5.初めてのキャンプ?
海側の街道を港町ルームへ向けて進む。馬車だと12日かかるんだっけ。
そういえば、あのオーガにぶん投げた剣、なんか斬れ味すごかったなぁ。回収すべきだったのだろうか。
この街道他の避難民がいないな。王都側に行ったのだろうか。それとももっと先を行ってるのだろうか。
背中に乗ってる2人は静かだ。あ。シャルは寝てた。
夜なんだけど今何時なんだろう。もう真夜中はすぎたんだろうけど。
周りは真っ暗なんだけど、何故か景色が見えている。暗視機能があるのだろうか。
でもリトアさんとかは真っ暗で見えないと不安だろうなぁ。ライトないのかな。ライトライト。
わっ。びっくり。いきなりライトついたよ。後ろでリトアさんもびっくりしてるのが見える。でもちょっと安心したみたいだ。
さらに2時間位進んだころだろうか、森を抜け、草原に出たあたりでリトアさんが声を掛けてきた。
「このあたりで3時間ほど寝ましょう。その時には夜が明けると思います。」
「了解した。」
足をゆっくり曲げ、降りやすいようにする。
リトアさんは自分とシャルを結んでいた布をほどき、地面に敷いていた毛布へ寝せる。
あ。焚き火のための枯れ枝を拾ってきたほうがいいか。
枯れ枝を拾ってくることを告げ、森へ戻り、枯れ枝をひと抱え分持ってくる。
戻ってみたらもう、かまどを作り終えていた。もっていた短剣がペンライトみたいに光ってる。魔法なのかな。
私が脇においた枝の山から何本か抜き、ナイフで皮を逆立てる、こうすると火の着きがいいんだそうだ。
その枝を積んで、下に枯れ草を詰める。そこに手のひらを向ける。
おおっ。火が着いた。魔法かぁ。私にもできるのだろうか。
あ。私のライト消えるんだろうか。消えろ消えろと念じたらあっさり消えた。
しげしげと火をつけてる様子を眺めているとリトアさんが言った。
「珍しいようですね。焚き火がでしょうか?魔法でしょうか?」
「どっちもだ。野外で火を焚くことはなかったし。私の世界には魔法はなかった。」
その前に異世界なんだと気づいてた。だって月が3つもあるんだもの。
「しかし・・・・どうしてその体になってしまったのでしょうか?魔王軍の兵などに。」
「わからない。」
「これからどうするおつもりですか?」
「そのことなのだが・・・。」
うん。道中考えていた。最良ではないのかもしれないが、無難な考えだ。
「できれば、2人の迷惑にならない限り、行動を共にしたい。いいだろうか?」
「そうですね。私達もクロさんに助けてもらったわけですし。あのままでしたら、見つかったら殺されていたかもしれませんから。」
でも、初めて見た時、怖かったですよといたずらっぽく笑う。
う。そういえばこの人美人さんだった。こういう笑いは心臓に悪い。
「と、とにかく。今日は早く寝てくれ。眠くならないようなので、見張りはずっとやっていよう。」
「ふふ。わかりました、おやすみなさいクロさん。」
「おやすみ。リトアさん。これからもよろしく頼む。」
「ええ。こちらこそお願いします。」
彼女は、岩に背をもたれると、毛布をまとって目をつぶり、やがて寝息を立て始めた。疲れたんだろうな。
私は焚き火からゆっくりと離れ、前方視界のレーダーを見る。
今のところ、近くには何もいないようだ。緑の点は離れたところにぽつぽつと4つほどと黄色と重なってるのが2つ。これはリトアさんたちだろう。4つはこっちには近づいてない。
赤い点はない。緑と赤の違いはなんだろう。
しかし、この世界にきてからまだ1日もたってないんだよな。どうなってるんだろうか。
乗り物に乗ってるという感覚がないから、ゴーレムになってるんだろうなぁ。不思議と残念とか悲しいとは思わない。
まぁいっかって感じだ。
そんなことを考えていてふと気づいた。
死にたいと思う気持ちがなくなってることに。
そういえば、普通にリトアさんやシャルとも会話できたよな。
これがチートなんだろうか。なんにせよ重い気持ちにならないのはありがたい。
私は、いるかどうかわからない神にそっと感謝した。
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夜が明けるにはまだ時間がある。
さて、レーダー見ながらでも、仕様とか確認できるだろうか。
いろいろあって読むどころじゃなかったからなぁ。時間あるいまならいいだろう。
例の歯車アイコンを「ダブルクリック」と念じる。
お。でたでた。レーダーには重なってない。大丈夫そうだ。
「仕様」
「状態」
「装備」
「拡張装備」
「自爆」
「増援」
「拡張機能」
ネット小説の主人公みたいに頭いいわけでもないから、わからなかったら飛ばしちゃおう。
というか、最後から見てみようか。私のあまのじゃく精神が起動したようだ。
「拡張機能」を「ダブルクリック」する
すると、
「呼び出し」
の項目だけ。なんじゃこりゃ。
魔王でも呼び出すのだろうか。わからないけど気になる。会話して情報が得られるなら魔王でもいいかもしれない。
本来の用心深い性格より好奇心が勝ってしまった。ちょっと迷ったけど、「ダブルクリック」してみる。
>「従属妖精を呼び出します」
え?従属?妖精?どういうこと?
背中の一部がカパッと開いて、何か出てきた。