ可能性は有るだろ?

何? チートスキルが無い? 記憶が残る保証がない?

そんなの知るか。

とにかく俺はそれに決めたんだ。

一番マシだと思う可能性。

これは逃げじゃない。

俺は無難な可能性に賭けたんだ。


んで、転生後の話だ。

不思議な事に、俺には前世の記憶があったんだよね。

で、俺は前世の反省を生かして今世につなげようと意気込んでいたわけなんだけど……。

俺が二歳のときだ。

まず、父ちゃんがリストラにあった。首を吊る。

母ちゃんが発狂する。今は白い壁の中の精神病院の中だ。

そして俺。いまだ幼い俺は母方の婆ちゃんの家に引き取られる事になった。

だから俺はおばあちゃんっ子として暮らすようになる。

俺は眩暈がしたね。

──ああ、俺はなんて家を選択したんだ、ってね。


おばあちゃん家には結婚してない叔父さんが二人いて、面倒を見てくれた。二人とも仕事してないけど、とにかく俺を可愛がってくれた。

一人の叔父さんは頭のネジが飛んでいて、時々空に向かって大声で不思議な事を言う人だったから近所の人から後ろ指を差されている。

もう一人の叔父さんは派手なスーツを着て外車を乗り回している。でも、仕事はしていない。

近所の人はヤクザ、半グレなんて言っていた。

もうわかるよね。

おばあちゃんの家もちょっと変わった人達だったんだ。

でも、俺はそんな叔父さんたちにおしめを変えられて、幼稚園では送り迎えをしてもらい、やれヤクザだの、詐欺の障碍者年金受給者だ、人間の屑だなどと陰口を叩かれながらも、一向にめげない叔父さんたちに可愛がられて育った。

当然、一番可愛がって愛を注いでくれたのはお婆ちゃんなんだけれども。

叔父さんたちに子供は無い。だから、俺の従弟は一人もいなくて。

だから、自分の子供代わりにと余計に可愛がってくれたのかもしれない。


何が良かったのかは判らない。幸せの基準なんて人それぞれだ。

ただ、俺はカンニングが悪い事だと知っていたからカンニングをしなかった。

叔父さんたちの財布の中にはそもそも抜くお金が入っていなかったから財布からお金をくすねる事もなかった。

こう考えれば進歩だと思う。

俺、人間として、人として前世より一歩進んだ生を送っているんだよ。


今度の転生先、楽しみだな。

きっと次の選択はもっとう違う豪華な選択肢が広がっているに違いないと思えるね。

でも、出来る事なら輪廻の輪から外れたい。

生きてるのって、なんだか辛いから。

輪廻の輪から外れる方法と言えば、上の叔父さんが魔術に嵌っているようだから、ちょっと教えてもらうのもいいかもしれない。

でも『魔法使いの修行をするのは三十歳を過ぎてから! 家族の同意を得る事!』なんて意味不明なことも言ってたので弟子入りはちょっと厳しそうだけれども。


と、言うわけで人生、何が良くて悪いのかなんてホント最後まで判らない。

あ、取り合えず高校生になった俺は彼女が欲しいかな。

叔父さん二人は彼女はいたけれど結婚できなかったそうだから、その辺りの教訓話はしっかり聞いて、パートナーを逃がさないようにしないとね。うん。


それじゃ、みんなも次の輪廻転生のときは頑張ってね。

幸運を祈るよ。

死後に食べ物や飲み物を一切口にしないと「前世の記憶を持ったまま生まれ変わることが出来る(とある書籍談)」らしいですよ?


まあ、人間の食欲・性欲・睡眠欲は人間の三大欲求ですからね、自信のある方は試されてみてはどうですか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 本当に因果応報が存在していることを、皆が皆知っていたら世の中平和かもしれんですね。 とかそんなこと考えさせられました。 来世特典目当てにがんばりますもん。
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