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運命(さだめ)の迷宮  作者: 刹那玻璃
目を背けていられない事態に発展しそうです!!
73/87

景虎くんは、カウンターテナーの声でリサイタルに挑みます。

 17才の琉璃りゅうりは、実は現在臨月手前で、歌うことはできるが移動は困難……そして様々な事件に巻き込まれたこともあって、大事をとって日本には行かないことになっていた。

 そして、夫であるりょうも残る。

 その上、国事を行う義兄の代理として瑠璃るりも残るので、今回の一行ははるかが連れていくことになった。

 当然だが、愛妻である16才の咲夜さくやも一緒である。


 出演者はしょう月季げつき百合ゆり景虎かげとら熊斗ゆうと、そして、国主ロウディーンの双子の息子ジュンが共に行くことになった。

 ジュンはまだ幼いながら、二胡にこの名手の母譲りの影響か素晴らしい演奏をする。

 双子の姉ギョクランはコロコロと可愛い声で歌うので、今年、二人共学院に入学したのだが、父親が大好きなので残るそうである。


 でも、ジュンは本人のたっての希望で出掛けることになったのだが、彰と月季は全く気づいていないが、ジュンは月季が大好きで、月季に虫がつかないように必死で楽器を習ったのである。

 そして必死に追いかける……熊斗が面白がって、月季と良く傍にいるうえに、全く気づいていない彰と月季は甥叔母の間ながら仲が良く、端正な美少年と男装の麗人ながら『高音の破壊魔』と呼ばれるほど、緊張すると高音が大きくなり響き渡る持ち主たちは良くモテる。

 ジュンはそれが嫌でたまらず……月季は時々、


「景虎?最近ジュンが無視をするんだ。嫌われたのだろうか……」


と、うっすらと残った傷跡はメイクで隠す月季だが、隠さなくても美しいのに……と恋愛感情抜きで思う。


「月季。ジュンは多分迷っているんだろう。国主の息子であり、その立場と勉強をしたいがうまく教えてくれる存在がほしいのではないだろうか?ジュンは頭がいいし、きっと月季に色々聞きたいのだと思う。私がジュンに言っておくから、予習、復習等を手伝ってあげたらどうかな?」

「えーと……私は余り上手くないかも知れぬ。言葉も固いし、それにこの顔では……」

「それは絶対大丈夫。月季は少し不器用なだけだ。優しいし……ほら、ジュン!!」


 こそこそと様子をうかがっていた少年を呼ぶと、決まり悪げに近づいてくる。


「す、すみません」

「ん?何か悪いことをしたのか?」


 月季の一言に、昔の自分もこうだったんだとようやく理解する。

 そして、


「ジュン?月季はとても優秀だから、色々なことを知っている。ジュンはそんな月季を尊敬しているんだろう?だから、気になることや勉強していることの予習復習を聞いてみたらどうだろう?」

「えっ?」


いきなりの発言に一瞬驚くが、景虎のウインクに、


「あ、あの、月季姉上!!ぼ、僕、一杯勉強して、父上や亮兄上のお手伝いがしたいんです!!なので色々なことを教えてください!!お願いします!!」


頭を下げる少年に、月季はにこっと笑う。


「私で良ければ。幾らでも」

「ほ、本当ですか!!ありがとうございます!!嬉しいです!!」


 振り返り、


「虎兄上!!ありがとうございます!!」

「私はなにもしてないぞ?ジュンが、自分で言ったんだ。ジュンは遠慮がある。月季は、できなければできないときっぱり言える。だから、まずは聞いてみるといい。そうすることで、ジュンは月季のことを知るだろうし、月季もジュンが勉強熱心な努力家って解る。互いを知ることは、とても良いことだと私は思う」


頭を撫でる。


「もし解らなくなったら、彰兄上にも聞いてみるといい。見た目はあんなでのんびりだが、判断力はすごいぞ?」

「何がこんなのだ?」


 ムッとした顔で出てきた彰に、景虎は、


「彰兄上は見た目は優しくて可愛いけど、性格も抜けてて可愛いぞっと教えていたんだ」

「か、可愛い……」


ガーン!!ショックを受ける。


 すると、ジュンの従兄弟のショーンを肩車して、他の子供たちを抱き上げ担ぎ、背負ってと子供だらけの祐司ゆうじが、


「どうしたんだ?」

「あ、祐司先生。彰兄上は、見た目も性格も可愛いと言ったら硬直しちゃって……」

「うーん。俺は4人とも可愛いと思うぞ。あ、一番はうちの子供たち!!」


結婚した翌年に女の子、そして男の子二人、そしてただ今5人目妊娠中である。

 カランは、


「高齢出産よ!!どうするの!!」


と訴えたが、祐司は悪友の弟の遼を示し、


「産婦人科医!!」

「頼りないかもしれませんが……」

「そんなこと言ってないわよっ!?遼さんを信じていない訳じゃないのよ!!それよりも、毎年毎年何考えてんのよ!!」


カランの一言に、


「子供たち可愛いからなぁ……カランに似て」

「……いやぁぁ!!祐司がでれてる!!見てはいけないものを見ちゃったわ!!」


を思いだし、


「祐司先生は本当に羨ましい……今も4人……あれ?きょう?」

「いじめてるバカを熊斗ゆうとが説教してたから。な?喬。ロボットの片足面白いか?」

「はい!!祐司先生。がっしゃんがっしゃん!!楽しいです」


 えへっ


笑う少年は、まつげが長く、美貌ではないのだが、本当に愛らしい。次期国主の亮の息子である。


「あ、ジュンお兄ちゃん!!あのね!?あの計算式続き解けたよ?」

「えっ?……ちょっと待って!!あれは本当に難しくて、月季姉さんも解けなかったって……」

「仮の式が違ってたの。でね、式を選び直して、解き直したんだ。後のも、同じように変更してみたら出来たよ!!」

「……って、はしゃぎ回って、熱だしてな。これからゆかりの所に連れていこうと思っているんだ」

「無茶はダメだよ?喬。ちゃんと休むんだよ?」

「うん……頑張ったら頭ガンガンするんだ……だから、パパにだっこしてもらうの」


 喬は、普段は大人びた少年だが、実際は両親が大好きで忙しい二人を追いかける……追い付けないと泣きじゃくる甘えん坊である。

 父の亮は、幼いときから賢いものの泣きじゃくると寝込む息子を心配し、運動をさせようと思ったものの、運動神経は余り良くなくのんびりしている息子に、まぁいいか、と無理に強制はしなかった。

 その代わり、勉強は教え込んだのだった。

 そして祐司はのんびりしている喬を、仲が良いショーンと遊ばせたり、簡単なスキップや縄跳びをさせてみた。

 すると、音楽家の両親の影響かスキップや縄跳び、ダンスに興味を持ち、バレエを習わせてみるように両親に伝え、そうすると、良く転んで泣いてたといったようなことが減ったのだった。


「所で、祐司先生。熊斗は?」

「ん?あ、いや……う~ん……隠れて日本の首相と奥方が来られて、熊斗と喧嘩している」

「へっ!?あの熊斗が?えっと、行ってきます!!」

「もう来たから行かなくて良いよ」


 現れた熊斗は、頬が赤くはれ、唇が切れている。


「ど、どうしたんだ!?熊斗。お前がそんなことを……」

「……姉さんを、他国の第四夫人に差し出すことにしたから言ってこいだって」

「……!?」


 周囲が顔色を変える中、月季は淡々と、


「そうか……第四夫人でも貰ってくれるだけありがたい」

「何で!?」


ジュンが月季の腕を掴む。


「おかしいよ!!月季お姉ちゃんは、何で反対しないの!!日本は平等自由の国じゃないの!?」

「私は愛人の子だから。仕方ないんだよ」

「おかしいよ!!違うよ!!月季お姉ちゃんは月季であって、愛人の子じゃないもん!!じゃぁ、それなら僕のお嫁さんになって!!第四夫人とかじゃなくて、僕のお嫁さんになって!!」


 月季はキョトンとする。

 そして……、


「う~ん……」

「嫌なの?」


半泣きになりかけたジュンに、


「いや、ジュンのご両親と、ギョクランに嫌われていたら困るなと思って」

「いや、それはあり得ないから」


景虎が突っ込む。


「この国で月季嫌いな人間、いる方がおかしいから。大丈夫。ロウディーン様に報告してくれば?」

「月季お姉ちゃん!!父上や母上に言いに行くから!!一緒にいこう!!」

「行ってらっしゃい!!」


 熊斗は手を振る。


「……あのくそ親父!!俺をどっかのおばはんの愛人に差し出すか、姉さんをだって……殴り飛ばして、上に乗って拳で殴ってやった」

「じゃぁ、この頬は……」

「母上に殴られた。話を聞けと。聞く意味なんてない。もう二度と会う気もない。家族の縁を切ってやると飛び出した。……いくよ。虎。先生。僕は……」


 熊斗に微笑む。


「来ていないと行っておこう」

「ありがとうございます。では」


 頭を下げ歩きつつ、横に並ぶ景虎に呟く。


「小さい頃から、大兄さんとつぐ兄さんに可愛がってもらってたんだ。僕と姉さん。二人は本当に義母になった母上と仲が良いし、姉さんの母上とも親しくて、でも、僕の血の繋がってる兄二人がね……馬鹿ばかりやって……」

「その者共を差し出せばよいのに」


 ため息をつき、


「二人の悪友の一人が、現在の警視総監の次男だ。縁を切られてるが……その3人の馬鹿ぶりに、逆に僕と姉さんが世界的に認められた学院で……となったらどうする?」

「……お前の兄どもを、ぶちのめしたいな……あ!なぁ、熊斗」

「なぁに?」

「お前……この間の言葉は冗談か?」

「本気に決まっているでしょ?」


 親にも兄弟にも利用されて捨てられるなんて真っ平だ!!

 自分で生きていると実感できる……そして後悔しない生き方をしたいんだ!!


言い切った熊斗に、景虎は、


「じゃぁ……」

「……えっ!?それ本気!?」

「嘘は言わぬ。その代わりに月季は……」

「それはいい!!虎!!」

「じゃぁ、あの色惚け古だぬきを手玉にとって見せてやる。いくぞ!!」


二人は歩き出したのだった。

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