6.夜の蝶?
私の背中から出てきたものは小さかった。20cmもないだろう。背中から蝶のような羽が生えている。俗にいうフェアリーだろうか。
つつーと私の前に飛んで来て右掌を私に向け、目を閉じる。魔法でも使うのだろうか。攻撃魔法だったらいやだな。
どうやら女の子らしい。黒いワンピースをきて、羽も黒っぽい半透明だった。夜の蝶だ。いやなんか違う。
やがて目を開けた妖精さんは、無表情のまま言う。
(マスター。自爆を開始してよろしいでしょうか?)
とんだ爆弾発言、地雷女?
「いいいい、ちょちょちょっと待って、待って。自爆禁止」
妖精さんは無表情のまま、首をかしげて言う。
(マスター。念話機能は故障しておりませんが?)
あ。妖精さんは口動かしてない。声出してない。超能力?
(超能力?なんですかそれは)
あ。通じてるんだ。でもできたら声で会話したいなぁ。
妖精さんは声に出して話してくれた。
「変なマスターですね。人工知能に障害があるのでしょうか?機能の異常は見つからなかったのですが。」
う。自覚はしてても、面と向かって障害とか言われるとちょっとな。
「なんですか。そのボロ布をまとった格好は?」
「あー。えーとなんだ。人に怖がられない格好?」
「は?正気ですか?」
なんか怖い。
おそるおそる聞いてみる。
「私はなんか他のと違うらしい。それを知って君はどうする?」
「どうするも何も、解除できない従属魔法をかけられていますので。例えマスターが鉄のカカシでも従います。」
おうふ。すごい毒舌だな。なんか元気だった時の私を思い出す。
味方になってもらえるかな。まずは一つ確認せねば。
「君は魔王に従わなくていいのか?」
「我らが従っているのは、女王を幽閉されているためです。魔王様に忠誠を誓っているわけではありません。ですが我らに従属魔法をかけ、魔王様に従うゴーレムに従属することで、同じことになっているわけです。」
あ。ゴーレムが魔王に従わないんなら、大丈夫なわけかな。でも女王が幽閉されてるなら無理だろうか。聞いてみよう。
「私は魔王に従わない存在らしい。君は味方になってくれるだろうか?」
「先程も言いましたよね。鉄のカカシでも従うと。記憶装置も故障してませんか?」
なんか背中がゾクゾクする。でもこの体のことを知っているようだし、頼りになりそうだ。味方になってもらいたい。
「君は私には勿体無い存在だがよろしく頼む」
ちょっと体を低くする。これで頭を下げたようにみえるだろうか。
「・・・!。ま、まぁ仕方ないですね。面倒みてあげましょう」
あ。デレた。顔を赤くしてそっぽを向いてる。
「デレってなんです?」
いえなんでもないです。はい。
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まずは、私には人間の記憶があること。しかもこの世界の人間ではなさそうなこと。リトアさんとシャルの2人をつれ、魔王軍に襲われた街を脱出し、港町へを逃げていることを話した。
妖精さんは「そうですか。理解しました。」とだけだった。できる女は違うねと思ってたら、顔赤くしてた。やばい、わかっちゃうのか。
会話の時不便なので、名前を聞いたら、
「名前?そんなものフェアリー族にあるわけないじゃないですか。」
なくても不自由ではなかったらしい。
「うーん。名前つけたほうがいいだろうなぁ。私がクロって名付けられたから・・・・ミケとか。」
「ミケですか。変わった響きですね。どんな由来なんです?」
えーと猫の体毛が3色の個体につけるんだったかなと思い出してると。怒りだした。
「ネコ?・・・・・ペットですか!どうして誇り高いダーク・フェアリー族の私にそんな名前をつけるのですか!!」
「だってさ、栗色の髪、白い肌、黒い服で・・・」
「バカですか貴方は!それだったら、ダーク・フェアリー族はみんなミケですよ!!!」
かなりご立腹のようだったので、一時保留ということで、ミk(やばい、睨まれた)妖精さんの話を聞くことにした。
ダーク・フェアリー族は、もともとずっと昔から、ルジャンス王国領内に誰にも気付かれず、ひっそりと暮らしていたんだそうだ。
魔王軍が侵攻し、発見されてしまい。一族の女王が捕まり、幽閉されてしまった。ダーク・フェアリー族は女王に従う一族なので、逆らうすべはなく、
50年くらい前から魔王に従っているそうだ。
それとは別に魔王軍はルジャンス王国領内で古代遺跡からゴーレム工場を発見したらしい。30年以上前のようだ。
ゴーレムの製造はすんなりいったらしいのだが、ゴーレム自体を起動させる事ができなかったという。
だが15年位前にダーク・フェアリーの魔力の波長が起動などに利用できることがわかり、いろいろ実験材料として利用された。
そのときに、ダーク・フェアリーを魔力的信管として使うと自爆機能も発動することがわかったという。
妖精さんたちは、魔王軍が知り得たゴーレムの機能、利用方法をつめ込まれ、従属魔法をかけられ戦地へと向かった。
ただ、通常、ゴーレムの中に入っているときは仮眠状態になるという。
うーむ。大事な点は
・私の体、ゴーレムは、本来魔王に属するものではない。古代文明のもの。
工場を破壊できれば、今後の被害は少なくできるだろう。でも怖いから行きたくない。
・ダーク・フェアリーの女王が幽閉されている。
自由にできれば、ダーク・フェアリーが従うことはなくなるのではないか。そうすれば、ゴーレムを起動できなくなり、兵力は減るだろう。
でも、女王の幽閉場所などわからないし、怖いk(略)
いろいろ他に考えなきゃいけないのだろうけど、思いつかない。ネット小説の主人公みたいに明晰な頭脳があればいいのに。
いい考えが思いつかないことを妖精さんに話す。
「君には悪いが現状では女王を救い出せそうにない。このまま街に向かってもいいだろうか?」
「ええ。マスター1人でどうこうできる問題ではないと思います。」
空が白み始めた。もうすぐ夜が明けるだろう。私は、妖精さんをリトアさんとシャルに紹介したい旨を話し、妖精さんも了承してくれた。
あ。名前決めてあげられなかった。
「ミケはダメですからね!!」
了解です。