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運命(さだめ)の迷宮  作者: 刹那玻璃
目を背けていられない事態に発展しそうです!!
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今生のお別れにひとひらの夢を……。

 ところで、現代でははるかが実家に呼ばれていた。

 咲夜さくやは身ごもっている為連れてこれなかったが、代わりに悲しそうな顔をした実明さねあきを連れて来ていた。


 実家の病院で幼児病棟に向かい、確認と調査結果を報告し、その間大人しくじっとしている幼児に、


「実明?おじちゃんが、咲夜や実明のママに会ったところに行ってみよう」

「……ママ……いにゃいもん。パパも……」

「いや。百合ゆりちゃんや景虎かげとら熊斗ゆうとが会いに行ったって言っていたから、もしかしたら……行ってみよう」


肩車をして歩いていく。

 獣道を通り抜け進んでいくと、次第にもやがかかり、道が悪く実明も必死にすがり付いていたのだが、もやの先に何かが見える。


「はゆしぇんしぇい、なんかみえゆ」

「ん?敵か?」


 過去色々な現場で動いてきた遼である、警戒して動く……と、


「私の妻に手を出すな‼」

驪珠りしゅをどこにやった‼あれは、利用できる‼あばずれの娘だが、あれは私の……お前だ‼驪珠!」

「キャァァ‼だ、旦那さま‼」


小柄な女性が悲鳴をあげたのをみて、夫らしき男性が左に差していた刀を抜こうとするが、


「そこを動くな‼」


遼の背後から声が響く。

 振り返ると、警視総監の夏侯元譲かこうげんじょうが拳銃を構えている。


関雲長せきうんちょう‼ここでは言い切れないが、他国の女性の密入国、子供たちの人身売買他、解っているだけで7つの罪‼観念せよ‼」

「私は悪くない‼悪いのは、あの女だ‼」


 狂気に染まった瞳で、ポケットから出したナイフでとっさに、遼に襲いかかる。


「発砲を許可する‼」


 その声に、元譲は発砲する。


 拳銃の弾は雲長に当たる。

 倒れ込む雲長を見ることもせず、


「周囲に黒河備くろかわそなえが身を隠しているやも知れぬ‼注意しろ‼」


その声に、見送りと警護も兼ねて傷を押してやって来ていた景資かげすけは、


「叔父上‼それに……ウゲェェェ?母上に愛想つかされて、追い出されましたか?」

「うるさいわよ‼この馬鹿息子‼何考えてんのよ‼戻ってきなさい‼じゃないと家に入れてくれないのよ‼」


父親の一言に、


「馬鹿ですか?馬鹿ですね?すでに別居状態でしょうが‼離婚しろ‼浮気親父‼」

「何ですって‼」

「何人愛人つくって、子供つくって、何人泣かせ続けたんだ‼親父なんて呼ぶか‼」


と、神五郎の視線の端に動いたもの……元譲が持っていたものに良く似たそれを気づき、采明を遼の方に押すと、走りながら、巨体で俊敏さ力持ちがものをいい、重い愛刀を抜くと、


「しねぇぇ‼この世のすべて、滅びてしまえ‼まずはあの子供‼」


叫び身構えた初老の男に、刀を振りかぶり、叩くように降り下ろした‼

 血飛沫が自分に降り注ぐが構わず、倒れる男から拳銃を奪い取り、投げ捨てると、片手で重い刀を顎に突きつけ、倒れた男に足を乗せ動かないようにすると、


「貴様は何が望みだ‼私の息子に何の恨みがある‼」

「……ふふ、フハハハハ‼怨み?そのようなものはない。この世界が壊れていくのを手助けしているのだ……お前も共に行くか?」

「行くわけはなかろう‼」

「いいや、お前は人を斬った。この国は銃刀法と言う法律があり、刀などを申請がなくば持ってはいけない。その上、一般人の私を斬った‼殺人未遂もつく」


それに一瞬気が逸れた神五郎の隙に、隠し持っていたもう一丁の拳銃を構え、近距離から打つ。


 火花が散るような激痛を胸に受け、一瞬息がつまったが、反射的に男の心臓に刃を突き立てる。

 目を見開き、何かを呟いた男は、動きを止め、


「がはっ‼」


血を吐いた神五郎は、よろけかかるのを元譲が受け止める。


遠藤えんどう‼すぐに‼」

「解っています‼采明さん‼行きますよ‼」


 肩には実明、腕には采明を抱え追いかけていく。

 1人のSPに、


「この荷物を。もって追いかけよ‼そして、妙才みょうさいに全権指揮を任せたと、私の命令である、違えるなと伝えよ‼」

「はっ‼」

「そして、黒河が幼い子供を撃とうとし、それで庇った父親が撃たれたと。そして……」


 ポケットからハンカチを出すと柄を一応拭き取り、二種類の形で握りしめ、


「私が彼の刀で斬りつけ、最後に……と言うがいい‼いいな‼」

「はっ!」


さほど時間もなく現れた男が、


「兄貴!元譲兄貴が救急車で運んでいったのは⁉かなりの重症だが、心臓からは避けられていると‼……‼黒河と、関‼こいつらが⁉」

「関が、大怪我を負っている男性たちに襲いかかるのを、元譲が撃った。元譲の腕だ、致命傷ではなかろう。そして、黒河を探していたら、遠藤が幼い子供を連れていただろう?その子供を撃とうとした黒河から子供を庇った。倒れた青年の身に帯びていた古刀で斬りつけ、それでも今度は私を殺そうとした黒河を……な。自分の身を庇う為撃った。これでは首相として失格だな」


苦笑する。


「妙才。あとを頼む」


 そう言い置くと、ゆっくり近づき、丁寧に頭を下げる。


「この国の首相……左大臣と言った方がわかるでしょうが。私は曹孟徳もうとくと申します。愚息の熊斗が、ご迷惑をおかけしております」

「父さん‼神五郎兄さんは‼」

「致命傷は負っていないが、手術に入院だろうな。遠藤の実家に入院させる」

「違う‼罪……なんて……」

「自己防衛と息子を庇っただけの人間に、罪はないだろう。私が斬ったんだし」


 孟徳は答える。


「それに、あの子供に言うのか?『お前のお父さんは人を斬った人殺しだ』と。正当防衛とはいえ……銃刀法違反の罪もある」

「そ、それではこの刀をこちらで……‼」


 親綱ちかつなの一言に、


「駄目よ。何で斬ったのか、解らないでしょ?色々つじつま合わせもいるのよ。それよりも、熊斗‼戻ってきなさいっていってるでしょ‼」

「嫌だっていってるじゃないか‼この女好き‼変態‼」

「じゃぁ、私の子供だから、あんた変態の血を継いでるのね」

「気持ち悪いわ‼私は、中条藤資なかじょうふじすけの嫡男‼中条弥太郎景資なかじょうやたろうかげすけ‼」


キッと睨み付けると、実父をみる。


「私は、生きる道を見つけた‼この時代には私の道はない‼一生涯の友に、両親兄弟、親族と共に生きていく‼」


 その眼差しを見つめていた孟徳は、


「勝手にしなさい。芙蓉ふようちゃんはしょうばっかり可愛がって、上の二人は鬼で、あんたの兄二人はアホで、一応あんたを頼りにしていたのに……」

「老後ですか?老人ホームで女性を口説いてください」

「何でばあちゃんを口説くのよ‼若い子が良いじゃないの‼」

「年考えろ‼」


景資の一言にケラケラ笑い、


「そうね。年を考えるわ。じゃぁね?熊斗。あんたは芙蓉ちゃんに似て、努力家だから大丈夫よ。会えて良かったわ」


その言葉に、景資も頭を下げ、


「一応、育てて頂いたと言うか、馬鹿な兄に虐められ、馬鹿な兄に馬鹿にされた人生でしたが、それなりにありがとうございます。まぁ、殺しても死なないでしょうし、長生きして下さいね」

「うるさいわよ‼みてらっしゃい‼100才まで生きてやるんだから!」


言いながら親子は別れる。

 そうして、入ってきた警察官に見つからないように、そっと姿を隠したのだった。

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