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目が覚めたら殺人機械でした。  作者: ノス・ファントス
11/18

11.嬉し泣き?

なんか完全にプロットから外れてる気がします。

(項目、一つ戻れ)と念じてみる。

最初の項目に戻ったのを確認すると覚悟を決めて「拡張装備」を「ダブルクリック」する。

そして唖然とした。鎮圧相手の暴徒さん、あんたどんだけヤンチャやってるの!



表示されたのはこんな感じ



[暴徒鎮圧用盾 :未装備 | 予備 50盾(亜空間倉庫収納)]


[水上移動ユニット:未装備 | 予備 5ユニット(亜空間倉庫収納)]


[水中移動ユニット:未装備 | 予備 5ユニット(亜空間倉庫収納)]


[飛行ユニット   :未装備 | 予備 10ユニット(亜空間倉庫収納)]



最初の1つはまだいいとして、残りはなんなんだ・・・・・。

水上、水中を移動することが可能。更には飛ぶことができるとは。

なんか昔のSな人のシーンを思い出した。


リトアさん「鳥だ!」


シャル「ひこーきだー」


リトアさん・シャル・シルフィ「いや、殺人機械だ!(だー)」



頭痛くなってきた。あれ思い出したよ。


噂なんだけど、とある国の農林水産省、林野庁でさ、山の木々の枝を払う人の高齢化が問題になってさ、それを補助するためのロボットを開発したのさ。6億円かけて。

いろいろな機能を搭載したため、巨大なものになって、山野に入ることができずに、お蔵入りしたという。

なんか主旨が違っちゃってるよね。あと噂だよ。とある国だよ。



各装備の予備数が半端無いし、亜空間倉庫ってあれか、RPGとかでよく聞くアイテムボックス?武器は収納してるけど、他のはどうなのだろう。

疑問に思った私はそばにあった石を拾う。大きさは拳くらい。(石を収納)と念じる。



石を握ってた腕が、体の下に伸びていく。え?ありなの?

慌てて「装備」の欄を表示させる。


[ミスリルグレートソード :未装備 

-------------------------|予備:1999本 (亜空間倉庫収納)]



[ミスリルワイヤーユニット: A腕=装備 B腕=装備 C腕=装備 D腕=装備 

-------------------------| 予備:40ユニット(亜空間倉庫収納)]



[催涙砲         :未装備 

--------------------------| 予備 20砲(亜空間倉庫収納) 

-| 催涙弾カートリッジ10発入り- | 100カートリッジ(亜空間倉庫収納)]



[携帯遠距離砲    :未装備 

--------------------------| 予備:40砲(亜空間倉庫収納) 

-| 遠距離弾カートリッジ単発 -- | 1000カートリッジ(亜空間倉庫収納)]



[連射式実弾銃     :未装備 

--------------------------| 予備:200丁(亜空間倉庫収納) 

-| 実弾カートリッジ200発入り -- | 4000カートリッジ(亜空間倉庫収納)]



[石(中)         :未装備 

--------------------------| 予備:1個(亜空間倉庫収納)]



どんだけファジーな設定なんだよ!昔流行したファジー機能搭載の家電も真っ青だよ!

なんか未知のOSを搭載しているパソコンをいじってる気分だ。何ができて何ができないのか、試してみないとわからない。

気を取りなおしていくしかないな。



水中、水上、飛行ユニットは今試せないだろう。大騒ぎになる。あ。後でこのユニットのことをシルフィに聞いてみよう。知らなければ、魔王軍に対して切り札になるだろう。

今は、まず逃げることが先だし、このユニットが使いこなせるか不明だが。



さっきの「暴徒鎮圧用盾」を確認しないと。私は(盾出ろ)と念じてみた。曖昧な表現でも出せるか確認したかったからだ。問題なく暴徒鎮圧用盾は出てきた。出てきたんだけど。

何この痛そうなトゲトゲ、スパイクシールド?盾の面のところにいっぱいトゲトゲが付いている。これで相手を刺したり、武器を絡めとったりするのだろうか。一体暴徒ってどんな存在だったんだ?



空が明るくなってきた。もうすぐ夜が明けるだろう。今回の確認は、ここまでにしとくか。

私は、皆が起きだすのを静かに待ち続けた。




---------------------------------------


朝食をとり、周りを片付けてから、出発した。

速度は早めの速度で行こうということになった。思ったより振動が少なく、乗っている負担も変わらないので、早く街に着くにこしたことはないとのこと。

ただ、道を行く人を見かけたら速度を落とそう、と。



シャルは機嫌を悪くしていないようだ、シルフィと一緒にキョロキョロと周りの景色を眺めてる。シルフィは私の頭の上に付けた小さな椅子に座ってる。

椅子はリトアさんが小枝で作ったんだ、ナイフと麻ひもを使って。器用だよなぁ。



シャルは、周りの景色をみるのに飽きると、お話をせがんだ。私はありったけ記憶を動員して、いくつかの昔ばなしをした。記憶15%創作85%。もはや別物のような気がするが仕方ない。

桃から生まれた女勇者、ワンダー・モモインが、おじいさん、おばあさんからもらった伝説の魔法珠キビダを用いて犬の魔人、猿の魔人、鳥の魔人を屈服させ、家来にして魔王城乗り込み大暴れしたという話は、さすがにやり過ぎたと反省している。シャルには大好評だったが。



シャルは、はしゃぎ疲れてリトアさんに抱かれて眠っている。シルフィも景色をみるのに飽きたのか、寝袋に潜り込んでいる。

私の走る「カッカッカッ・・・」という音だけしかしない。静かで、のどかだ。逃亡中なことを忘れそうになる。



リトアさんが話しかけてきた。

「先ほどのお話はどれも面白かったです」

「恥ずかしいな。あやふやな記憶の創作話になってしまった」

同じ話をしてと言われてもできる自信がないな。



「クロさんがいた世界はどんな世界だったのでしょうか?」

「そうだな・・・」

私はどう話そうか考える


「私のいた世界は、魔法はなかった。獣人、魔物、妖精、精霊などは存在してなかった。もちろん魔王もだ。人間しかいない世界だった」

「魔法はなかったが、科学という技術を極度に発展していた。雲を突き抜ける建物、塔。ゴーレムも馬も使わないで動く馬車。魔法も使わず、遠くの人と会ったように会話できる装置」

リトアさんは、驚きもせず、静かに聞いている。



「けど、本質的なところは変わらない。子を産み、育てそして死んでいく。幸せな人がいた。不幸せな人もいた。ここも変わらない」

「貴方は・・・幸せでしたか?」

リトアさんがつぶやくように聞く。



ちょっと考え、答える。正直に。

「幸せな時もあったと思う。でもほとんどが不幸せだった。あちらは、ここよりもずっとずっと多くの人が集まっていた。集まりすぎていた」

「何十万人、何百万人も街に集まるんだ。自分が浜辺の砂粒になった気になる。そして人は自分と違うものを排除しようとする」

「自覚していた。人と違うことに。感じていた。排除されていることに」

「怖かった何もかも。諦めて自分の命を断つことさえも」



沈黙が続いた。長く長く。彼女は私を見限るだろうか。それとも、あざ笑うだろうか。

リトアさんは、私の背中をなだめるようになでながら、そっと言う。

「あなたも私と同じなのですね」



はっとしてリトアさんを見ると彼女は静かに涙を流していた。

涙を拭いながら、リトアさんは言う。

「私も貴方と似ていると思います。話すと思い出してしまうので、言えませんが」

「そうか・・・・」

なんと答えたらいいかわからない。同じような辛い目にあったとしたら、言うべき言葉は無い。



また長い沈黙が続いた。沈黙を破ったのはまたリトアさんだった。

「貴方はきっと神様がここに呼んだのだと思います」

私が、黙って聞いていると、リトアさんは続ける。

「もういいよ。頑張ったね。この世界で楽しみなって」

「こんな世の中だけど、貴方なら大丈夫だよって」

リトアさんは私の背を撫でる。愛しげに。子をあやすように。



私は泣けないようだ。だけど泣いた、心の中で。これが嬉し泣きなんだろう。認められたんだ、私は。自分の存在を。

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