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運命(さだめ)の迷宮  作者: 刹那玻璃
目を背けていられない事態に発展しそうです!!
82/87

どうすればいいのか、途方にくれる采明ちゃんと旦那さまです。

 姿を見せた景虎かげとら百合ゆりに、中条の屋敷は騒然となる。


 一応身長が伸び始めた景虎は、現在160㎝ほどであり、当時ではその年代は160㎝は長身である。

 その上、その横の百合は巨人である。


景資かげすけ!大丈夫か?」


 一眠りした少年は体を起こし、兄弟たちが遊んでいるのを嬉しそうに見つめている。


「あぁ、虎」

「景資?景虎さまのことは……」

「佐々さざれ母上。景資と私は兄弟同様だ。構わないぞ」


 側に座り佐々礼に見せていたものを見る。


咲夜さくやの結婚式ではないか!」

「そう。旦那さんが、ドレスのデザインを世界的デザイナーの月英げつえい先生にお願いして、二人でドレスと、ほら、このベア……お母さん、見て?」


 映像には、同じドレス姿の花嫁ベアをだっこしている花婿ベアがおり、同じポーズで微笑む新郎新婦がいた。


『さーくや?おめでとう‼今の気分は?』

『う、嬉しいです……はるかさまはどうですか?』


 夫を見上げる瞳はキラキラとしており、神五郎よりも長身かもしれない新郎が照れつつ、


『私も嬉しい。よく、私たちは三国一の花嫁と言うけれど、咲夜は世界一の花嫁だよ』


頬にキスをする姿に、周囲からヒューヒューと声がかかる。


「えっと、これは……」

「旦那さんの遼さんは真面目なんだけど、不真面目と言うか、仕事面倒~‼とかいって遊んでたお兄さんと弟3人いて、遼さんにお説教されたの。で、きちんと公私を分けるんだけど、こういう時は兄弟だもん、からかって遊んじゃえってね」

「あら、この方は……」


 咲夜の額に口付けたあと、


『これ以上は見せない‼見たければ、論文仕上げることだな』

『何だよぉ!』

『つまんないの!』


と声がかかる中で、遼は、


『あ、そうそう。今まで言っていなかったけれど、今年の末に子供が生まれるから。叔父として、責任感のある大人になってくれ』


「え、えぇぇぇぇ‼あ、あの子に、赤ん坊が……‼」


声をあげた佐々礼は瞳を潤ませる。


「大怪我を……あんなに弱っていたあの子が、お母さんに……‼」


『わぁぁぁ‼おめでとう‼兄さん、咲夜‼』

『どんな子かな?可愛いといいね‼』

『どんなお母さんになるの?』


 その言葉に咲夜は、


『葉子お母様のようにしっかりとしていて、蓮花れんげお母様のように努力家で、そして、自慢の私の母のように、生まれてくる子供皆に愛情を注いであげられる、優しいお母さんになりたいです。それに、あの、私一人ではダメな時は、遼さまと皆さんに助けて頂けたらと思います。よろしくお願い致します』


頭を下げる娘の映像に、佐々礼は、


「あの子にとって、私は良い母だったのかしら……辛いことばかりで、嘆いているだけの母親だったと思うわ……」


涙をぬぐいながら囁き、


「あの子……咲夜は嫁いでいったけれど、采明あやめさんのお子さんは……」

「あ、実明さねあきは、この子だよ……お母さん」


タブレットを操作し、映像を見せる。

 3才だが、叔母になる咲夜の結婚式に、何故か新郎の遼の膝に座っていた。


「あら……まぁ、お母様、お姉様!」


 佐々礼の声に振り返ると、景資が見惚れる美女二人である。


「景資が大怪我をしたと聞いたのでな、参ったのじゃ。景資?傷は大事ないか?」

「は、はい‼お、おばあ様。この通りにございます」

ゆきをかばって、何て無茶を‼」


 少々お怒りは、叔母の橘樹たちばならしい。

 景資は目を伏せ、


「申し訳ございません。実は、私の腹違いの姉はとても賢い人で、美しい顔立ちをしておりましたが、顔を切られ……本人は、気にされていない振りをしていたのですが……」

「なんと‼犯人は‼」

「私の実の兄たちです。できの良い妹になる姉を妬み……」

「許せぬな……その小僧ども!」


あずさの言葉に周囲は頷く。


「それにしても愛らしいのぉ……」

「遼さんは、小児科……子供専用の病院の副院長です。それで、とても可愛がっているんです」


 映像の中では最初はキャッキャ‼喜んでいたが、疲れたのかぐずりはじめ、


『わぁぁぁん‼だっこぉ、だっこぉ!』

『はいはい、疲れたね?ねんねしよう』


 遼は嫌がりもせずあやすが、次第に泣き声が大きくなり、口の中に手をいれて、ボロボロ大粒の涙をこぼしながら、


『ママァァ~‼パ、パパァァ~‼いいこする。いいこする。帰ってきてぇぇ。わぁぁぁん‼』


と声が響く。

 咲夜の義母になる、百合に瓜二つの蓮花が会場から連れ出そうとするものの、いやいやと首を振り、


『まんま~‼ママァァ!だっこぉ!パパァァ~わぁぁぁん‼』


と泣き続け、しばらくしてぐったりするので、遼が額に手を当てると、


『熱があります。すぐに点滴を‼』

『俺が行くよ。ほーら実明。遼兄ちゃんにバイバイして、咲夜お姉ちゃんにも行ってきます、しような?』


と大柄な男が出ていく。


「あの方が、私たちが最後にすんでいた国の病院の総合病院長先生です」

「幾つになったのかの……」

「数えで4才です。でも、体が小さいのと、咳がひどくて悪化すると治療が……」

「可哀想に……」


 梓の頬に伝うものに気付き、景虎や百合に景資が驚く。

 特に百合や景資は烈女、剛毅な女性と聞いていた梓が泣くとは思わなかったのである。

 袖で涙を拭いた梓は、


「皆はわらわが烈女と褒め称えるが、本当は、腹帯を締めて出陣せねばならぬ程切迫しておったのじゃ……旦那様に付く味方も少なく、幼い……『かあしゃま』と追いかけてくる橘樹を預け、出陣したのじゃ。今生の別れ……と覚悟を決めての。で、戦は勝利したが、神五郎が生まれての……。橘樹や重綱しげつなよりも小さく、泣き声も上げず、諦めかけた時に祈ったのじゃ……『息子をお救い下さい。その為ならば、この命を‼』と……」

「お母様‼そ、そんなことが⁉」

「祈った……すると、声が聞こえたような気がしたのじゃ……」


梓は告げる。


「『そなたの強い思い、しかと聞き届けた。しかし、将来この子供が重大な決断をするであろう時に、背中を押してやるが良い……。苦しむ息子に、旅立ちを促してやるが良い』……そう言われたのじゃ」

「そ、そんな‼でも、ですが‼お母様‼直江家はどうなるのです‼」


 橘樹の問いかけに、景虎は、


「重綱か、橘樹姉上の夫のけやき兄上で良いのではないか?」

「景虎さま‼あっさりと言わないで下さいませ‼直江家は‼」

「橘樹‼」


梓の鋭い声が響く。


「神五郎は、幼き頃から直江家の者として生きた。直江神五郎実綱なおえしんごろうさねつなとして!充分やって来た。直江家のしがらみから解き放ってあげたいのじゃ」

「ですが⁉」

「では、先程の幼い体の弱い実明をここにつれてくると言うのか?両親の元に戻れたと喜ぶであろうが、体の弱いあの子が次の直江家の中心になれるのか?」

「ですから……」

「このまま親子を引き離したままにするのか‼わらわは決してしとうはない‼あの寂しげに両親を探す瞳を見たであろう?橘樹。そなたの息子たちの一人が数年も引き離されて、同じように泣いていたらどう思うのじゃ⁉言うてみい‼」


 梓の迫力に気圧される。


「梓おばあ様。この姿を、神五郎様方にお見せすることは出来ませんか?私が向かいます」

「何をいっているの‼数日は安静にと言っているでしょう‼」

「母上。私にも実の母はおりました。可愛がって下さいましたが、愛人に浮気、不倫と繰り返す父には次々子供が生まれ、隠し子騒動に、母は3番目の妻でしたので、最初の奥さんとの間に3人の子供がいて、長兄の息子……つまり甥の一人は私よりも5つ上だったりします。確か、20人は男児だけで子供がおりました」

「‼……と言うか、ようやるのぉ?で、子供ができても多すぎるのぉ……長尾の殿もそうであったら良かったのに」


 素直な言葉に、プッと吹き出し、


「母は格闘家で、父が浮気をしたり、隠し子騒動になるたびに、殴る蹴るの攻撃をするのですが、それでもやめられない病気ですね。最近は、母は逆に父が浮気をしないと『ゆうちゃん。最近、お父さんが浮気していないのかしら?折角久しぶりに木槿むくげと現役当時に肉体改造したから、攻撃したいのに‼犯ジャーマンスープレックス‼とか面白いのよ?』と言う感じに……」

「……母上も母上じゃのぉ。面白い」


笑う梓に、


「一応その映像もお見せしましょうか?小さい方が父で、大きい方が母の妹の木槿叔母の夫の妙才みょうさい叔父です。妙才叔父は、父のいとこです」


映像を見せると、梓と橘樹は目をキラキラさせる。


「それは素晴らしい‼姉妹による連携攻撃‼おぉ‼片腕で投げ飛ばした‼百合は……」

「いえ、日本の格闘術を。これは一種のパフォーマンス攻撃なので大袈裟に見えるのですが、でも、本気でやっていらっしゃるので……」

「これはすごいわ‼私もやってみたい‼」


 橘樹の声に、


「それよりも、実明じゃ‼ゆくぞ」


梓の声に周囲はうなずいたのだった。

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