3.住民との遭遇?
悩んでいると、後ろでカタッと小さな音がした。
振り返ってみると家の裏口っぽいドアを開けた小さな女の子と目が合った。
「ひぃいいいいいいいーーーー」
仰向けの四つん這いのまま、あとさずる。
そりゃそうだよな。外見はまだ把握してないけど、メカクモ足、腕4本のゴーレム見たら
怖いだろうな。
でも、何がどうなっているか情報が知りたい。どうすればいいんだろう。
止まったまま考えていると、 影からバッと女の人が出てきた。
そのまま女の子を背にかばうように立つ。
そして土下座をした。ちょっと焦る。
「お願いです!どうか命ばかりはお助けください!それが無理なら、どうか!どうか娘だけでも!」
あ。やっぱりそうなっちゃった。誤解とけるのだろうか。
誤解とけるか話してみよう。発声機能あるんだろうか。
「あー。あー。ご婦人。聞こえるか?」
「はい。聞こえますが・・・」
あーよかった。会話できるんだ。なんとかなるかも。
「まず、誤解のないようにいっておく。私はお二人に危害を加えるつもりはない。」
「はぁ・・・・・・・」
気のない返事だ。だがそうだろう。私だってヤクザから「ワイ善人やし」といわれたら同じ反応する。
「こんな姿をしていたら信じないかもしれないが、私には人間の記憶がある。この世界じゃないかもしれないが・・・・」
「はぁ・・・・・・・」
困ったどうすればいい?
そんなやりとりをポカンと見ていた女の子が立ち上がりトコトコとこちらに近づいてきた。
「シャ、シャル!」
「ねー。ねー。お名前なんていうの?私はシャル」
おお、話しかけてくれるのか。ありがたい。名前、名前は・・・・・思い出せないことに気づいた。
「はじめまして、シャル。私の名前は残念ながら思い出せないようだ・・・・」
「じゃあ、シャルがつけたげる!えーと・・・黒いからクロね!よろしく!クロちゃん!」
猫じゃないんだが・・・・まぁ姪っこもこんな感じだったしなぁ・・・まぁいいか
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シャルと私のやりとりをほっとした顔で見ていたご婦人に体を向ける。
なんかこの体、首がないみたいなんだ。ジャ○ラとかズゴッ○とかそんな感じ。
あ、ちょっとビクッってした。暴徒鎮圧用とかあったし、外見はやっぱり怖いんだろうな。
「気づいたら魔王軍と思わしい軍勢と人間たちが戦っている中にいた。人と戦うわけにはいかず、慌てて逃げてきた。何がどうなっているのかわからない。」
「どう話したらいいのやら・・・・わかっても襲ったりしませんよね?」
そうだよなぁ・・・「信じてください」っていうのは政治家とか金儲け主義のネット運営っぽいからやだしなぁ・・・
物語にでてくる騎士なんかは「この剣にかけて!」とか言うんだろうが・・・
「何も持ってない私だが・・・シャルからもらったこの名前、クロにかけて誓ってもいいだろうか?」
「・・・・わかりました。そういう答えは、魔物はしないでしょうし。とりあえず家の中に入ってください。」
私が家の中に入ると、ご婦人は話し始めた。
この世界および大陸の名前はセルナという。他に大陸は見つかってないそうだ。
この大陸にはいくつかの国があり、ここはニシューテ王国だという。
50年前のある日、いきなり北隣のルジャンス王国に魔王軍と名乗る軍勢が攻めてきた。どこからきたのか、わからなかったという。
あっというまに国全域を占領されてしまったそうだ。残された人々は奴隷のような生活をしているらしい。
魔王がでたということで各国は驚いたが、各国の合同軍を出すことには、ここから離れた国々は消極的で、ルジャンス王国に近い国々の兵士と冒険者ギルドの選抜隊を1000人くらい、5年に1回派遣しているが戻ってきたことはないという。
ずっと他国に攻めてこなかったので、もう廃止すべきだとの意見が出てきたときに、突然この街、ルベアルに攻めてきたのだという。
街を完全に包囲されたわけではなかったので、大半の住民は攻められてない東門から逃げ出したが、自分には小さな子供がいるので逃げるよりは隠れていたほうがいいのではと考えていたのだそうだ。
あ。ご婦人の名前はリトアさんだそうだ。旦那の話はしてないし、いないのかな。
ちなみにこの話し中、シャルは興味深そうに、私の体をぺたぺた触りまくってる。
触りやすいように足を6本とも折り曲げて低くすると歓声をあげて背中に乗っかった。
「リトアさん、私は今の戦況を知らないが、あまり良くないように思う。人間より魔物の数がかなり多かった。私がいたのは街中だったし、いずれこちらにも侵攻してくるだろう。
逃げたほうがいいのではないか?」
「そうですね・・・・でも馬が手に入らないですから・・・」
と言いつつ私の背中の方を見た。私もその視線を追う。あー。今お馬さんだよね。私。
「クロさん・・・」
「私も思った。どうだろう私の背に2人共乗れるだろうか?」
「乗れそうです!待っててください、荷物をまとめます!」
シャルを背中から落ちないように腕でおさえながら考える。
この姿では他の人達から騒がれてしまうだろう。
さて、どうやって騒がれないようにするか。