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運命(さだめ)の迷宮  作者: 刹那玻璃
目を背けていられない事態に発展しそうです!!
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景虎くんと熊斗くんと百合ちゃんと老獪な政治家の対決です。

「いったぁぁぁ……!!何なの!?ここでは親を殴る息子を育ててるの!?」

「いえ、馬鹿親を制裁するように、徹底的に鍛えて差し上げているんですわ」


 おほほほ……


笑うのは音楽科の学長の瑠璃るりと、帝王学部学長の瑾瑜きんゆとその補佐と表向きはなっているが、総合学院長のあきら


「言っちゃぁ悪くも思いませんが、あの月季げつきを愛人に出す程、人材有り余ってるんですか?それよりもぼこぼこ出てくるのはあの発砲馬鹿警官や、あんたの長男次男は悪事をするより仕事を面白がる性格で、跡継ぎには問題ない。でも、3男に4男はどうなんですか?馬鹿っぷりが世界中のネットに公開されてるじゃないですか」


 あははは!!


腹を抱えて笑う瑾瑜に脇腹を一発殴り、朗は、


「……申し訳ありませんが、月季をこの国から帰国は認めません。先程ロウディーン公主にも確認しております」

「でもね!!」

「優秀な人材を育成するこの学園から巣立つ子供たちが、一人は他国の第四夫人、一人は高齢の未亡人の愛人ですか?」

「この学院に泥を塗るのですか?」


瑠璃は、友人の芙蓉ふようを見る。


「貴女も、ご主人と同じ意見なのかしら?」

「そ、それは……」


 躊躇う芙蓉に、瑠璃は傲然とした眼差しで言い放つ。


「自分の子供を、そんな人間に売るような人は私の友人ではないわ!!熊斗ゆうとくんも月季さんも私は指導者として厳しく、そして、授業以外は自分の子供たちとして接してきたの!!私の子供をそんな理由で学院から出すと言うなら、私は兄上に……」


 立ち上がった瑠璃に、姿を見せたロウディーンとジュンと月季。


「兄上!!」

「あぁ、瑠璃。実はねぇ……本当に大きくなったなぁと思うのだけど……」


 にっこりと息子を見る。


「ジュンが月季にプロポーズをしたんだよ。そうしたら、月季が受け取ってくれたと大喜びでね」

「まぁまぁ……!!それは素敵!!ジュン?おばさまに教えてくれないかしら?どんなことを伝えたの?」


 瑠璃が満面の笑みで問いかけると、頬を赤くして、


「えっ!?えっと、年下だし、まだまだ月季姉さんに及ばない人間だけど、頑張って追いかけるから、待たないで進んでいて!!きっと並んで歩けるようになって見せるからって……」

「まぁぁ!!素敵!!ジュンは、本当に素敵な子だわ!!月季さんは?」


手を繋いでいた月季は頬を染め、


「わ、私もジュンに負けないように、努力をする。だから構わないか……と」

「違うよ~!!もっと努力して優しい人になるって言うから、僕はちゃんと『月季はとっても優しいよ!!それにとっても照れ屋さん。勉強もとっても出来るのに、時々周囲がビックリするようなボケたところもあって、それが可愛いんだよ』って言ったんだもん!!」

「わぁぁぁ!!な、何で言うんだ!!私は照れ屋じゃなくて……」

「可愛いんだよね?」


少年の台詞に無表情だった顔に表情が出て、恥ずかしそうに、


「わ、私は本当に……こんな顔で……その上、愛人の子で……幸せになって良いのかと……」

「当たり前でしょ?愛人がどうした!!うちの父も再婚だよ!!」

「私の父親は……息子の妻と不倫関係になり、3人の息子が生まれた。私は再婚でね。夫の父親と不倫をした前妻と離婚して、その子供は父の息子として戸籍にいれているけど?弟たちに罪はない。月季も罪はない。あるのはこの男だよ」


瑾瑜と朗が首相を示す。


「で?息子と娘をそんな所に送り出す貴方は、どういう事ですか?」

「それが……」

「おらぁぁぁ!!月季と熊斗のうらみ、覚悟して受けやがれ!!」


 飛び込んできた景虎かげとらが、首相の顔面に書状を叩きつけた。


「な、何なのよぉぉ!!」


 後ろからは、何故か熊斗が戦国時代の武士の略装を纏い、そして百合ゆりは両親と言い争いをしつつ姿を見せる。


「百合!!いい加減にしなさい!!」


 母の蓮花れんげに頬を叩かれたものの、キッと両親を見る。


「いい加減もなにも、私は、私の道を行くの!!父さんや母さんは自由気ままに生きてきたじゃない!!それを、子供にはするなって都合よすぎじゃない!!」

「そういう意味じゃないでしょう!!お母さんが言いたいのは!!」

「私は、景虎と生きていく!!時代が違う?じゃぁ追っかけるのよ!!咲夜さくやだってはるか兄さんと出会った!!お姉ちゃんだって神五郎しんごろう兄さんと!!私だって出会ったのよ!!出会った相手が時代が違う?それなら一緒にいくだけよ!!」


 百合は叫ぶ。


「私は、景虎と生きていくの!!そして、お姉ちゃんたちが戻ってくれば、実明さねあきだってきっと……」

「ママ……パパ……」


 昼寝をしていたのだが起き出して、人を……両親を探しに来たらしい。


「う、うぅぅ……ママ!!パパァ!!わぁぁぁん。どこぉ!!」


 泣きじゃくる実明に、百合は近づき、


「さーくん?ママとパパ帰ってくるからね?」

「ほ、本当?さーくん……わゆいこだからいないじゃない?」

「悪い子じゃないわよ!!百合姉ちゃんの一番かわいいさーくんは良い子だよ?」


よしよしとなだめる。

 そして、甥を抱き上げ、百合は告げる。


「瑠璃先生、瑾瑜先生、朗先生……私、柚須浦百合ゆすうらゆりは本日を持ち、学院を退学させていただきます。一身上の都合により……と言う……」

「同じく、庄井景虎しょういかげとらも、退学のお願いを」

「私、曹熊斗そうゆうとも、お願いいたします」


 3人は頭を下げると、朗が、


「退学?おかしいですね?瑠璃先生、瑾瑜先生?3人ともすでに単位を取り、着実に進めると言うことで、昨日卒業証書を準備することになっていますがね?」

「あぁ、そうですね」

「証書が間に合わない卒業式もちょっと寂しいわね」


先生方が呟く。


「ちょっと待って!!熊斗!!あなたのその格好はどこにいくの!?」


 芙蓉の問いかけに、


「自分の人生を馬鹿親父や、馬鹿兄に潰されてたまるか!!私は、虎の側近になって、戦国時代を治めて見せる!!ここで学んだこと、そして、采明あやめさんの情報をある程度解析して、咲夜にも聞いた……私にだって馬鹿親父ではあるものの、あんたの血を引いているんだ!!やりとげて見せる!!」

「あなた!!何を言っているの!?貴方は……」

「馬鹿兄たちが、他国の王女を散々侮辱して、その国から金か、この学院の美貌の持ち主である姉さんを狙っているんだろう!?それを、自分で何とかしようと思わないのか!?くそ親父!!母さんも母さんだ!!普段はあんな風に暴れまわっているくせに、大事になると逃げ腰か!!最低!!」


熊斗の正論に黙り込む。


「今まで散々あれこれやって来て、こっちがたしなめても無視していた癖に、何かが起きたら大慌てで姉さんや僕や、しょう兄さんに!!それを心配した子脩ししゅう兄さんが、ここに越させてくれたから何とかなってる……!!あんたも変わってると思ってたのに!!全然変わってないんだね!!馬鹿馬鹿しい!!」

「私は……」

「言い訳するな!!どうせ、捨てゴマとして生んだんだろう!!……行くぞ!!虎、百合」


 熊斗の言葉に返答するものもなく、去っていった3人を見送ったのだった。




「……三人兄弟の末っ子。一応根性悪い兄二人には秀でたところがあったし、私は、突出して良いものはなかったからね。使い捨ての駒だよ。解っていたさ……ひがんではないけど、月季姉さんみたいになれたらなぁと思ってたし、虎のそのはっきりした性格は羨ましい。百合だって努力家で、私のひねくれた性格が嫌だった……」

「ひねくれた!?お前その程度でひねくれているのか!?お前、ゆかりんとロウディーン公主と朗先生のひねくれ度に腹黒の方が酷いだろう!?」

「それに、熊斗の父上も根性悪よね!!それに女好きに、ちょっかい出しまくる……上のお二人のお兄さんは愛妻家だけど、下の兄さんはクズよクズ!!大丈夫!!熊斗は普通にひねくれてるだけよ!!」

「百合姉さん……嫌み?嫌がらせ?」

「普通にいつもだけど?」


 歩いていると、遼と咲夜が佇んでいた。


「姉さん!!本当に、行かれるんですか!?」

「えぇ!!大丈夫!!何か、聞いていると、直江家の女傑って私と共通点あるし、それにこの強さ!!使ってみたいわぁ!!」


 おどける百合の後ろで、


「レスリングで、霊長類最強と言われていた方が日本にいらっしゃるけど、百合姉さんは競技じゃなくて、普通に乱暴者で世界一恐ろしいのにね?」

「もっと言ってやれ、熊斗!!」

「……景虎と熊斗!!」

「鬼だ!!」

「いや、魔王だよ!!」

「待ちなさい!!」


逃げようとした時に、


「熊斗くん……」

「あ、なあに?咲夜」


近づくと、咲夜は手に持っていた小さな刀を差し出す。


脇差わきざしと言うの。大きな方の刀は、父上が持っているの」

「えっ!?前に言っていたでしょう?これはお父さんにもらった宝物だって」

「……百合姉さんは、采明さま……お姉さまの妹として動けると思うの。でもね?熊斗くん……もしよかったら、中条弥太郎景資なかじょうやたろうかげすけとして……お願いいたします。熊斗くん程優秀な人を、時代はきっと待ってる。それに、景虎さまは本当に苦しい道が待っているの。私の父は側近だったからきっと熊斗くんのような優秀な息子を望んでいると思うの。弟もいるけれど、熊斗くんのように覚悟は出来てないわ。だから……」


 頭を下げ、差し出す咲夜の優しさに、目を伏せて……。


「ありがとう……。曹熊斗として行っても、私は虎の側にいられない……咲夜……大事な刀と名前をありがとう。本当に本当に……ありがとう」

「ううん……頑張ってね?さようならは言わない。だから……」


その言葉に、熊斗がにっこり、


「じゃぁ生まれ変わったら、咲夜の息子に生まれようかなぁ?遼兄さんと取り合い!!」

「……受けてたつ!!」

「あははは!!待っててね!!ありがとう!!行ってきます」


二人を呼び止め、そして咲夜たちに頭を下げ去っていく。


「ご武運を……そして、幸運を……」


 咲夜の頬に伝う涙を、遼はぬぐったのだった。

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